その他事業, 最新活動報告

モノづくり推進シンポジウム 2015年2月5日

地方経済活性化に向けた課題と今後の展望

モノづくり日本会議(事務局=日刊工業新聞社)は2月5日、千葉市の幕張メッセ・国際展示場5ホールでモノづくり推進シンポジウム「地方経済活性化に向けた課題と今後の展望」を開いた。人口減少社会を迎える中、人口・経済活動について大都市圏への過度の集中、地方の過疎化・弱体化が危惧されている。日本が持続的な発展を遂げるには、地方経済の活性化が急務となっている。どのように考えて、何をなすべきなのか。本シンポジウムでは地方経済活性化に向け、直面する課題を整理し、将来に向けた方策を探った。

地方創生こそ日本のものづくりを支えるカギ

全体最適実現する人材養成を
    地域活性化センター理事 椎川忍氏

いま地域に必要なものは何か。それは著しく失われている自立心を再生することだ。補助金行政の弊害として、地域の自立心が失われてしまっている。これをなんとかしなければならない。
 
地域の人たちは考え方を変えていかなければだめだ。ないものねだりをせず、「あるものを生かす」という内発的発展の考え方に切り替えていくことが必要である。
 
大前提になるのは「地域は経営するもの」だということだ。最も重要な経営資源は人材。この生産性向上を図ることが人材育成にほかならない。
 
地域の経営はこれまで、
人口を増やす、所得を伸ばす、経済を発展させるということを目指してきたが、それは幸せになりたかったからだ。であるなら、人口減少時代にはもっとストレートに「幸福度の向上」を目標に掲げたほうがよい。それを実現するためにさまざまな施策に取り組むのが地域経営だ。
 
地域活性化とは幸福度を追求し、一言で言えばサステナブルで、ハイブリッドな国家・社会構造を目指すということだ。
 
世界には日本の文化で解決できる問題がたくさんあり、ゆくゆくは世界文明になり得る。近代科学技術だけでなく農山村の生活の技、市場原理だけでなく人間の絆による問題解決、貨幣経済だけでなく実物経済など。日本の価値は自然との共生に培われた文化にある。今こそ西洋文明的な構造や価値観だけでなく、日本文化の価値をしっかり守って次世代に伝えていくことが大切だ。それがサステナブルでハイブリッドということ。
 
地方創生の3分野のうち、まちづくりについては、コンパクトシティー化をいう人が多いが、元来農山村はコンパクトな構造ではない。コンパクトシティーのコンセプトは都市部に限った話で、農山村にこの考え方を持ち込むべきではない。
 
やる気と意欲を持って、人口移動を反転させ、生き残れるようになった地域が実際にあることを前提に考えるべきだ。鹿児島の「やねだん」での取り組みなど大いに参考にしてほしい。
 
ひとづくりで肝心なことは、地方創生という全体最適を実現できる人材を養成することだ。イノベーションを起こす力、地域を経営する力を持った人材を育てていかなければならない。地方創生に成功した地域にはこのような人材が育っている。
 
人材育成システムの構築には知恵が必要だ。ソフトの仕組みとして「地方創生大学校」を提案したい。自分たちの成功例をもとに人材育成を行っている地域の塾などを登録し、どこでどのようなことが学べるのかを分かるようにする。養成すべき人材を選定したら、その人材に資金を交付する。全額である必要はない。かえって定額のほうが制度としては継続できるし、やる気のある人材が集まる。
 
しごとづくりは企業誘致など外発的なものと、一次産業活性化や地場産業振興などの内発的なものがある。外発的なものは、いつかは地域を出ていってしまうことを肝に銘ずる必要がある。
 
日本には一次産業しかない地域がたくさんある。一次産業を元気にしなければ地方は創生しない。農業は進め方次第で成長産業になっていくポテンシャルがある。水産業は資源管理をしっかりやれば大丈夫だ。
 
地方創生で非常に重要なテーマは森林・林業の再生だ。国土の8割を占める山、7割の森林が価値も雇用も生まない国では将来はない。
 
木材資源は年2%ずつ増えている。1億立方メートルの増加分に対して、市場規模は7000万立方メートルにすぎない。この資源の価値を認め、需要を創出しさえすれば、山は再生できる。
 
そのために、「公共建築物等木材利用促進法」を改正・強化し、国や自治体には一定量の利用を義務付けるなどの施策が有効だ。また、「木育推進法」を制定し、ウッドスタート事業を全国展開することも意義がある。
 
もともと、日本の優秀な人材・企業は農山村の「ものづくり文明」から生まれてきた。都市や大企業は、地方からの水、空気、食料、人材によって支えられてきた。この循環と共生の構造を維持・再生することが日本の将来に不可欠だ。

地方からの産業革命-大逆転の時代

サステナブル社会 世界に示す
    太陽経済の会 代表理事 山﨑養世氏

太陽経済とは私の造語だ。19世紀が英国中心の石炭経済の時代、20世紀が米国中心の石油経済の時代とするならば、21世紀は日本中心の太陽経済の時代にしていこうという思いからだ。
 
くにうみグループは、社会活動をする太陽経済の会、主に再生可能エネルギー事業に取り組むくにうみアセットマネジメント、シンクタンクである成長戦略総合研究所という3組織の体制で活動している。太陽経済の会は、太陽が根元となる再生可能エネルギー、水や食糧、環境・省エネ・省資源をテーマとした地域・街づくりを社会に向け提案し、実現を目指している。賛同企業や地域が増え、メガソーラーやバイオマス発電事業などが具体化している。
 
現在、瀬戸内市にある錦海塩田跡地では出力230メガワット、総事業費1100億円の太陽光発電所の建設を進めている。宮崎県川南町では地元で40人を雇用する木質バイオマス発電事業がまもなく稼働する。年間7万2000トンの木材を宮崎県内で購入する計画だ。
 
小泉内閣時代、グローバリゼーションに対応するため、金融とITを戦略分野に位置付けた政策が進められた。グローバル企業や首都圏のメリットは大きかったが、その一方で、製造業の企業は海外に出て行き、地方は大打撃を受けた。
 
田中角栄元首相が1972年に発表した「日本列島改造論」は「過密と過疎の解消」「国土の均衡ある発展」を軸にした政策だった。だが、結果は東京一極集中、太平洋ベルト地帯の強化になってしまった。私は「日本列島快走論」でその経緯と分析をまとめたが、同時に、今こそ「過密と過疎の解消」「国土の均衡ある発展」という政策が必要だと断言する。
 
私は10年以上前から、農業は最先端産業になる、田園から産業革命を起こせると主張してきた。ポスト工業化社会の中で、工場が海外に移転してしまい、貿易も赤字だ。欧州各国も同じ状況だ。ただ、欧州では価値の高い農産物の輸出が成長している。東京一極集中の弊害とその対策については2004年に「大逆転の時代」で高速道路無料化や農業活性化などを提言している。
 
しかし、当時の構造改革路線はグローバリゼーション・東京一極集中ばかりで、「国土の均衡ある発展」を完全に忘れてしまった。東日本大震災を契機に、首都圏の震災リスクが注目されるなど、各方面から集中の弊害が指摘されている。
 
現安倍政権は「地方創生」を重要政策に掲げている。ついに「田園からの産業革命」「大逆転の時代」の方向に社会は動き出したのだ。
 
首都圏は高齢化が急速に進んでいる。首都圏ではやがて税収が急減し、財政が破綻する自治体が続出すると予想されている。これから、高齢者が激増するからだ。
 
一方で島根県の山間部で子どもが増えている地域があることからも分かるように、若い人がみな「地方がいやだ」と思っているわけではない。古くは工業の集積地だった出雲をはじめ、長く日本海側が経済の中心だった。明治初期に最も人口の多かったのは新潟県だ。東京に集中しなければならない理由はない。
 
日本の大逆転戦略として、「3000万人の国土リロケーション」と「多次元ネットワーク型国土」を提案したい。
 
まず、首都圏に集中しすぎた人口の適正配置を促す。地方は不動産コストが安い。土地が広く、再生可能エネルギー資源に恵まれ、食料もある。それが成長の原動力だ。
 
情報、電気、モビリティー、ロジスティクスはあるものを利用しながらネットワーク化する。電気の双方向化。高齢者が自分で運転しなくてもどこにでも行けるモビリティーや、最短・最小コストのロジスティクスを実現させる。
 
私たちは川南町の所得・雇用・若者の伸びを日本一にしようと取り組んでいる。こうしたことを日本中に広めていきたいと思っている。一極集中から新しい形の国土軸に転換させよう。
 
サステナブル=環境に負荷を与えず、再生不能な資源を消費せずに持続可能な社会を、日本の地方が実現したとき、世界がそれを学んで成長できる。これが太陽経済の目指す姿だ。