新産業促進検討会, 最新活動報告

第8回「新エネルギー促進検討会」in 名古屋 2013年12月9日

モノづくり集積・中部と新エネルギー


パネルディスカッションでは活発な質疑応答が行われた
(名古屋で開かれた「第8回新エネルギー促進検討会」)

モノづくり日本会議は新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)、三菱総合研究所との共催で、昨年12月、名古屋市東区の日刊工業新聞社名古屋支社で「第8回新エネルギー促進検討会in名古屋モノづくり集積・中部と新エネルギー」を開いた。自動車や機械産業などが集積する中部地域で、新エネルギーにチャンスを見いだしたい企業は少なくない。燃料電池車(FCV)や太陽光発電、バイオ燃料などにかかわる第一線の研究・技術者らが”新エネルギービジネスへのかかわり方”のヒントを提示した。


司会ごあいさつ

課題乗り越えイノベーション


新エネルギー・産業技術総合開発機構新エネルギー部統括主幹 渡辺重信氏

2012年7月の再生可能エネルギー電気の固定価格買取制度(FIT)導入以降、エネルギーを取り巻く世界は激変している。太陽電池が約1年間で約340万キロワットが導入されたのをはじめ、風力、地熱なども導入の加速化が期待されている。一方で、高い発電コストや出力の不安定さ、整備すべきインフラ、立ちはだかる各種規制などの課題がある。革新的なエネルギー技術の開発でこれらの課題を乗り越え、イノベーションを推進することが必要だ。

愛知県は、日本で工業出荷額が最も高く、愛知県を軸とするここ中部圏には技術力が非常に高い企業が集積している。そんな産業集積を形成する企業や大学、行政などが連携し、新エネルギー分野でイノベーションを進めていけば、新しいビジネスの創出につながり、ひいては中部圏の地域活性化をもたらすと思う。

2015年に向けて動き出した水素燃料電池自動車と水素インフラ
―その進捗と課題

次世代車普及へコスト低減に全力


トヨタ自動車 技術統括部主査 広瀬雄彦氏

当社は2015年にも、水素を使う燃料電池車(FCV)のセダンタイプを4大都市圏で発売すべく、開発に取り組んでいる。FCVの走りは静かでスムーズであり、加速感も大変良いので魅力的。実用航続距離は500キロメートル以上、水素の充填(じゅうてん)時間も約3分と使い勝手が良く、走行中に排出されるのは水のみで、さらに非常時に電源供給できるのもFCVの特徴だ。
 
次世代環境対応車は電気自動車(EV)やハイブリッド車(HV)、FCVなどさまざまある。普及には低価格化が重要で、コスト低減には全力を注いでいる。FCVの部品や駆動部分は、HVの部品と多くを共用できる。発売から16年、累計300万台を超える実績を持つHV「プリウス」のバッテリーやモーターを活用する。心臓部分の燃料電池は新しいものの、信頼性ある車を提供できると考えている。
 
当社は、将来的にはFCVがEVよりずっと安くなると考えている。水素を使うFCVは燃料の製造から駆動に及ぶ総合効率(国内の場合、トヨタの試算)が、天然ガス由来のエネルギーの中でEVの約1・3倍。当社は昨年、FCVの車両効率で65%にめどをつけ、さらに向上させた。燃費は未公表だが、水素の価格が国の目標あたりになれば、HVなどよりも走行距離あたりのコストでも優位になる。

国内での普及にあたっては、水素ステーションの整備や関連技術の開発、そして蓄圧タンク構造や材質、耐圧などの基準といった規制の見直しが必要。国では水素ステーションを15年に100カ所、30年には5000カ所整備する計画を持つ。それを実現するには、エネルギー、自動車、産業ガスなど関連企業との官民連携の加速が欠かせない。また、貯蔵できるクリーンな2次エネルギーである水素については、幅広い活用方法が議論されており、その普及も車両の普及を後押しすると考えている。

我が国における太陽電池の研究開発の現状と将来展望

低コスト・高信頼化300兆円産業へ


豊田工業大学 特任教授 スマートエネルギー技術研究センター長 山口真史氏

3・11以降、太陽光発電システムの導入が活発で、国は2030年に日本の総電力の1割を太陽光で賄うことを努力目標に掲げる。年率15%で伸ばせば達成するが、13年はかなり伸びたため25年ごろに達成できるかもしれない。
 
都道府県別で2012年の設備導入件数をみると、地域経済が手堅いせいか愛知県がナンバーワンとなっている。我が国は、第1次オイルショックの翌年の1974年に「サンシャイン計画」を開始して以来、太陽電池の研究開発に約40年の歴史を持っている。
 
太陽光は数ある再生可能エネルギーの中で一番高いポテンシャルを持つが、天候や時間に左右されて出力が不安定といった課題を抱える。技術革新を進めるべく、NEDOは「太陽光発電システムの次世代高性能技術開発」を展開している。現在の1キロワット時あたり23円という発電コストを2020年に14円にし、30年までには7円にする計画。将来、原子力や火力と同等のコストが達成できると思う。

私はこのプロジェクトで太陽電池およびモジュール、同部材のプロジェクトリーダーを務めており、当大学には結晶シリコン型の「太陽電池研究プラットフォーム」を置く。シャープや京セラ、三菱電機、コマツNTCなどの参画企業が開発成果を持ち込み、技術の良しあしを判定している。一方、NEDOの支援のもと、欧州の関係機関との間で「集光型太陽光発電共同研究開発」を進めている。集光型モジュールで世界最高の変換効率45%を目指し、すでに近い数値を達成しつつある。

太陽光発電産業は将来300兆円を超す産業になると予測される。モジュール、システムともに高性能化や低コスト、高信頼化を進めることで、システムの普及拡大と幅広い産業分野への経済波及を図りたい。世界で主導権を握るべく、多様な企業の参入により、オールジャパンで盛り上げていきたいものだ。

微細藻類によるバイオ燃料の生産

遺伝子研究油分の生産性向上


機能材料研究部 バイオ材料研究室長 福田裕章氏

当社は愛知県西尾市のプラントで、微細藻類を原料とするバイオ燃料の生産に向けて研究開発を進めている。「シュードコリシスチス」という名前の微細藻類に近縁で、増殖の温度領域が15度Cから35度Cの間と広く、油含量も屋外培養で40%を超える株を京都大学大学院の宮下英明教授と共同で、農林水産省の委託研究成果として新たに取得している。他の生物の侵入といったリスクにも強いのが特徴だ。
 
エネルギー生産に微細藻類を用いることは、植物と違い栽培に不適な土地でも増殖させられ、食料向けと競合しない、森林破壊につながらないなどの利点がある。最も需要が多いのは航空機向けバイオ燃料。航空業界は市場の伸びが見込まれる一方、二酸化炭素(CO)の削減要請から年平均約1・5%の燃費改善が求められている。将来、燃料の約50%をバイオ燃料にする目標を掲げており、当社の技術で寄与していきたい。
 
現在、NEDOから二つの事業を受託している。一つは中央大学の原山重明教授と行う、生産性の高い藻の育種に関するもので、もう一つはクボタ、出光興産を加えた4者で培養以降の燃料にするところまでのプロセスの開発だ。当社は培養のコストを抑えるため、水道代、電気代、人件費などの低減に取り組む。
 
さらに効率良く低コストに生産するため、有用な形質を一つの細胞に集積する育種技術が必要である。そこで、油分の生産性向上を抑制するいくつかの遺伝子の働きを止めることを検討中。有用な形質を集積した細胞は、遺伝子組み換え体にならないものを目指す。
 
バイオ燃料製造で欠かせないのが、増殖に必要なCO。火力発電などで発生する高濃度のCOを微細藻類の培養に使う必要がある。将来は「COの循環モデル」を考え、木質バイオマス発電と微細藻類によるバイオ燃料生産を併用したシステムも検討したい。

バイオマスエネルギーの市場動向と今後の可能性

普及・拡大へシステム構築カ


三菱総合研究所 環境・エネルギー本部主席研究員 小島浩司

バイオマスを活用したエネルギーは、地球温暖化対策や電源の多様化、石油依存度の低減といった観点から大きく注目されている。ただ、食料向けとの競合や生物多様性といった持続可能性の問題などから、他の再生可能エネルギーに比べた難しさがあり、導入がやや進みにくい状況も見受けられる。しかし、貯蔵可能で安定的な側面を持つ重要なエネルギーには違いなく、その特徴や取り巻く状況をよく見つめ直すことが必要だ。

バイオマスエネルギーは2035年の世界需要が、11年実績の1・4倍に成長すると予測されている。バイオマスエネルギーは発電と熱利用などに分けられるし、バイオ燃料などもある。欧州では、地産地消型のコジェネレーション(熱電併給)などが一般的になっているが、日本では熱利用がなかなか普及しないでいる。

一方、同エネルギーは自立分散型エネルギーシステムで、非常時に有効といえる。ここ中部圏では安全安心で災害に強い地域づくりが必要とされており、熱利用を含めていろいろな形で取り組むことが期待される。

バイオエネルギーは現時点で経済的課題もあるが、政策支援で少しずつマーケットをつくる一方、関係業界は原料の集荷や輸送などの面でコスト低減に取り組むことも重要だ。バイオマスでは二酸化炭素(CO)削減や環境配慮などを踏まえ、生産から利用におけるといったライフサイクルアセスメント(LCA)を重視することは言うまでもない。

その普及・拡大に向けては、関連する個別の要素技術を研ぎ澄ますのはもちろんだが、全体としてのシステムをどう構築するかがポイントといえる。各要素技術をつなぎ合わせるプラットフォームが求められる。これができれば、自動車や住宅など、バイオマスエネルギーを活用する関連製品の新しいあり方などで、さまざまな可能性が見えてくるのではないか。