モノづくり力徹底強化検討会, 最新活動報告

モノづくり力徹底強化検討会in福岡 2013年11月12・13日

今こそ、モノづくりの底力を~九州から発信

モノづくり日本会議は11月12日、13日の両日福岡市博多区のマリンメッセ福岡で特別講演会を開いた。日刊工業新聞社主催で12―14日に催した「モノづくりフェア」と同時開催。12日は「モノづくり力徹底強化検討会」の一環として蛭田史郎旭化成常任相談役が「モノづくりの移り変わり」、藤原博昭安川電機生産業務本部先端生産技術センタ長が「安川電機の次世代のものづくりへの取り組み」をそれぞれテーマに講演した。

モノづくりの移り変わり ~「変化」に対応 四つの方向性重要~

旭化成常任相談役 蛭田史郎氏

日本はモノづくりに強いといわれてきた。だが、近年その強さにほころびが出てきているようだ。モノづくり環境の変化に対して、どう向き合っていくかを旭化成の事例を交えて紹介したい。
 
日本のモノづくりには強みが二つある。一つ目は自動車メーカーを頂点にすそ野産業を形成したモノづくり集団だ。二つ目は相互協力によるすり合わせだ。完成品までの部品点数が多いほど、この特色は生かされる。
 
部品の性能とコストを最適化することで、最終製品の性能や効率化を達成。すそ野産業間の信頼関係や情報共有化を重視する国民性が強みを発揮してきたと思う。
 
しかしエレクトロニクス技術の進歩は、大きな社会変革をもたらした。アナログからデジタルへの移行は、数個のLSIで最適化、標準化されるため、日本が強みとするすり合わせを武器とした生産システムは太刀打ちできなくなった。
 
さらに情報化社会と世界の均一化は日本のモノづくり文化に追い打ちをかけた。最新技術で先進国の成長モデルを模倣した発展途上国は成長し、日本を含めて新たな成長モデルに転換できない先進国は停滞する世界の産業構造を生み出した。
 
こうした環境の変化に対応するには、今後四つの方向性が重要だ。一つ目は自社製品を世界一にする事業展開。二つ目は自社のノウハウを内蔵したソフト化。三つ目はすり合わせの複合化。四つ目は新商品の創出だ。
 
旭化成を例に具体的に紹介すると、アクリル繊維原料のアクリロニトリルで世界一を目指した。国内に縛られては世界展開できない。韓国企業を買収し、タイに生産拠点を置いた。情報電子機器向けプリント配線板の回路設計に使う電子材料の感光性ドライフィルムレジストもグローバル化に対応して中国へ進出。世界シェア30%を超える事業に成長した。
 
世界シェアを確立するといち早く顧客の課題解決策を商品に付加して商品化できる。ソフト化では、リチウムイオン二次電池用のセパレーター事業で顧客の電池性能に応じた製品化を。LSI事業はアナログとデジタルを混載したミックスドシグナルを中心に開発サービスを付加した戦略へ転換するなどした。
 
すり合わせの複合化では、LSIも回路や部品のすり合わせはできる。電子コンパス事業では既存技術をすり合わせてモジュール化し、世界中のほとんどのスマートフォンに採用される強い部品事業を確立した。
 
世界市場は常に新商品の出現を期待している。今後の新商品創出は、資源環境への対応や医療分野が注目だ。これらの分野は商品開発が常に求められるためデジタル化しない部分が多く、日本のモノづくりの優位性が発揮できるはずだ。
 
日本のモノづくりは今後も経済の潮流の変化に対応し、先取りしたモノづくりの追求が不可欠だ。それには人材の育成、企業、業種間にまたがる研究開発体制と協業体制の構築、産官学の連携などが必要。国家戦略においても税制の見直しを含めたモノづくりの強化を求めたい。

 

次世代のものづくりへの取り組み ~「グローバル高速ものづくり」推進~

安川電機 生産・業務本部先端生産技術センタ長 藤原博昭氏

安川電機は2015年に創立100周年を迎える。石炭搬送用の電動機で発足した当社は、その後、電機システムやメカトロニクスへと技術をシフトしていく中で、サーボモーターやインバーター、環境・エネルギー、ロボットと事業を広げてきた。2012年度連結売上高は3103億円。うちモーションコントロールが47%、ロボットが36%、システムエンジニアリングが12%で3本柱となっている。生産は日本、米国、欧州、アジアの4極体制を敷いている。海外は需要地生産、現地調達が原則だ。
 
海外は約20年前に生産拠点を設置した。マザー工場を中心とした「世界同一ものづくり」をコンセプトに、生産、調達、品質情報を一元管理している。売上高に占める海外比率は12年度54%。15年度には65%に増えるだろう。これに対して海外生産比率は12年度29%だが、15年度には50%に設定している。主な需要地は中国。12年度の現地生産比率は13%だが、15年度は24%に高める。
 
ものづくりのコンセプトは「グローバル高速ものづくり」だ。付加価値の最大化と言ってよい。トータルのリードタイム短縮と、グローバルバリュー最大化で生産の最適化を図る。
 
次世代のものづくりで目指す姿は徹底的な効率化、世界唯一の「もの」と「つくり」、生産技術者の増員と育成の3点だ。これを実現できれば顧客へ特別な価値とスピードを提供できる。そのための取り組みとして要素技術開発、設備開発、試作、仕組み・システム、グローバルの五つの視点から新しい価値をこれまでにないスピードで提供する。
 
このうち要素技術に関しては独自技術の探索と蓄積を進め、5年10年先を見据えた社内事業へ適用可能な技術の発掘と検証を進める。設備開発は新工法や独自の生産設備で量産化技術を確立する。生産技術者の育成を目指す狙いもある。
 
一方試作については、試作評価プロセスの確立など開発力を強化する。設計者が考えた図面通りでは課題が未解決なままで現場での垂直立ち上げが困難になる。世界同時立ち上げのために開発のリードタイムを短縮し、海外拠点と日本のマザー工場が同時に立ち上がる取り組みを始めた。3DプリンターやCAE(コンピューター利用エンジニアリング)技術を導入するなどで作業の効率化などを進めている。
 
また仕組み・システム改革は、運用の効率化と基盤システム構築でリードタイムを半減する。グローバル化については、中国以外の将来性がある需要地や生産候補地を探すことになる。
 
当社は創立100周年に向けた15年ビジョンを策定した。先進国の少子高齢化社会や環境エネルギー問題など、台頭する地球規模の課題に対して当社のコア技術、次世代ものづくり力を生かして、問題解決や収益拡大に取り組むつもりだ。

感性価値から広がる新しいモノづくり~商品価値・買う理由の説明必要~

オラクルひと・しくみ研究所代表 小阪裕司氏

11月13日に開いたモノづくり日本会議特別講演会では、小阪裕司オラクルひと・しくみ研究所代表が「感性価値から広がる新しいモノづくり」と題して講演した。また引き続いてのワークショップでは参加者が「感性価値創造」へのアプローチを体験する機会も設けた。

感性工学は学際的学問で哲学からロボットまでジャンルが広い。どのように人の気持ちをつかみ、動かすかを研究している。商業の世界で先に広まったが、製造業との縁も増えている。なかでも自動車は「乗って気持ちよい」というような感性工学の領域に突入している。消費者相手でも企業相手でも違いはない。
 
売り上げ競争は激しいが、価格だけを比較しても売り上げにはつながらない。客の行動が売り上げをつくるためだ。開発との関係では、商品を十分に価値創造できていないことがある。「V(商品価値)=P(機能・性能)/C(コスト)」という公式では、機能・性能が上がり、コストが下がれば価値は上がる。だが多くの場合でコスト減は限界、機能も完成の域に達してしまっている。
 
日本の消費者志向は1980年ごろ、モノの豊かさから心の豊かさへシフトした。一方で心の豊かさは抽象的で、消費者は何を取り入れれば幸せになるかわからない。そこで作り手や売り手が具体的に示す必要がある。
 
購買行動は高低二つのハードルの先にある。まず「買いたいか買いたくないか」の高いハードル。買いたい気持ちを生む脳の働きが「高次情報処理=感性」だ。デザインや販促ツールなどで感性に訴えれば、価値が生まれて買いたいにつながる。そして低いハードル「買えるか買えないか」は景気にも影響される。
 
商品価値が高くても、客が価値と感じなければ売れない。商品が持っている、顧客にとっての価値は、概念化・言語化してメッセージを出さなければいけない。脳で価値と認識したものだけが価値で、商品価値を伝え損なうと価値がないのと同義だ。商品が悪いのではなく、価値を掘り起こせていないのだ。例えば防水スプレーは冬に売れないが「忘年会でビールをこぼさない自信がありますか」と価値を訴えたら売れた。人間は行動すべき理由がわかれば行動する。スペックでなく、買う理由の説明が必要だ。
 
購買動機を探るには、”どうして””いま””あなたから”商品を買わなければいけないかという「究極の質問」がある。「どうして」は基本動機、「あなたから」は他社との差異、「いま」は緊急性や希少性を意味する。社内で尋ね合うことで価値を掘り起こせる。特にモノづくり企業は商品が持つ物語要素を語らないことが多い。苦労話は心を打つ。情緒的な部分が価値になる。
 
商品開発における技術シーズと価値創造のためのマーケティングは、顧客とのコミュニケーションをフィードバックすることで、ループになり回り始める。明らかなニーズがなくなった時は、このループに身を置くとよい。購買動機は低価格だけということは、なくなるはずだ。