その他事業, 最新活動報告

防災産業シンポジウム 2015年3月16日

防災産業の発展と防災力向上に向けて 防災産業展in仙台 併催

内閣府、宮城県、日刊工業新聞社が主催する「防災産業シンポジウム 防災産業の発展と防災力向上に向けて」が3月16日、仙台市宮城野区の夢メッセみやぎで開かれた(モノづくり日本会議共催)。同じ3者が主催し同15日から17日まで行った「防災産業展in仙台」(仙台市、東北経済連合会、みやぎ産業交流センター、河北新報社共催)の併催イベントで、同展は仙台開催の第3回国連防災世界会議(同14日―18日)の関連事業でもある。450人が来場したシンポジウムは午前と午後の2部にわたり、東日本大震災の復興に取り組んだ企業や、防災産業としての将来をにらむ企業らの講演、ディスカッションを中心に盛り上がりをみせた。

東日本大震災を契機としたトヨタの取り組み

PHVから電気供給 街に安心感
  トヨタ自動車総合企画部長 近藤元博氏

東日本大震災を契機に学んだこと、取り組んでいることを紹介したい。まず被害にあわれた皆さまには心からお見舞い申し上げ、一日も早い復興をお祈りする。
 
実は震災の2日前、3月9日に当社はグローバルビジョンを発表した。リーマン・ショックなどで苦しんだ時代から再出発しようと考えたものだ。トヨタの経営は、良い車をつくって街に供給し、良い街、良い社会を築いていくもの。そのためにも会社は安定した経営基盤を持たなければいけない。震災は、災害に強い車、災害時にも役立つような車づくり、そして街づくりについて考える契機となった。
 
災害に強い車についてだが、ハイブリッド、プラグインハイブリッド(PHV)、電気自動車(EV)といった次世代環境車は、平時にどうお客さまに貢献できるか考えて開発してきたもの。震災時に長期の停電や燃料不足を体験したお客さまからの声を聞き、これらの車に新しい価値観があることを逆に学んだ。
 
一つは車から電気を外に取り出して電源として使えたこと。また限られた燃料で長距離走行できるため、ガソリンの供給が途絶えた時に役に立った。新しいPHVは車から家に直接つなぎ住宅や家電に電気を供給できる。将来は都市のエネルギーマネジメントにも貢献できるのではないか。ビークル・ツー・ホーム(VtoH)として車がインフラの一つとなる可能性を探る実証研究を進めている。例えば災害時、交番にPHVから電気を供給し、真っ暗な中に交番に一つの明かりがつけば、街に安心感を与え犯罪防止に役立つ。

 街づくりへの貢献としては、トヨタの工場の発電システム、エネルギーシステムが地域の防災復旧の支援拠点として役立つのではないか。工場の自家発電装置からの電力や熱は、周辺のサプライヤーや工場、植物工場などにも供給できる。
 
燃料電池車の活用についても紹介したい。水素社会と電気の社会が融合するような将来のモビリティー社会を構想している。水素についてはまだまだインフラが整備されていないが、低炭素社会を実際に担う。電気に比べて貯蔵効率が高く、もちろん発電機としても使える。今回発売したMIRAIは受注を多数いただき納車まで3年待っていただいている。
 
私たちは平時に強い会社、平時に役立つ商品が、必ず有事にも活躍すると考え、震災の教訓をもとに事業活動を進めている。

官民一体で世界に広める

  宮城県副知事 若生正博氏

東日本大震災から4年が経過した。国内はじめ世界中から多大な支援をいただき復興に全力で取り組んでいる。宮城県では10年間の復興予算額の消化率が6割で、復興のピークを迎えている。ご支援に報いるためにも、とにかく復興を成し遂げなければならない。
 
国連防災世界会議には186カ国、5000人の政府機関、NGOの皆さまが来県され、会議に臨んでいる。開催にあたりこの防災産業展を関連事業として企画した。災害時実際に役立った技術、復興を迅速に進めるための技術、今回の災害を機に生み出された技術、こうした三つの分野の技術や製品の普及を通じ、これからの世界の防災対策に貢献したいという趣旨だ。
 
展示されている技術・製品をご覧になるとわかるが、わが国の防災技術は平時においても使い勝手の良い有用なもの。世界に広めたい。
 
本日は各企業の皆さまに災害の教訓を踏まえた取り組みを紹介していただき、防災産業の発展のため官民一体となって取り組むべき課題についても考える。さまざまな立場から、業界を代表する貴重なお話をうかがう。

情報寸断に対する富士通の復興支援の取り組み

街づくりICTで貢献
  富士通公共・地域SBG東日本復興・新生支援室長 松木茂夫氏

復興にどう取り組んできたか、防災に向けて震災から学んだことを今後どう生かそうとしているか報告したい。富士通グループは東北地方の生産拠点、グループ会社を含め4000人の従業員がおり、被災もした。安否確認システムで従業員並びに家族の安否を迅速に確認した上で、災害に対応する体制を整えた。
 
まず震災はお客さまのシステムにも大きな影響を与えた。消防、警察、病院、自治体など人命に関わるICTシステムから復旧を急ぎ、被災地の復旧・復興に全力を挙げた。発生直後から被災地で活動した技術員はもちろん、全国から駆けつけた応援の技術員は1500人に達した。津波被害で故障したパソコンやサーバの重要データの読み出しも、分解、洗浄などの作業を通じ支援した。生産拠点については2008年に策定した事業継続マネジメントに基づいて生産・出荷体制を整え、震災で被害を受けた機器の代替品の出荷に対応した。
 
震災の記録を後世に残して伝えることにも協力した。仙台市が作成した震災記録誌は震災後1年間の行動を忠実に記録し後世に課題を伝えるものだが、富士通総研などとともにヒアリングや取りまとめを支援した。多くの地域の防災計画策定の参考になればよい。
 
東日本復興・新生支援室は11年5月に設立した。新しい街づくりにおいて各地で自治体だけでなく産学官が連携した協議会やコミュニティーが立ち上がっている。街づくりの議論に加わり、ICTがどう貢献できるか模索している。また農業、水産業といった一次産業の復興のために、小学生にタブレットを配り理解を深めてもらっている。企業、自治体、NPOなどへパソコンや乾電池などを供給しているほか社員のボランティア活動も継続している。
 
情報の分断についても震災で多くを学んだ。ネットワークの分断で情報がなかなか伝わらない中SNSなどが活躍した。不安定な状態を改善するには情報をいかに正確に伝えるか、ネットワークを早期に復旧させるかが課題となる。そうした方向の商品やソリューション開発にも取り組む。可搬ケースの中にサーバ機能、通信機能、電源を搭載したものなどだ。
 
富士通グループは社会インフラを支える企業として、現地でICTによる支援を継続してきた。見えてきた課題は将来世界中どこでも起こりうるもので、一つ一つに取り組んで人に優しい豊かな社会を実現したい。

日本通運の危機管理体制と災害に打ち勝つロジスティクスの構築

陸・海・空輸送サポート
  日本通運公用営業部専任部長 栗田克則氏氏

震災の教訓として、物流網の確保が市民生活および産業活動の継続に不可欠であることを、改めて認識した。災害対策基本法など各法律に準じた指定公共機関として、社会的使命を持ちグループ全体でまい進してきた。それを踏まえた危機管理体制と、ロジスティクス体制構築について話したい。
 
当社の国内でのBCP(事業継続計画)は今回のような広域災害編と新型インフルエンザ編で構成しており09年に策定した。震災発生直後に社長を本部長とする災害対策統括本部を本社に設置し、被災地以外の全国にも災害対策本部を置き、広域災害としてBCPを発動した。通信網の規制などで被災状況の把握に時間を要したが、BCPが行動指針となり社を挙げて復旧・復興に取り組めた。BCPが機能したと言える。
 
指定公共機関としての主な使命は緊急救援物資の輸送で、今回は阪神・淡路大震災時に苦慮したルートや車両確保に力を注ぎ、24時間体制の受け付けで輸送を行った。輸送依頼は政府主導と自治体主導があり、震災当日夜、早速西日本各地のパン工場から輸送が始まった。震災の影響は首都圏、関東にも及んだため西日本発のトラック手配が非常に多く、燃料確保が大きな問題だった。6800台を利用したが幸い燃料がなくて立ち往生することはなかった。阪神・淡路大震災時の1300台と比べても未曾有の緊急輸送だった。鉄道が使えずトラックによるコンテナ輸送も行った。山形空港での物資集積や津波で打ち上げられた船の重機による移動など、陸海空すべての輸送モードでサポートした。
 
一度に非常に多くの物資が特定の場所に集中し、必要としているところに配送できない現象も多くみられた。物資がどこにあるかわからず需給ミスマッチが生じる「見えない在庫」が問題だ。体育館など急造の配送拠点で効率が悪かった点も挙げられる。
 
今後は公的機関と連携して在庫管理、ライフラインの復旧度合いで変わる死に筋アイテムの集約、必要物資の情報開示などが不可欠。大型トラックが乗り入れ可能かも含めた配送拠点、保管施設の事前選定も必要だ。
 
宮城県への要望は被災エリアを大規模災害発生時のバックアップ拠点や震災実体験エリアとして活用してもらいたいということ。私たちは震災で思いやりの気持ちや絆の大切さを改めて教わった。日常から防災への強い気持ちを抱き企業活動に取り組みたい。

防災産業展

最新技術でビジネス展開
  EV・ヘリなど展示

「防災産業展in仙台 伝えよう、未来に教訓と備えを」は160社・団体が出展し、3日間の会期中5827人が来場した。展示会は3回目で、従来は日刊工業新聞社の単独主催だったが、今回は内閣府、宮城県が加わり、各省庁や自治体などを中心とする東北地区での連携に関する紹介をはじめ、官民一体で防災に関する最新の情報を発信するイベントとなった。
 
出展企業の最新防災技術・ノウハウに来場者が熱心に見入り、ビジネスに結びつくやりとりを交わす場面が会場内の随所で見られた。集中豪雨の際に建物内に水が浸入しないようにするシートやシャッター、災害情報を迅速に的確に伝えるための各種機器、電力供給に役立つなど防災の新たな可能性を探る電気自動車など、さまざまなデモンストレーションが繰り広げられた。陸上自衛隊、消防庁ほかの特別協力による、災害時に活躍する軽装甲機動車、ヘリコプター、水陸両用車両などの展示も目を引いた。視察した山谷えり子防災担当相は震度7の揺れにも威力を発揮する免震装置などを体験。「日本の技術を世界に発信していきたい」と語った。
 
会場には国連防災世界会議に海外から参加した各国の関係者、マスコミなども訪問。日本の技術に感心するとともに、自国への導入の可能性について真剣に議論する場面が見られた。

詳細な地域情報見える化

防災分野でイノベーション

  内閣府官房審議官(防災担当) 兵谷芳康氏

国連防災世界会議は国連加盟国193カ国のほとんどに参加いただいている。災害のない国はないので、非常に関心が高い。このシンポジウムも含む防災産業展はパブリックフォーラムの中でもメーンの大きな事業だ。前回の防災世界会議は2005年神戸で開かれ兵庫行動枠組(HFA)を策定した。後継枠組として、防災を政府が取り組むべき優先課題とすること、費用対効果が高い防災の事前投資、「より良い復興」(ビルド・バック・ベター)などについて話し合っており、防災について最先端にいる日本の経験や知見が生かされている。
 

日本の産業界には経験を踏まえた防災のためのさまざまな技術、ノウハウが蓄積されていて、それを生かした製品もたくさんあり、今回展示されている。日本だけでなく世界各国に導入されるよう、今後さらに開発を進める必要がある。
 
今後は技術、ノウハウを結集し、官民の連携を強化して防災分野のイノベーションを起こさなければならない。意見交換の場も必要だと考えている。このシンポジウムが契機となって防災産業の育成に向けた機運が盛り上がることを期待する。


特別講演

災害対策システム「7VIEW」構築の背景・目的展望について
多様な企業と国・機関が連携
  セブン&アイ・ホールディングス執行役員
システム企画部シニアオフィサー 粟飯原勝胤氏

セブンイレブンは2月末で1万7491店舗がある。24時間365日、日常生活に欠かせない商品やサービスを提供し続け、暮らしを支えるライフラインとして身近で頼れる存在でありたいと考えている。他社も含め社会インフラの一翼を担うコンビニエンスストアは、地域社会から災害発生時に、営業を継続することによって一番大きく評価され、期待されもしている。いつもと同じように安心して買い物できるよう目指している。そうした中でセブン―イレブンのこれまでの災害対策システムと、今取り組んでいる7VIEW (ビジュアル・インフォメーション・エマージェンシー・ウェブ)構築の背景、官民連携社会貢献の展望、といったお話をしたい。
 
災害対策システムはまず05年に店舗の停電を検知するシステムを作った。各店舗のコンピューターには停電発生時に電源を供給する無停電電源装置(UPS)があり2時間ほど電気を供給できるが、停電が発生すると5分後にコールセンターに通知する仕組みを作った。5分以内の停電・復旧は結構あり、5分以上停電が継続すると長時間に及ぶことが多いからだ。こうした情報を社内で共有し、台風発生時の冷凍・冷蔵設備の対応や、夜間停電時の防犯対策などに活用している。
 

3・11の時、私は東京の本部にいたが、即座にこのシステムでリストが上がってきた。2500店規模で停電が発生しているという一報だった。14分後の15時現在で東北だけでなく全国で合わせて1896店舗で停電が生じていた。サポートを即座に始めた。
 
東北へはヘリコプターをチャーターし菓子パンや支援物資などを用意したほか、発電機、仮設トイレも確保した。移動販売車を延べ20店舗営業し、セブン銀行は発電機と無線通信を備えたATMを積んだトラックをつくり支援した。
 
また昨年は2月に山梨県などで記録的な大雪、8月に各地の土石流やがけ崩れ、9月には御嶽山の噴火と災害が続き、より詳細な地域情報の見える化の必要性を強く感じた。災害を防ぐことは残念ながらできないが、起きた瞬間からどう動けるか、その時間をいかに短くできるか、そのためにどう情報を入手したらよいか、を考えている。
 
初動の的確な対応がきわめて重要なので、正しい情報をより早く入手してわかりやすく共有するために、まず地図上に各種情報を組み合わせて直感的に理解できるように、と考えた。災害時はとてもあわてていて緊張もしている。簡単に伝え、使えることが大きなポイントだ。
 
そこで7VIEWを構築中だ。例えば地図に落とし込んだ停電情報から、非常用電池があるうちに加盟店から発注データをセンターサーバに送ってもらったり、店舗周辺も停電して交通信号が停止すれば渋滞が生じると考えて物流対策を組んだり、といった使い方をしている。
 
またいろいろな取引先があるので、そこと協力して情報の提供、共有、供用ができないかと考えている。例えばパスコの空間情報サービスと地図データをリンクしてシステム構築を進めている。NECには停電情報で協力いただいている。NTTコミュニケーションズには店舗の専用回線の状況を監視いただいている。富士通から調達した車載端末で全国5200台の配送車からの情報を集めるシステムも構築中だ。ほかにもウェザーニューズ、綜合警備保障などから、いろいろな情報が集まる。
 
それらの「見せ方」として、グーグルのクラウド基盤を使ったシステム構築を進めている。店舗だけでなく工場や配送車の情報、公共的な災害情報などを乗せてレイヤー構造にして集約する。取捨選択して必要な情報を見ることができる構造を目指している。情報は店舗を通じてお客さま、地域住民向けにも発信する。
 
国や公共機関との情報連携も必要だ。私どもだけでなくいろいろな企業が多様な情報を持っている。行政が持つ災害情報などと連携して有効に活用されるよう、官民全体の取り組みが必要ではないか。意見交換の場をきちんと設けることで、より進むと思う。
 
7VIEWをつくっていく上でいろいろな情報を集めているが、同一カテゴリーでも自治体や企業など発信者が異なっていると、それぞれの整理と統一ポータル化などによる接続対応も必要だ。また海外からの旅行者が増えている中、災害にあわれたらとても不安だと思う。外国語でのリアル変換もスマートフォンを使えば可能だろう。
 
日本のICT技術と防災ノウハウを融合すればいろんなことができるはずだ。それも特殊な技術でなく、今手にすることができる技術と情報を組み合わせることで可能なのでは。そうしたことを話し合う土台をつくった上で、皆でやればよい。結果的に国の力につながるのではないだろうか。

パネルディスカッション

防災産業の発展と防災力向上に向けて ~今、企業に求められること~

自助・共助・公助がキーワード  住民・顧客目線の対応重視
  モデレーター 
インターリスク総研総合企画部特別研究員 
(経団連防災に関する委員会委員)本田茂樹氏
  パネリスト  
鹿島 技術研究所プリンシパルリサーチャー 近藤宏二氏
  セブン&アイ・ホールディングス執行役員 粟飯原勝胤氏
  東芝  コミュニティ・ソリューション事業部参事 熊倉信行氏
  NTT 研究企画部門サービスプロデュース担当チーフプロデューサー
電子行政担当部長 後藤達也氏
  ホンダ グローバルテレマティクス部業務統括室技師 飯星明氏

■震災BCP
▲本田 粟飯原さんからは7VIEW構築の背景などをうかがった。まず4人のパネリストに各社の防災、減災の取り組みについて発表いただく。
 
▲近藤 当社の震災BCPへの取り組み、建設業界全体での取り組みを紹介する。顧客のBCPを支援するには自社のBCPを確立するのが前提。一つの建物から都市域に及ぶもの、予測などから対策技術までさまざまな技術を活用している。長周期で長時間続く地震動の評価を例にとると、駿河湾域、東海域、南海域など広い範囲でのシミュレーションを行っている。これを評価した上で、振動をどう減らせるかといったビルごとの制振装置など対策を取る。
 
ほかにリスク評価技術として、災害時の従業員の参集予測や帰宅予測を行い、それに応じた備蓄体制を構築する。またライフラインの機能停止期間を予測して顧客に最適なBCPを提案する。
 
▲熊倉 復興街づくりに向けた活動を紹介する。地域特性、住民目線に合わせた最適な復興に貢献しようと、岩手、宮城、福島の3県の目標に沿って活動している。石巻市のスマートコミュニティー事業では東北電力とも共同して、平常時は低炭素なエコタウン、災害時にも明かりと情報が途切れない安全・安心な街をつくろうとしている。具体的にはエネルギーの安定化、太陽光発電などの導入、住民が参加しやすい仕組みづくりを目指している。
 
宮城県の地域衛星通信ネットワークは県内に点在する県の施設、市町村の行政機関が情報共有し災害時には現場情報を収集できるよう、消防、気象台、防災関係機関を結んでいる。専用の衛星回線と、専用地上無線回線も活用している。

■通信設備守る
▲後藤 通信事業者として通信設備を守る対応の基本方針は、まず平常時のネットワークの信頼性をいかに向上させるか。また災害時はいかにサービスを早く復旧させるか。警察、消防などの重要通信をどう確保するかも重要だ。従来は設備の堅牢化(けんろうか)や燃えにくいケーブルといったハード中心の対策だったが、最近ではソフト面を中心とした対策になってきた。
 
実はNTTグループ各社だけでできることは限られていて、各支店単位やNTT東西の協力が重要となる。協定を結んでいる高速道路会社や、合同訓練を行っている自衛隊、さらには医療、観光といったさまざまなところと連携して対策を練っておくことが、実際に何か起きた時に大切になる。個別具体的にはさまざまなサービスを提供しているが、それらを世界標準と連携して広げていきたい。

■快適さも必要
▲飯星 通信装置をカーナビにつないで情報提供するテレマティクスでは、安全・安心だけでなく快適、便利で環境にもいい情報通信サービスを行っている。当社のインターナビを積んだ車の走行位置と速度を共有することで渋滞情報や、目的地に早く行けるルートを案内できる。雨や雪、地震情報もカーナビに表示する。震災時には通行実績マップとしてウェブ上で公開し、被災地にどうやって救援救助に行けばよいかというルートを提供する。
 
こうしたデータを解析して例えば石巻市では防災力の高い街づくりのための道路計画に活用してもらっている。当社の原点としては、人の役に立ちたい、使って便利で楽しいものを提供したいという考えが基本にある。

▲本田 各社の最新の取り組みをうかがったが、共通の切り口が見えてきたように思う。ライフラインの復旧など必ずしも予測通りにはならないだろうがベンチマークとなるサービスが提供されることはありがたい。
 
▲近藤 今回の震災で予測精度の検証もした。ある程度実用上使える段階になってきた。
 
▲後藤 ネットワークが想定外の災害にあった時、まだ人の手で現地に行って切れた線を結んだり、といった作業が必要なことも多い。ただNTTグループだけでなく、インフラ事業者も含めて情報共有し、効率的な連携ができるようになってきている。
 
▲本田 粟飯原さんにこれまでの取り組みで苦労された点などをうかがいたい。
 
▲粟飯原 コンビニエンスストアをいかに営業継続させるかという点で、どんな情報を集めたらよいのか悩んだ。皆さんの話から、世の中にどんな情報があるか、どう組み合わせれば役に立つかもっと勉強していきたい。
 
▲本田 住民目線というかお客さまの目線を重視しているということも共通するのでは。
 
▲熊倉 防災対策は自助、共助、公助がキーワードになる。これまで公助が中心だったが、震災後自助、共助の果たす役割が重要になってきているのではないか。近所の集会所にコミュニケーションする場をつくるなど地域特性に合った対応が大切になるだろう。
 
▲飯星 テレマティクスのいいところはユーザーからの情報提供もある双方向のコミュニケーションができる点。一人一人の方とホンダがつながって、サービスへの要望・ご意見を聞けることが強みだ。
 
▲本田 平時にどうするか、ということもキーワードですね。
 
▲後藤 自治体の方にヒアリングした際、危機管理課などという部署はない方が良く、全ての業務に危機管理の観点が必要という話が出た。平時に利用する機能の一つとして、それが災害時にどう使えるかを積み重ねていくのがポイントだ。

■平時の運用意識
▲熊倉 コンテンツというものは最初は皆が興味を持っていてもだんだん飽きてしまう。定期的にコンテンツを変えるなど、平常時の運用を意識した構築が必要だろう。
 
▲本田 やはり日本は地震についての技術開発が第一だが、海外展開する際にはそれぞれの国の状況を考える必要がある。本日皆さんがおっしゃっているが、やはり多様なステークホルダーとの連携が大切。企業間にとどまらず、産学官に民を加えたオールジャパンで、顔の見える連携が求められる。今回の国連防災会議、防災産業展が一つのきっかけになればよい。

 
▲石田 斬新でおもしろいアイデアがほかに盗まれるということはないのか。
 
▲遠藤 いっぱいコピーされているが、そんなのを相手にしているよりも、前を見て違う次のことを考えたほうがいい。
 
デザイナーの水戸岡鋭治さんと共同で「100年鞄」の開発を進めている。通常のキャリーは2万円ぐらいだが、それは20万―30万円ぐらいでと考えている。
 
▲石田 愛着の持てる製品を作り、壊れたら修理してくれる人がいる。これが心豊かな時代には必要なことになるのだろうと思う。メーカーとユーザーが顔の見える関係にあるモノづくり・サービスが大事なのだろうと感じた。  (敬称略)

ごあいさつ

産学官の連携 重要に
  日刊工業新聞社社長 井水治博

当社は東日本大震災の翌年からこの地で防災産業の展示会を実施している。防災産業に関する情報を発信しようという思いで継続しているものだ。今日はそれぞれの立場から貴重なお話をうかがえた。登壇の皆さまに心より感謝する。その中にもあったが、防災は国の総力が問われるもの。そのため産官の連携が大切だと改めて感じた。当社は新聞紙面、イベント、セミナーなどを通じて防災について情報発信していくだけでなく、産学官の連携組織の立ち上げについても貢献できればと考えている。今後も皆さまのご指導、ご支援、ご協力を賜りたい。

2015年7月に、「日本防災産業会議」が設立されました。
専用Webサイトはこちら http://bousai-industry.jp/