最新活動報告

アジア市場開拓のポイントと最新動向 2013年10月3日

モノづくり日本会議は10月3日、グローバル競争力強化関連事業としてセミナー「アジア市場開拓のポイントと最新動向」を開いた。中島耕一郎日刊工業グローバルビジネスサポート取締役最高執行責任者、勝部日出男日本インドシナ協会理事長、海野惠一スウィングバイ社長が登壇し、それぞれマレーシア、ベトナム、中国について進出の先進事例や投資環境を解説、日本の製造業がアジアで勝ち残るための条件を探った。

アジア進出の先進事例や投資環境の解説、現地で勝ち残るための条件などについて熱心に聞き入る参加者

中堅・中小製造業の海外生産拠点設立は「どこに」、「どうやって」、また「だれに」支援してもらったら良いか
支援手厚いマレーシアに注目

日刊工業グローバルビジネスサポート取締役最高執行責任者 中島耕一郎氏

中堅・中小企業が海外生産拠点を設立する際に実務のお手伝いをしている。正直に言ってそうしたプロジェクトには大小さまざまなリスクがあり、難しいことも多い。しかし経済環境の変化により、中小でも海外に出なければならない、出た方が良い、というケースは増えている。そこでお役に立てれば、と考えている。
 
アジアの製造業に詳しいフリー・ジャーナリスト、松田健氏によると、今中小製造業の進出先として良いとされているのは1位がフィリピンで以下タイ、マレーシア、ミャンマーと続く。松田氏も「マレーシアは安心して中小が進出できる先ではないか」と言っておられるが、私もある意味「穴場」だと思う。まず一人当たりのGDP(国内総生産)がちょうど1万ドルを超えた。タイの5000ドル、インドネシアの3000ドルを大きく上回り、良いものを求めるマーケットとなってきている。ちなみに日本が1万ドルを超えたのは1983年時点のことだ。
 
15歳から64歳までの生産年齢人口がそれ以外の2倍以上ある「人口ボーナス期」が、30年から35年まで続くこともマーケットの大きさとして重要だ。ボーナス期は日本では既に終わり、シンガポール、韓国、中国、タイも終わろうとしている。
 
政策面でもマレーシア投資開発庁の支援も手厚く、製造業では原則外資比率100%でも大丈夫だ。この30年間でマレーシアから日本への留学生は累計1万5000人を超え、彼らが戻り官民で活躍しているのも心強い。
 
次に「どうやって」という点では生産拠点設立に必要な事業計画作成や土地取得、市場開拓、さらには操業準備としての雇用や教育などさまざまな要素を同時並行して検討することが重要だ。
 
「だれに」では、私のこれまでの世界中100カ所以上のプロジェクトの経験から言うと、チームを組成して皆で取り組むことが大切だと思う。中小では専属のスタッフを置けないかもしれないが、どこかに丸投げするのでなく、例えば文系で詳しい者が事業計画を作り、生産現場に近い部分では理系が活躍するといったことが必要だろう。
 
海外進出にあたってのチェックポイントは、まずインフラ整備がある。交通や、水、電気もあるが、実は現地のルールや契約の手法などもインフラであり、とても重要だ。また、現地調達率や、外貨送金についてのルールも調べておく。もちろん親日的な国であるかどうか。これは一番大切かもしれない。
 
アジアにマーケットを求めて進出する際には、進出先の国だけでなく周辺の例えばイスラム圏、中華圏も含めた「面」でマーケットを考えることが欠かせない。マレーシアは6割のマレー人のほか多くの中華系、インド系がおり、バランスのとれた政策をとっている。その意味でも、アジアマーケットのゲートウエーとしてマレーシアを考えても良いのではないか。

 

ベトナム進出展開ノウハウのエッセンス
現地企業M&A経営陣の力量を見る

ナレッジカンパニー会長日本インドシナ協会理事長 勝部日出男氏

私はベトナム大好き人間であって、国家理念の「独立・自由・幸福」、とくに「幸福」という言葉が入っているところに着目する。インドシナ協会を立ち上げ、主にベトナム、カンボジアへの進出支援をしている。またナレッジカンパニーという投資会社の代表も務め、起業や展開の支援もしているが、日本でのベンチャー投資と比べ、成長の可能性の高いASEANは注目度が高い。進出の相談を受ける国としても、今ベトナムが一番人気がある。
 
ベトナムは1990年代にドイモイ政策がとられてからおおむね成長を続けており、一人当たりGDPはホーチミンやハノイといった都市部では3000ドルに達し、消費も盛り上がっている。
 
マレーシアの話も出たが、ベトナムは地政学的にアジアのゲートウエーに位置している。日本とベトナムは今年国交樹立40周年で、ベトナムの副首相が「今、日本とベトナムは歴史上もっとも関係が深く、最も友好的な状況にある」と明確に語っており、両国は熱い関係にある。非常に話し合いを大切にする国で、日本人の感性に合っていると思う。
 

進出するポイントとして、まず一般論ではあるが良質かつ安価で豊富な若年労働力がある。向上心・向学心が高く、とくに女性のワーカーレベルが高く勤勉で「日本の企業に勤めたい」という人も多い。ベトナムに進出している日系企業は約1500社と言われており、個人の商店や小さな会社も増えている。大規模なところでは組立工場や、鉱物資源の精錬・加工、石油・化学などがあり、ほかには自動車などの裾野産業も多い。
 
生産面ではまだ電力調達の問題があるが、ベトナム政府は供給能力を上げることに力を入れている。品質管理や教育、部品の現地調達といった課題も多いが、政府はモノづくりに積極的に取り組み、裾野産業をきっちり構築しようとしている。
 
進出にもいろいろな形態があるが、現地企業のM&Aにも着目している。ベトナムに対する直接投資は日本が最大で、2011年には941件のM&Aがあった。まだ食料品などが中心だが分野も広がっている。1件当たりの規模は小さく、大半が5億円以下。リーマン・ショック以降マーケットがなかなか回復しておらず、利益が高くても額面割れしているような会社がたくさんある。ベトナム企業側としては資金調達が難しく銀行の融資レートも高い現状で、日本からの資金へのニーズは極めて高い。日本からの新しい技術やマネジメントを導入したいという期待も強い。
 
ただベトナム企業を評価するには財務データだけでなく経営陣の力量を見なくてはいけない。誠実で情熱があり、財務的なマネジメント能力が高いかを見極める。M&Aに限らずベトナム進出には「ライトパーソンをいかに見つけ、付き合うか」が非常に大切だ。

中国市場開拓のポイントと最新動向
間層・新中間層向け市場が急拡大

スウィングバイ社長 海野惠一氏

アクセンチュアというコンサルティング会社から転じ、2005年にスウィングバイを創業した。アクセンチュアは米国の会社で32年間いて、中国人の家族と北京など主に中国で過ごした。現在当社は経営者や経営幹部に中国対策の研修を行ったり、中国や東南アジアでの事業推進支援と事業代行を行っている。かつて従事したコンサルティングはいわばアドバイスだが、それよりも自分が中国やアジアの人たちに直接アプローチして仕事をしてみようと考えたのだ。また、長らく同じ事業をしていて欧米や世界の政治経済を知らないと実感し、この10年間グローバルの政治経済を勉強してきたことが現在の仕事につながっている。最近では対中国ビジネス用に本も書いている。
 
中国の市場の変化について言うと、まず人口構造からみて都市人口が爆発的に増えている。つい3年前くらいまで都市人口は4億人。今は9億7000万人もいる。これはすごいことで、従来の農村を都市と呼ぶようになった面もあるが、少なくとも1億5000万人の農民が都市に出てきたとみている。
 
また富裕層と、その消費の拡大も進んでいる。11年には可処分所得が2万ドル以上といった富裕層、超富裕層が人口の10%いて、消費量としては20%を占めている。これに可処分所得8000ドル以上の新中間層、中間層を加えると現在でも人口の30%にも及ぶ。これが20年になると新中間層以上の消費量は70%にまでなる。日本では、中国に中間層が何億人も出てきて大きな市場なんだな、くらいにとらえているが全然ちがう。こつ然と降ってわいたような市場が中国で今出てきているということを認識しなければならない。
 
今までの日本企業の顧客層は富裕層で、高品質・高価格のものを売ってきた。これからは中間層、新中間層を含めて適正の品質・適正の価格のものを売っていかなければならない。
 
中国人の二面性についても触れたい。例えば一方でPM2・5といった大気汚染を非常に気にしていながら、他方では自分の車を持ちたいと考える、といったように。金持ちを憎悪する一方でお金を崇拝するといった面もある。
 
その背景として「仁義礼智信」の国であるということを覚えておかなければならない。まさに日本で言う仁義というか上下などの関係を重んじる。それに血縁、地縁も深い。日本人はそのあたりをもっと認識しなければいけない。中国に進出した日本企業の総経理が「中国に骨を埋めに来ましたと言えるだろうか。うそでもいいから言ってみればよいのではないか。
 
それに中国系アメリカ人や台湾人・中国人を就けることが多い副総経理について。現地でのビジネス慣行がわかっていて販売活動に欠かせないのだが、彼らの活用が日本企業はまだまだできていない。