新産業促進検討会, 最新活動報告

第2回新産業技術促進検討会 NEDOのナノテク・材料開発の方向性 2014年9月19日

モノづくり日本会議(事務局=日刊工業新聞社)は2014年9月19日、東京都千代田区のホテルグランドパレスで第2回新産業技術促進検討会「NEDOのナノテク・材料開発の方向性」を開いた。モノづくりの根幹を支えるナノテクノロジー・材料技術は電子・情報、環境・エネルギー、医療・バイオなどあらゆる出口分野で重要な役割を担っている。本検討会では、技術ロードマップ策定などを手がける新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)のナノテク・材料開発の方向性と個別分野として構造材、ナノカーボン、希少金属分野の戦略を紹介するとともに、関連分野の最新トピックスを解説し、今後の展開を探った。

NEDOの個別分野戦略

ナノテク/材料の課題と挑戦
新技術潮流がカギに

新エネルギー・産業技術総合開発機構 電子・材料・ナノテクノロジー部長 岡田武氏

微細化による高機能化を図ってきたナノテクだが、今後の方向性はどうか。トレンドを見ると、自然界にはない機能を発現する人工構造物であるメタマテリアル、生物模倣や自然から学ぶバイオミメティクスという、新しい技術潮流がある。これらを経て自然にはない構造物を自然に学んでつくる新たなナノテクへと進むことができるのではないか。

新たな技術を考える際、課題となるのは日本にとっての戦略技術のターゲットの仕方であり、トレンドを定量的に分析する必要がある。また、基礎研究を産業界へ橋渡しすることも不可欠だ。

オールジャパン協業、標準化・基盤共通化、ロードマップ作りなど、自社資源だけではできない課題に挑戦する機会をNEDOが皆様に提供することで、オープンイノベーションを支援していきたい。

NEDOのナノテク・材料開発の方向性
機能性材料にフォーカス 課題分析

新エネルギー・産業技術総合開発機構 電子・材料・ナノテクノロジー部主幹 吉木政行氏

NEDOでは材料・ナノテクノロジー分野で現在6プロジェクトが進行中だ。構造材、ナノカーボン、希少金属のほか、非可食性植物由来の化学品、高効率モーター用磁性材料、有機ELや有機太陽電池向けの材料評価技術に取り組んでいる。今後フォーカスしたい領域として機能性材料を考えており、現状・課題分析を実施する予定だ。

プロジェクトの検討のためには、ロードマップの議論が重要だと考えている。NEDOはナノテク分野で、27の技術についてロードマップを作成してきた。現在、今ある27のロードマップをグルーピングして見やすくすることを考えており、ナノテクが実現する機能・特性ごとに分類して逆引きできるようにするほか、ナノプロセスの技術についてトップダウン、ボトムアップに分類し、また安全項目を追加することを検討している。

昨年度は電気的特性の逆引きをまとめたが、今年度は熱特性や機械特性などの他の特性の逆引きを作成するほか、個別ロードマップのリバイスと追加すべき技術の検討を行う。加えて、各特性から製品・市場へ、さらには実現する社会・価値を描き出すことにも取り組む。

材料分野のロードマップ作成は、日本の強みと市場の大きさから、構造材料、医用・ヘルスケア材料、エネルギー変換・貯蔵材料、有機エレクトロニクス材料の4分野を優先的に進めている。昨年度は構造材料のロードマップを作成したが、今年度は残りの3分野の検討も進めたいと考えている。

構造材
接着接合の研究開発拡充

新エネルギー・産業技術総合開発機構 電子・材料・ナノテクノロジー部主査 寺田幸平氏

自動車をはじめ航空機や鉄道車両など、輸送機器の燃費向上に向け、軽量素材の適用範囲拡大、高強度素材による部材使用量削減が求められている。それには鉄鋼、アルミニウム、マグネシウム、チタン、CFRPなど各素材の強度・加工性を含めた高性能化・低コスト化と、異種部素材の接合技術によるマルチマテリアル化が重要である。

現在NEDOでは開発プロジェクトとして、鉄鋼の高強度高延性化技術の開発、非鉄関係はマグネシウムであれば難燃化技術のように、素材特有の技術開発、CFRPでは中間基材開発、成形・加工技術、評価・設計技術を連携させて製造技術の開発を進めている。

また接合では、マルチマテリアル化を実現するため、鋼板と軽金属、金属と樹脂などの異材接合技術を開発している。

このプロジェクトは10年間にわたるため、ステージゲート方式を採用し最適化することが必要であり、最初のステージゲートは来年度に設定して管理運営している。

現在の課題として、接着接合の研究開発拡充、各テーマの整理と実施体制の最適化を検討している。

ナノカーボン
実用化へ新プロジェクト始動

新エネルギー・産業技術総合開発機構 電子・材料・ナノテクノロジー部主査 賀川昌俊氏

NEDOのナノ炭素材料研究は1998年に始められ、スーパーグロース・カーボンナノチューブ(CNT)の事業化などの成果が創出されている。一方で、日本のナノ炭素材料研究は論文数では劣勢にある。材料分野では論文数は事業化優劣の指標になりにくいが、将来の影響は無視できない。産学官の総力を挙げて実用化研究開発で先行させたい。このため、ナノ炭素材料実用化プロジェクトを衣替えして新しくスタートさせた。

このプロジェクトではナノ炭素材料の実用化を加速するため、助成事業として透明導電膜や高耐熱複合部材の開発などを実施している。

CNTの安全性対策はこれまでも自主安全管理技術を開発してきたが、新たに応用製品の排出・暴露評価技術を開発し、企業をサポートする。

分散体評価技術、革新的材料を開発し、試料提供、技術移転を通じて実用化を目指す企業を支援する。CNTの応用製品では複合材料、キャパシター、電極材料の開発に取り組んでいる。グラフェンについては電極、放熱材料、バッテリーなどへの応用を見据えた革新的成膜技術を開発する。

希少金属
低減・代替に加え有効活用も

新エネルギー・産業技術総合開発機構 電子・材料・ナノテクノロジー部主査 坂下幸雄氏

希少金属に関わる資源国、消費国とも不安定要因を抱えているリスク構造に大きな変化は無い。今後は元素ごとのリスクを定点的に評価し必要であれば事前対応するリスク管理方法が必要と考える。そこで昨年より二つの調査を行っている。

一つはリスク評価のための最新動向調査。最近の需給動向に適合するよう、NEDOとして研究開発重要度が高い元素として、白金族、希土類、タングステンなどを選定した。

もう一つの中長期戦略立案では、過去・現在のマテリアルフローを整理し、使用量低減による原単位の変化を評価した。さらに将来のマテリアルフローを予測し、リスクの見える化・重要性評価、リスク対策の検討、不足技術の抽出を経て、行うべき技術開発を提案した。

昨年度はジスプロシウムと白金族で行った。今年度は、希土類、タングステンで行う。

新規の希少金属プロジェクトでは、使用量低減・代替に加え、使うべき元素は使う、元素が本来持っている特徴を引き出す有効活用という視点も取り入れる。先導研究は今年度から始まり、来年度も公募予定だ。

有識者によるトピックス紹介

NBCIから見たナノテクノロジー戦略
環境・エネへの関心高まる

ナノテクノロジービジネス推進協議会 事務局長 栃折早敏氏

ナノテクノロジービジネス推進協議会(NBCI)は2003年に発足、現在は約170社の会員が参加している。最近は大学や研究機関など外部連携活動、R&Dやビジネスのマッチング活動、安全性評価などにも力を入れている。

ナノテク展を題材に動向を分析した。約650件の出展と約5万人の来場者がある。来場者の関心を調査すると、出口・応用分野では材料・素材、環境・エネルギー、IT&エレクトロニクス、自動車など。共通基盤技術分野ではナノ材料・素材分野への関心が高い。

用途・機能別ではナノコーティングの関心が高く、生体適合性材料へも年々高まっている。形態別にはナノ粒子、複合材料、ナノコンポジット材料への関心が増加傾向だ。

大震災前後の08年と13年を比較すると、環境・エネルギー関係への関心が急速に高まっており、ライフサイエンス分野も増加している。

NBCI会員が注目する技術はナノカーボン、3Dプリンティング、分科会準備中のバイオミメティクスなどである。

我が国のナノテク・材料・モノづくり戦略を考えるにあたって
モノづくり戦略 明確に

科学技術振興機構研究開発戦略センターフェロー/エキスパート 中山智弘氏

日本としての国際競争力は工業製品類の国際競争力の維持・向上がカギだ。そのためには科学技術力の強化は必須だ。

日本は政府研究開発投資が停滞気味だ。ナノテク・材料分野に対しては各国とも競うように投資を伸ばしているが、日本では輸出の中心である製造業の根幹を支える分野であるにもかかわらず、投資に大きな変化が見られない。

海外では先進諸国におけるモノづくり回帰の動きが目立っている。米はオバマ大統領のイニシアチブにより製造業強化策が取られている。EUではFP7の下「未来の工場FoF 」を08年に立ち上げた。独はハイテク戦略2020の重点分野に「インダストリー4・0」を挙げ、CPSでネットワーク化した「考える工場」実現を目指すプロジェクトを進めている。世界のトレンドは、モノづくりとオープンネットワークを基盤としたサービスとの一体化である。

この流れの中で、わが国が得意とするナノテク・材料分野の強みを発揮することができるような、しっかりとしたモノづくり戦略が必要だ。

ナノテク・材料技術をイノベーションに繋げる
企業・大学協働で人材創出

大阪大学大学院 工学研究科附属高度人材育成センター教授 北岡康夫氏

ナノテク・材料技術の役割は、新産業創出のためのシーズ技術や基盤技術の確立と、人材創出である。それには技術の進化と社会変化に対応した科学技術政策を立案し、国家・地球規模の目線での推進が必要となる。

科学技術は、科学的原理を技術に応用し、産業上の目的に役立ててこそ意味がある。何のために研究しているのかが明確でなければならない。近年、産学連携の重要性がますます増している中で企業の第一線研究者が大学に常駐せず、大学教員中心の推進体制となり、互いにコミュニケーションが取れていないことが、しばしば課題として指摘される。

大学は人材創出の教育機関であるとともに基礎研究の場であるが、単なる研究にとどめず、社会への還元が不可欠だ。そのためには、産学連携・実用化研究の位置付けを明確化することと、企業と大学が協働でイノベーションを起こす環境づくりが重要となる。

今後、研究力だけでなく、分析する力、組織を動かす力、見通す力を持ち合わせた人材が求められる。そのためには、組織間の人材流動性を高めることも必要である。

炭素材料の新しい世代の事業化について
超軽量銅複合材など事業創成

業技術総合研究所 ナノチューブ応用研究センター招聘研究員 友納茂樹氏

カーボンナノチューブ(CNT)は黒鉛のシートをパイプ状にしたもので、強度は鋼の20倍、熱伝導性は銅の10倍、密度はアルミニウムの半分、電子移動度はシリコンの10倍等の高特性を持つ。

なかでも単層CNTはさまざまな用途展開が期待されるが、1時間に数ミリグラム程度と生産性が非常に低かった。2004年、産総研はNEDOの支援の下、触媒効率を1000倍に高めた単層CNTの合成技術、スーパーグロース(SG)法を開発し、工業化に向けた第一歩を踏み出した。

この技術のキログラム単位の量産プラントを造り、単層CNTを企業へ提供し用途開発を促進し、同時にリスクと安全性についての検討も進めている。15年度には日本ゼオンが商用プラントを稼働する予定だ。

用途についてもNEDOプロジェクトとして、材料から部材まで一貫開発可能な基盤技術確立に取り組んでいる。将来、極限環境向けゴム材料や金属代替熱可塑性樹脂、超軽量の銅複合材などSGCNTをコアマテリアルにした新事業の創成を目指している。

ナノテクノロジーとビッグデータが支えるバイオミメティクス
国際標準化へ知識基盤提案

千歳科学技術大学 総合光科学部バイオ・マテリアル学科教授 下村政嗣氏

生物模倣と訳されるバイオミメティクスは、欧州を中心に、ナノテクノロジーと博物学のコラボレーションが新展開を見せはじめている。表面にサメ肌構造を取り入れた水着がまさにこれだ。

生物のさまざまな機能は進化適応の結果であり、人間の技術体系とはモノづくりのパラダイムが異なる。フライパンの撥水性はフッ素樹脂の物性を利用しているが、ハスの葉は表面構造で水をはじく。セラミックスや陶器は高温焼成プロセスで製造するが、アワビの貝殻は常温でつくられるが、硬くて強い。

画像は専門的知識がなくても創造的刺激をかき立てる。ビッグデータである膨大な生物学の知識を工学情報に変換する発想支援型データベースが開発された。ある繊維の電子顕微鏡画像を質問画像として検索すると、さまざまな昆虫の脚先が示された。昆虫の脚先は微細毛が密集し多様な表面に付着する機能がある。質問画像の繊維も吸着機能を持つかもしれない。

2012年からバイオミメティクスの国際標準化が動き出した。日本からも「バイオミメティクス知識基盤」について提案している。

メタマテリアルとモノづくり
新特性持つ物質創出へ可能性

理化学研究所 田中メタマテリアル研究室准主任研究員 田中拓男氏

メタマテリアルは、光の波長よりも細かな構造を導入して、物質が本来持つ特性とは全く異なる機能を人工的に付与した物質だ。自然界の物質の透磁率は全て真空の透磁率と同じで、異なる値の物質はない。メタマテリアルを使えば人工的に作ることができるが、それを作る技術がまだない。

メタマテリアルを構成する微小なコイル構造を作るために、金属イオンにフェムト秒レーザーを集光照射して光還元現象で金属化する技術は、高精度で自由な構造を形成できるが時間がかかりすぎる。一方、金属のナノ粒子からDNA分子を使って形成する方法は、早く大量にできるが、不均一・不完全で、構造の自由度に制限がある。我々は最近、電子線描画法でラインを描きこれを金属に置き換えた後、下地の基板をエッチングして金属薄層の応力の違いで金属ラインを丸めてコイルを作る方法を開発し、研究に十分なサイズのメタマテリアルを作った。

メタマテリアル技術を使えば、屈折、反射、分散など、自然界にはない特性を持つ物質が得られる可能性はある。それには新しいモノづくり技術が不可欠だ。