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第9回中部地区研究会 2014年10月28日

モノづくり日本会議は2014年10月28日、名古屋市東区の日刊工業新聞社名古屋支社セミナールームで第9回中部地区研究会海外でモノづくりを教えるには豊田自動織機インド変速機工場の事例から」を開いた。コンサルティング会社のエフマグ代表である中迫雅美氏(元豊田自動織機東知多工場長)が自身の体験をベースに、海外でのモノづくり人材の育成について講演した。約40人が参加して熱心に聴講、質疑応答も活発に行われた。

海外でモノづくりを教えるには~豊田自動織機インド変速機工場の事例から

能動・自主的に考える人材の育成を

エフマグ代表 中迫雅美氏
 
豊田自動織機は2004年にインド・ベンガルール市の繊維機械生産会社「キルロスカ・トヨタ・テキスタイル・マシナリー(KTTM)」で、自動車用変速機の生産を始めた。当時、製造部長として立ち上げに携わった経験から、インドでモノづくりの概念を浸透させた事例を紹介する。


■仕組みに魂
KTTMで生産を始めたのは、トヨタ自動車から受注した新興国向け戦略車「IMV」用の手動変速機(MT)。1年半という短期間で立ち上げる計画だった。KTTMはこれを成功させ、繊維機械の不振をカバーしようとしていた。
 
不安材料はたくさんあった。変速機は豊田自動織機ではつくったことがなかった。それをインドでつくれるかという不安があった。KTTMは不振が続き、職場のモチベーションも低下していた。さらに(日本とインドでは)文化が異なるし、私自身、英語が苦手だった。周囲からは「今いる(現地)スタッフでは到底無理」と言われた。
 
ただ、KTTMをじっくり観察した結果、私は職場のモチベーションを上げて活性化できれば、十分やれると確信した。結果から言うと04年3月に無事生産を始めた。納入不良件数は6カ月連続ゼロを達成。原価や利益、納期順守率といった各数値項目も日本と遜色ないレベルでの立ち上がりを実現した。トヨタからは「KTTMがここまでやるとは正直思わなかった。仕組みに魂がこもっている」との声をいただいた。

中迫氏が体験を基に、海外でのモノづくり人材
の育成について講演した

■全員参加で
さらに変速機事業の立ち上げとともに、KTTM全体にトヨタ式のモノづくりが浸透した。結果として、繊維機械事業の不良や在庫も減るという効果もあった。

ひとづくりのポイントはいくつかある。「平等・公平に接する」「現地スタッフのレベルアップを一番に考える」「なぜ、なぜを繰り返し自ら考える力を伸ばす」「よかったら、その場で具体的に褒める」「だめなら人格を尊重しつつ改善を促す」「現地スタッフと生活をともにする」。日本人は日本人同士集まって食事したりしがち。私はそういうことはしないと決めていた。
 
リーダーはメンバーとベクトルを合わせなければならない。それには日常生活の身近な例え話を使って説明するのが良い。共通認識が持てるようになるからだ。
 
KTTMでは品質保証担当のローカルスタッフに例え話を使って品質保証体系を説明した。当初は、いいか悪いか判断するだけのレベルにとどまったが品質管理、品質保証の意味を理解し、仕事の幅を広げていった。
 
全員参加の風土づくりも不可欠。私は指導する際、チームや関係者を全員集めるようにしていた。メンバーが互いに刺激しあえるからだ。ただ集まる人が多いと緊張感が薄れるもの。だから、みんなが一生懸命話を聞くよう、説明中にいろいろな質問をみんなに投げかけるようにする。上司に対して効果的だったのは「上司のあなたが知らないと部下にバカにされる。それが嫌なら参加しろ」という言葉だった。

■責任持たせる
指導は相手のレベルに合わせて行う。「なぜこういうやり方をするのか」など多くの質問をし相手に答えさせて相手のレベルを推測し、レベルに合った指導をする。教えたことを理解しているかどうかは本人に説明してもらえば判断できる。
 
ポイントは「なぜ、それをやらなければならないか」を説明し「どうやるべきか」については多くを説明しないこと。日本人が海外工場に行くと、すべてを細かく説明しがち。それは説明ではなくて指示。指示された相手は自分で考えなくなってしまう。失敗すると必ず「あの人が言った通りにやっただけ」と言い訳するだろう。
 
考えさせることで自発性を根付かせなければならない。必要なのは答えを自分で見つけ出すチャンスを与え、責任を持たせること。自分のイメージでやれたのか、やれなかったのかを自分自身で感じさせる。そうしないと現地スタッフのレベルは上がらない。
 
私も海外での指導はKTTMが初めてだった。日本式のモノづくりを海外で浸透させるには、日本流の作業や仕組みを教えるだけではダメ。現地スタッフが納得して行動し、職場に徹底させなければならない。
 
それには相手のレベルに合わせて指導し、自分たちの職場で使うツールやルールを自らつくりあげてもらうしかない。能動的に、自主的に考える人材を育成さえすれば、結果的に職場のモチベーションは向上する。その仕掛け人がリーダーだ。