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モノづくり推進シンポジウム 3Dプリンティングが拓く 次世代モノづくりのあり方 2014年10月17日

モノづくり日本会議(事務局日刊工業新聞社)は2014年10月17日、東京都江東区の東京ビッグサイトでモノづくり推進シンポジウム「3Dプリンティングが拓(ひら)く次世代モノづくりのあり方」を開いた。従来の除去加工や成形加工にはない特性を持つ付加製造技術(Additive Manufacturing=AM)はモノづくりとビジネスに革新をもたらす次世代生産技術として大いに期待されている。本シンポジウムでは3DプリンティングをはじめとするAMについて、産・学両面から、高付加価値製品製造に向けた取り組みの現状と課題を整理し、今後の展望を探った。

Additive Manufacturingを核とした新しいものづくり

先端CAD技術と「出口部分」重要

東京大学生産技術研究所 教授 新野俊樹氏

日本語で「付加製造」と訳されるアディティブ・マニュファクチャリング(AM)が注目されている。一口に3Dプリンターというが、パーソナル3Dプリンターと、インダストリアルAMシステムは全くの別物と考えてほしい。
 
AMは材料を付着することで3次元形状の数値表現から物体を作成するプロセスだ。くっつけてつくる、自動でつくるの2点がAMの定義だ。液槽光重合、粉末床溶融結合(PBF) 、結合剤噴射、シート積層、材料押し出し、材料噴射、指向性エネルギー堆積(DED)の七つのカテゴリーに分けられる。
 
現在、製品製造に用いられているのはPBF。粉を敷いてレーザーで溶接するタイプで、樹脂、金属とも対応する。もう一つはレーザー肉盛溶接の原理と同じDEDで、急成長が期待される。
 
AMの良さはまず、データからダイレクトに自動的に製造できること。金型や治具などが不要で、コスト、時間、技能を節約できる。
 
AMの生産性は成形加工にはかなわないが、除去加工に対しては条件による。生産数でみた単価は、ある数量までは金型でつくるよりも安い。迅速性と簡便性は成形加工よりもすぐれている。
 
AMの特徴は安くて早くて簡単なこと。こうした特性をラピディティーと呼んでいる。
 
現在の用途は模型、試作、ツーリングが多く、直接的な製品は30%程度にすぎない。ラピディティーだけでは、模型づくりに終わってしまう。それ以外の特性を生かした非ラピッド・アプリケーションが拡大のカギだ。
 
その一つが複雑な形状をつくれることだ。金型の水管、股関節の寛骨臼、大幅な中抜きによる軽量化、自在な配置による傾斜構造材、さらには細胞分化の因子を配置し人体組織をつくるといったことが提案されている。機能や付加価値を著しく向上させる特殊な形状・構造である機能形状をつくれるのは、今のところAMしかない。ここではラピディティーは必須ではなくなる。
 
成功例を見ると、自然の原理を高度に利用したもの、人間の感性に訴えるもの、補聴器のシェルのように生体や自然物とインターフェースのあるものなどだ。そのほか、鋳物でつくれなかったものや、航空宇宙分野などでの極端に切削量が多い部材への適用が始まっている。
 
高級なサングラスの限定モデル、たくさんつくるが1個ずつ違うマス・カスタマイゼーションである歯科矯正具など、ビジネスとして成立するアプリケーションは見つけられるはずだ。さらにはDMMの例を見ても分かるように、AMはネットワークとの親和性が非常によいため、それを使えば新しいビジネスモデルを構築できる。
 
AMの特徴である複雑な形を、一体誰が設計するのか。流体力学や構造力学など、物理学が実装されたCADが非常に重要になってくる。
 
AMはデータがあればつくれるというが、そのためには優れたCAD技術と、何をつくるかという出口の部分をしっかり考えなければならない。製造装置・材料だけでなくトータルに考えることが非常に重要だ。

3Dプリンターの課題と可能性―産業界の先進事例

金属光造形複合加工とアプリケーション
ポーラス構造で金型のガス抜き

松浦機械製作所AMテクノロジーゼネラルマネージャー 漆﨑幸憲氏

当社の主力製品はマシニングセンターだが、2003年から金属光造形複合加工機を販売している。高速ミーリング加工技術と積層造形技術を複合し、ワンマシン・ワンプロセスで加工できる装置だ。
 
1層50マイクロメートルで金属粉末を敷き、レーザーを当てて固めていく。積層していくと表面がざらざらになるので、10層積んだら切削を入れる。これを繰り返すことで切削肌の加工品がつくられる。
 
積層厚み、レーザー照射などの造形条件が合っていないと、きれいに硬化しないので、ユーザーには材料と一緒に積層造形の条件、切削条件を提示している。ワークサイズは250ミリ×250ミリ×185ミリメートル。加工精度はプラスマイナス25マイクロメートル、表面粗さRzは10マイクロメートルを保証値としている。
 
積層造形のメリットとして、当社は中空、密度可変ということを重視している。例えば、金型を割型とせずに一体で水管を入れる、ポーラス構造にして金型のガス抜きに使うといったことだ。
 
部品加工では、人工骨やインプラントなどカスタムメード分野の仕事の内容が大きく変わるだろう。航空機関係ではメッシュ構造による軽量化など、これまでと異なるアプローチが可能になる。

金属技研株式会社の金属3Dプリンタの取り組み
積層造形物をHIP処理 欠陥消失

金属技研 技術本部 テクニカルセンター次長 山本泰弘氏

当社はユーザー企業としてTRAFAMに参画している。金属積層造形は2001年に開始し、現在、ファイバーレーザータイプの装置と電子ビーム積層造形(EBM)の装置を用いている。
 
レーザー、EBMはそれぞれ可能な形状、特異性があるので、顧客のニーズに合わせて使い分けている。スキャンの速度はEBMのほうが桁違いに速い。造形の寸法精度や限界造形角度には大きな差はない。材料粉末の粒径の違いに起因すると考えられるが表面粗さはレーザーのほうが細かい。横穴の粉末の除去性もレーザーのほうが優れている。レーザーは細かいものもつくれるのだが、応力がたまるため、鋭角部がめくれ上がった形状になってしまう。
 
当社が得意としている技術に熱間等方圧加圧(HIP)技術がある。積層造形物をHIP処理すると、内部欠陥を消失させられる。これによって材料強度が向上し、疲労に強くなり高寿命化が期待できる。
 
金属積層造形はHIPなど熱処理することによって圧延材や鍛造材と同等の強度を得られる。これを踏まえれば設計の可能性は広がる。今後、既存のモノづくりの概念を超えた製品を展開できるだろう。

次世代3Dプリンタに適した金属粉末の開発
積用途開発 ユーザーとメーカー連携

福田金属箔粉工業 常務取締役 技術本部長 田中完一氏

当社は次世代3D積層造形技術総合開発機構(TRAFAM)のプロジェクトにおいて、金属粉末の材料開発を担当している。
 
3Dプリンターは高速・高性能化が急がれている。材料開発では微粉化・狭幅化と球状が重要となる。微粉化は寸法精度や表面粗度の向上に、粒度分布幅を制御した狭幅化や形状・表面形態の制御は生産性、品質安定に寄与するからだ。もちろん材種の充実や低コスト化も大きなテーマだ。
 
3D金属粉の要素技術には粉末化技術、分級技術、修飾技術、評価技術がある。粉末化技術では組成自由度、品質、量産性からアトマイズ法が中心になる。当社はきれいな表面の粉末をつくれる高圧旋回水アトマイズ法に力を入れている。
 
分級ではより高精度な分級が必要となるので、分散性の高い気流分級技術がポイントとなる。流動性や耐酸化性などを付加する修飾技術も重要だ。
 
新たな用途開発にはユーザー、装置メーカー、材料メーカーが連携していくことが不可欠だ。粉末についてはチタンや鉄系、ニッケル系が先行している。銅は熱伝導性、電磁特性、抗菌性などいろいろな特徴があるので、銅系の新しい用途を提案していきたい。

3Dプリンタを用いた金属積層法の特徴と可能性
複雑形状を一体成形 量産視野に

コイワイ AM事業部 課長 永田佳彦氏

当社の主力事業は試作・量産鋳物部品の製造販売。試作鋳物の短納期対応の一環で2007年に3D積層砂型製造装置を導入した。短納期と同時に、型抜きという制約がなくなり、複雑形状の一体成形が可能となった。
 
さらに、砂型にとどめず、直接製品をつくろうと昨年、3D金属粉末積層装置を導入して、サービス開始。目下、EB機1台、レーザー機2台を、材料に合わせて使い分ける体制としている。
 
当社は量産を視野に入れている。適用製品分野を開拓するため、共同研究・開発に取り組んでいる。例えば、人工衛星用スラスターへの適用。EBM工法によって、複雑な形状を一体成形しようと進めている。また医療分野では、従来のスクリューで脊椎を固定する方法と比較して患者の負担・リスクを大幅に軽減する脊椎制動インプラントの開発に参画している。
 
金属3Dプリントの現在の課題は、装置価格と生産性に起因するコストの低減、装置・原料粉末とも海外製であること、従来工法の延長線上ではなくAM工法に適した設計思想の浸透―の3点と言える。TRAFAMでの開発目標が達成されれば、AM工法の量産適用の可能性が大きく開けてくると考えている。

日本機械学会 生産システム部門 AM分科会からの研究報告

運用・活用方法の整理 

AMならではの造形用途に期待

【新しい設計・製造】

日本機械学会生産システム部門AM分科会幹事 
産業技術大学院大学 産業技術研究科 准教授 舘野寿丈氏

日本機械学会では生産システム部門にAM分科会を設けている。加工機、工場、製品関係組織、企業、国家・グローバルの五つの領域について、AMの七つの造形方式ごとに、どのような活用方法があるかを検討している。
 
AMの特徴を生かした新しい設計とは何か。大きく3点が挙げられる。まず、複雑な構造物を自由に成形できること。一体化で点数・工数を減らせ、中空構造による軽量化が可能になる。
 
2点目は従来加工法で困難だった形状や素材を自由に利用できること。切削量を減らすことで省資源化にもつながる。
 
3点目は個別生産・カスタマイズに向くこと。モノづくり教育・設計教育にも効果がある。設計者はこれら3点の特徴をベースに、さまざまな活用方法を考えてほしい。

【新しい生産組織】

大阪大学大学院工学研究科 准教授 福重真一氏

AM技術によって、設計・開発部門の刷新、生産ラインの組み替えだけでなく、外部の知識を取り込むような生産組織が現れている。それを自律分散の度合いで分類し、四つに類型化した。
 
まず設計生産拠点の現地化。個別のユーザーに寄り添って補修部品やカスタマイズ部品などを生産するものだ。次に設計のオープンソース化。これは設計情報を全部公開するのではなく、カスタマイズ部品についてユーザーに提供し、ユーザー側で造形する。
 
生産システムのクラウド化は、例えば設計、試作、解析、流通、製造それぞれの中小企業が協業し、モノによってネットワークを組み替えて対応する。「ものづくりの民主化」は最も自律分散が進んだ形態。ファブラボを活用した個人によるモノづくりが代表例だ。

【工場の運用】

マテリアライズジャパン マーケティングスペシャリスト 小林毅氏

当社はベルギーで創業した3Dプリンティングに特化した造形サービスとソフト開発を行っている。プロ向けの多様な造形機器約100台を使い分けている。

事例の一端として、カスタム補聴器といったユーザー個別設計、頭蓋のインプラントという患者固有の製品開発、足の特徴に合わせたインソールという製品開発などがある。
 
ロボットハンドのグリッパーを対象ワークに合わせて自動設計することも始めたところだ。
 
AMの課題として、リードタイム、コスト、品質については従来生産方法と同様。加えて、一度に複数のオーダーを同時に生産する一品一様への対応、量産とは異なるスピード感、高いスキルを持つ技術者の必要性など固有の特質から、工程の自動化・コントロールシステムは不可欠である。

【樹脂材料の技術動向とアプリケーション】

アスペクト 取締役技術開発・情報管理担当 萩原正氏

当社は1996年設立以来、積層造形技術とりわけPBFに集中している。06年から自社開発装置を販売している。RaFaELシリーズで使えている樹脂はPA12を中心に、PA6や自社開発のPPなどだ。
 
ある展示会の来場者に開発が望まれる粉末材料について調査したらPBT、PPS、PEEK、PA66など、約7割がPA12よりも高耐熱の材料だった。耐熱性や機械強度など高付加価値の材料への要望が大きいことが明らかになった。
 
樹脂造形の用途はこれまで試作品が主流だったが、今後はそれらに加えてAM技術でしかつくれない形状のものや、デザイン性の高いもの、アミューズメント、宝飾品、少量多品種製品、保守部品、軽量化部品、インプラントなどへと広がっていくことが期待される。

標準化・評価方法 

AM標準化ASTMがリード

【AM技術の標準化】

産業技術総合研究所 マイクロ加工システム研究グループ 
グループ長 芦田極氏

AMの国際標準策定では、ASTM F42がAMを定義したのが09年。ISO/TC261が設置されたのは2年後の11年だ。このTCにはOメンバーを含め23カ国が参加している。
 
ASTMが策定し、ISOが承認した標準がすでに2件あることから分かるように、AMの標準化はASTMが産業化を意識しながらリードしている状況にある。これまで、言葉や技術の定義、評価試験方法などが主体だったが、材料やプロセスなどにも広がりつつある。
 
AMの標準化はまだ初期段階だが、先々、国際標準が発行されるとビジネス上の制約になることもある。日本でも昨年、ISO/TC261の国内審議団体が発足したところだ。ここで新しい標準の提案やJIS化の検討を進めていく。

【加工精度と生産性】

名古屋大学大学院 工学研究科 准教授 田中智久氏

AMと従来金型を比較すると、少量生産ではAMに優位性がある。リードタイムは、金型は一定なのに対してAMは線形に増加する。一品当たりのコストは、金型は量産することで低減するが、AMはコストが一定だ。

AM製金型の性能が向上すればリードタイムはさらに優位になり、AM製金型が低コスト化すれば、使い分けが可能になる。

AMの価値を高めるためには精度の向上と、それによる仕上げ工程の削減が不可欠だ。それには加工原理と材料物性に基づいた最適な加工条件の導出が求められる。
 
材料の種類・使用粒径とレーザー出力・スポット径などとの関係、強度・精度と造形速度の関係、加工環境の影響、造形物の表面性状向上などテーマは数多い。ほかにも加工機の多能化や設計ツールの開発が必要だ。

【AMによる省エネ・省資源】

産業技術総合研究所 システム機能設計研究グループ 
研究員 近藤伸亮氏

AM導入による環境負荷削減の可能性が期待されている。製造工程では、少量生産・オンデマンド生産はつくり過ぎを抑え、部品の一体化は工程数削減に、付加加工は原材料の有効利用となる。使用段階では、製品性能の向上による環境負荷削減、アップ/ダウングレードによる長寿命化などの効果がある。
 
製品ライフサイクル・サプライチェーンそのものが圧縮されることから、流通在庫、輸送距離、仕掛かり在庫、保守部品在庫などが削減できる。付加加工と除去加工を組み合わせたリマニュファクチャリングも大きな効果が期待できる。
 
こうした可能性を生かすには、AM導入の環境負荷を定量的評価すること、新しい持続可能な価値提供モデル提案、資源循環の仕組みづくりが重要となる。

金属3Dプリンタによる次世代のモノづくりとTRAFAMの取り組み

ハード・ソフト・材料 三位一体で開発

近畿大学 工学部 ロボティクス学科 教授 京極秀樹氏

鋳造でも切削でもできない製品を、3Dプリンターならつくれる。非常に複雑なもの、併せて内部に構造をもっているようなもの。そういうものに使わないとこの技術を本当には生かせない。
 
現状をみると、金属材料のAMは、精度や造形速度に課題が残る。本当の加工ツールとしての機能を持つためにはこれらをクリアしないとならない。操作性や造形中のサポートの付け方など、ソフトウエアも十分検討していく必要がある。材料粉末が高く、またその粉末がAMに合う材料となっているのかという課題もある。
 
AM技術は名古屋市工業研究所の小玉秀男さんから始まったと言われているが、その後現在に至るまで常に欧米が先行して発展してきた。我々は世界水準を超えるような技術の開発を目指している。
 
そこで、ハードとソフトと材料の三位一体の開発が大切になってくる。今年度からスタートしたTRAFAMのミッションはそこにある。
 
TRAFAMはハードとソフトと材料の開発をユーザーとも連携しながらオールジャパンで進めようと、4月1日に立ち上がり、目下31機関が参加している。金属系AMと砂型の造形技術について取り組んでいる。
 
大型装置について、高速化、高精度化を目指す。複層化についても取り組む。操作性の向上やサポート、ラティス、内部構造にしっかりと対応できること、ユーザーが使いやすい加工条件・材料データベースなどをきっちり入れたソフトウエアを構築する。材料関係では、低コストの金属粉末や高融点材料などの開発を進める。
 
開発に当たっては、知財の問題、標準化の問題が大事になってくる。ISOとASTMの両方を見ながら、日本としてのアイデンティティーをしっかりと出していかないといけない。
 
標準化は主導権を握られたら終わりになる。ドイツは活発に動いている。ドイツにはハードがあり、ソフトも強くなってきた。標準化まで握られてしまうと、日本は気づいた時には負けていたとなりかねない。
 
単に3Dプリンターをつくるだけでは意味がない。CADや計測も含めたデジタル・マニュファクチャリングの動きの中の3Dプリンターということをしっかりと捉えて、そのことを装置に反映させながら開発することが不可欠だ。
 

講演に熱心に聞き入るシンポジウム参加者

今後の展望だが、高速・高精度化は必須だ。現在の装置でも機能分化していると思うが、多種化への要望も強い。
 
今後、インライン化でどう生かせるか。シミュレーションも含めた設計の考え方を変えていかないと、日本は負けてしまう。
 
同時に、AMに合った材料、AMでしかできない材料の開発もしっかり進めていかなければならない。モノづくりの生産技術をトータルで考えていくことが重要だ。
 
繰り返すが、AMは設計から製造まで、データが流れていくデジタル・マニュファクチャリングの重要な加工ツールであることを十分理解してほしい。多くの人がこの技術を使うことで、いい点・悪い点をどんどん出していって、わが国のモノづくりの設計・製造技術の革新につなげたい。