新産業促進検討会, 最新活動報告

第4回新産業技術促進検討会 2015年4月13日

NEDOにおけるディスプレイ分野のロードマップ


モノづくり日本会議(事務局=日刊工業新聞社)は4月13日、東京都千代田区のホテルグランドパレスで第4回新産業技術促進検討会「NEDOにおけるディスプレイ分野のロードマップ」を開催した。新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)は2014年度に「ディスプレイ分野の技術ロードマップの策定に関する検討および市場・技術開発動向等に関する調査事業」を実施した。本検討会ではフレキシブル・透明、インタラクティブ、拡張現実感といった、ディスプレー分野の新たな方向性について今後の展開を探った。


はじめに

「双方向化」「3次元化」今後の潮流
  新エネルギー・産業技術総合開発機構 電子・材料・ナノテクノロジー部長
岡田武氏

カラー化、高精細化、大画面化、薄型化を進めてきたこれまでがディスプレー1・0ならば、今後の潮流はまず双方向化。IoT(Internet of Things=モノのインターネット)ではウエアラブル、手ぶり入力などを取り入れ、I/Oインターフェースの役割を担う。もう一つは空間ディスプレーという3次元化。ホログラムなどがカギだ。
 
二つの潮流の先にあるCPS(Cyber Physical System)と実空間が相互に結びついて動く仮想現実感化がディスプレー2・0だ。
 
ディスプレー2・0では産業形態も変化する。1・0では大規模工場による低コスト大量生産だったが、多品種少量に対応するオンデマンド生産など、新たな産業形態が生まれるだろう。

ディスプレイ分野でのNEDOの取り組み

IoT社会での方向性検討
  前・新エネルギー・産業技術総合開発機構電子・材料・ナノテクノロジー部主査
矢野正氏

NEDOはディスプレー分野の産業強化に向け継続的に研究開発に取り組んできた。2008年度からの5年間は40型フルHD・40ワットの有機ELディスプレーのパネル製造の基盤技術として低損傷透明カソード形成、無機&有機透明完全固体封止、大面積有機EL成膜を研究開発した。
 
13年度から今年度までは革新的低消費電力型インタラクティブシートディスプレーの技術開発を進めている。軽く、薄く、割れにくく、低コストなディスプレーの製造技術開発と、低消費電力を実現させる。同時に、シートディスプレーならではのアプリケーション探索を進め、20年の東京五輪などでの実用化を目指している。
 
ロードマップは、30年に目指すべき社会像とディスプレー分野の産業像を想定し、そこから今取り組むべき技術課題を考えるバックキャスト型のもの。ビッグデータを活用したIoT社会でのディスプレー像を模索しながら国内産業の活気を取り戻すことが目的だ。
 
フレキシブル・透明、インタラクティブ、拡張現実感など、これまでとは異なる切り口でディスプレー分野の新たな方向性を検討した。今年度も引き続きロードマップ策定に取り組んでいく。(現・パナソニック エコソリューションズ社主幹)

ディスプレイロードマップの概要

現実拡張への技術発展予想
  東京大学大学院工学系研究科電気系工学専攻教授 染谷隆夫氏

2020年、30年を見据え、ディスプレーがどう発展するのかという夢を示すため、バックキャスト型のロードマップを策定した。IoT、ウエアラブルなどの新潮流が発展し、町中にディスプレーがあふれていったときに必要な技術という視点で議論を進めた。
 
ロードマップはフレキシブル・透明ディスプレー、インタラクティブディスプレー、現実拡張のための物理制御という3テーマでまとめた。フレキシブル・透明は表示媒体の新しい形状であり、インタラクティブは出力装置と入力装置との融合だ。どちらもディスプレーの活躍の場が大いに広がることを表している。
 
現実拡張のための物理制御はディスプレー分野の発展性の大きさを示している。現実世界が拡張されたように感じる拡張現実感という技術分野から、現実世界そのものを物理制御することで拡張する現実拡張への発展が予想される。
 
NEDO事業の一つ、プリンテッドエレクトロニクスは、フレキシブルな基材上に曲がるディスプレーを作る決め手となる。技術研究組合では高精度な電子回路を印刷プロセスで連続生産する技術の開発を進めている。事業化目前の成果も生まれている。

フレキシブル・透明ディスプレイ

ロバスト性・低パワー・低コスト課題
  龍谷大学理工学部電子情報学科教授 木村睦氏

ディスプレーはフレキシブル、透明、両者の組み合わせによって非常に高い付加価値を生む用途が考えられる。
 
要素技術については、駆動デバイスとして酸化物薄膜トランジスタ(TFT)は高画質向き、有機TFTは超大量配布・短期リプレース向け。表示体デバイスではOLEDが高画質・フレキシブルに進む。基板の主流はプラスチック。紙は短期リプレース向け、極薄フィルムは"くしゃくしゃ"ディスプレーで使われる。

成膜はコストパフォーマンスやフレキシブル性への適合の点で印刷が有望だ。パターニングは材料使用効率の高いアダプティブ型が期待される。
 
課題は大型化したときの製造時の基板伸縮。また、低温作製なので、デバイス特性の経時劣化の問題がある。
 
要素技術の構成例は①酸化物TFT+OLED+プラスチックで高画質フレキシブル・透明ディスプレー②有機TFT+電子ペーパー+紙で超大量配布・短期リプレース・フレキシブルディスプレー③有機TFT+OLED+極薄フィルムで"くしゃくしゃ"ディスプレー―など。
 
アプリケーションは、スマホやタブレットなど携帯用途や、8k・100インチといった超大型ディスプレー。見るときだけ広げる巻物・屏風(びょうぶ)ディスプレーも登場する。
 
透明貼付型の「どこでもディスプレー」は文字通り至る所に活躍の場を広げる。例えば、ショーウインドーに貼ると、画像を表示し、ショーウインドー内も見える。人が近づくと、関連情報を表示するといった具合だ。
 
また、"くしゃくしゃ"ディスプレーというのは、でこぼこの表面に貼り付け、さらに変形しても追従するので、非常に有用な技術になる。
 
これらのディスプレーには、ロバスト性、低パワー、インタラクティブ、低コストなどが要求される。画像信号・電力供給の無線伝送なども重要なポイントになる。

インタラクティブディスプレイ

対話デバイス センシング技術重要
  東京工業大学大学院情報理工学研究科計算工学専攻教授 小池英樹氏

インタラクティブディスプレーは入出力機能の統合されたディスプレーだ。表示デバイスから対話デバイスに向かっているといえる。タッチパネルやイメージセンサーなど、センシング技術が重要となっている。
 
5年後、10年後の応用例として、インタラクティブテーブル、インタラクティブウオール、デジタルサイネージ、エンターテインメントなどについて考えてみた。
 
インタラクティブテーブルは、家庭ではテレビが横になったイメージ。教育やオフィスで使うにはタッチパネルの高精細化が欠かせない。テーブルが大きくなると手が届かなくなるのでジェスチャー認識、テーブル上に置いた物体認識など非接触入力も必要だ。皆が周りを取り囲んで、見て、操作するので、方向非依存ということも重要だ。
 
インタラクティブウオールには局所的マルチタッチや非接触操作が必要だ。どこをみているのかという視線認識は取得情報の有効活用ができる。
 
デジタルサイネージにおいても非接触入力技術が重要になってくる。
 
エンターテインメントとしては、単なるパブリックビューイングではなく、コート自体、スポーツ自体が拡張していくようなディスプレーだ。
 
必要な技術開発は、接触入力では黒板サイズへの大型化、紙とペンの代替として高精細化、ホバー入力や力覚フィードバックなどの拡張機能。非接触入力ではローコストのジェスチャー認識、複数に対応する高精度の視線認識、マーカーレスのモーショントラッキングなどだ。
 
FPDでは、単体での大型化、モジュール化・スケーラブル化の二つの流れがある。裸眼3Dディスプレーの実用化も楽しみだ。プロジェクターでは、高速移動物体への投影を可能にする高リフレッシュレートの実現、フォーカスフリーで立体形状への投影が容易なレーザープロジェクターの開発などに期待したい。

現実拡張ディスプレイ

20年「東京五輪」で技術実用化
  東京大学大学院情報学環教授 苗村健氏

情報メディア技術について、人々の振るまいを促す場を創出する研究を進めている。実体と融和した情報操作を、空間中で身体を用いて直感的に行いつつ、安心して共有開示できる創造的な場を目指している。現実世界が拡張されたように感じる「拡張現実感」から、実際に現実世界を物理制御によって拡張する「現実拡張」の技術について議論を進めた。
 
物理的制御の手段は光学、磁場、超音波、機械などさまざまだ。基盤技術はユーザーと実物体の間のどの位置をターゲットとするかで異なる。脳内の場合、脳インターフェースでマルチモーダルや感覚統合などに応用される。サイエンスとしての探求段階だ。
 
眼前ではウエアラブルデバイスなどの技術。めがね型の拡張現実感インターフェースとして応用される。本格実用化は撮影や計測と連携した付加価値創出がカギ。
 
手の届く範囲での操作については、空中像や触覚提示など。医療・教育・アート、非接触操作などに応用される。非身体実装型ではフローティングタッチへの触覚提示や実物との重畳連携が重要だ。発光ではない発色制御も楽しみな技術だ。
 
物体近傍は、空中像や磁場・液面制御など。応用は遠隔通信や裸眼複合現実感など。視域制御、物理的な場の制御、等身大空中像のためのデバイス開発などが必要だ。
 
物体表面では、プロジェクションマッピング、MEMS微細加工などの技術。デジタルファッション、動的建築、スマート照明などの応用が期待される。課題は精密な投影技術、微細加工の大型制作などだ。
 
空間展開ではドローンやレーザープラズマなどの技術が、災害警報などの巨大サイネージ、空間演出などに応用される。超大型化に伴う安全制御が課題だ。
 
2020年のオリンピックではいくつかを実用化し、その後の発展・拡大につなげていきたい。

空中ディスプレイ

「どこでも空中映像」医療応用に期待
  パリティ・イノベーションズ社長 前川聡氏

我々は2枚の小さな鏡を直交して合わせたものを多数並べた「2面コーナーリフレクターアレイ(DCRA) 」を結像光学素子として用いた空中映像技術に取り組んでいる。この技術の最大の特徴は「どこでも空中映像」ということだ。
 
DCRAは単なる結像光学素子であり、凸レンズや凹面鏡と同様の存在だ。だが、固有焦点距離がなく、任意の距離で等倍像を結像できる。中心となる光軸がないので、タイリングによる大型化が可能だ。

鏡に映すのと同じ使い方で、簡単にどんなものであっても歪まずに空中映像表示ができるため、「どこでも空中映像」が実現できる。この映像は実像なので輻輳(ふくそう)と調節の矛盾がない。

空中映像で何ができるのか。物理的には存在しないものを、現実の空間の中で、空中映像によって視覚的には存在させることができる。また「触れないものに触れる」という使い方ができる。
 
指の位置検出を組み合わせれば、タッチディスプレーができる。空中映像と組み合わせてインタラクティブにすることで、触れない=触感が無いものを、触る=映像に触れると反応する、といったことができる。
 
また、原理的にはDCRAを置くだけで、例えば原子炉内の核燃料や、溶鉱炉の溶けた鉄を空中映像表示できる。これらは映像にすぎないため、「触る」ことも可能だ。
 
医療応用として、例えばCTスキャンの断層像をもとに、腫瘍の位置と血管の位置の相互関係を3次元空間の中で確認するというようなことを可能にしようと考えている。
 
以上のような特性により、DCRAを用いて実世界に実在感のある空中映像を付加することで、現実を拡張できる。
 
現在、ナノインプリント技術を用いて、100ミリメートル角のDCRAの量産試作に成功しており、サンプル出荷を始めている。月産1万5000枚の量産を検討している。

中小型OLED/Flexible OLEDの市場動向

折り畳み可能有機ELに可能性
  IHSグローバルシニアディレクター/上席アナリスト 早瀬宏氏

中小型有機ELディスプレー市場は堅調に成長する。2015年以降フレキシブルタイプのウエアラブルとスマホへの需要が増加すると見込まれる。フレキシブルタイプの長所は他のディスプレーよりも軽く、薄く、折り曲げられること。ユーザーエクスペリエンスを革新しうるものだ。
 
リジッドタイプは20年まで継続的にスマホ需要に特化する予想だ。ただ、有力サプライヤーの中からフレキシブルタイプにフォーカスする動きも出はじめている。
 
有機ELディスプレーの14年の出荷数量は前年の1億9600万台から1億8300万台に減少した。これは低温ポリシリコン液晶などとの差別化を失ったためだ。しかし、高解像度、大型サイズ、フレキシブルタイプが再び成長し、20年には6億台に達する。売上金額も増えるが、価格競争から台数ほどは伸びない見込みだ。
 
13年に登場したフレキシブルタイプは20年には30%近くを占める予想だ。
 
中小型フレキシブルの伸びをけん引するのはスマホとウエアラブル。スマホ向けは折り畳み可能な有機ELの登場で加速を期待。ウエアラブルは軽さと薄さが押し上げる。出荷台数は、当初からウエアラブルがスマホをリードし、その傾向は20年まで変わらない。18年以降はタブレット、車載、その他の用途がそれぞれ100万台を超え、徐々に伸びていくと予想する。
 
サイズはウエアラブルの1インチとスマホの5インチ に、解像度は640×640以下の低解像度と1920×1080以上の高解像度にそれぞれ二分される。高解像度のフレキシブル有機ELに付加価値を与えることで、売上金額では高解像度の製品群が伸びる。
 
コストに関しては、現状はかなり割高な価格だが、将来的には急速に価格が下がり、17年以降はサイズによってはリジッドタイプよりも安くなる可能性を期待する。