ロボット研究会, 最新活動報告

震災20年神戸ロボット工房特別セミナー 2015年1月18日

災害に立ち向かうレスキューロボットが築く未来
高度技術融合 実践ロボ投入

「震災20年神戸ロボット工房特別セミナー・災害に立ち向かうレスキューロボットが築く未来」が1月18日、神戸市長田区の神戸市立地域人材支援センターで開かれた(主催神戸市、新産業創造研究機構、協力モノづくり日本会議ロボット研究会)。阪神淡路大震災を機に研究が活発化した災害救助ロボットの開発や、災害現場で実用化されつつある現状、次代へ向けた取り組みを、3人の研究者が講演で紹介した。今後、災害現場で実践的に使われる救助ロボットの開発が重要となる。レスキューロボットのデモンストレーションも会場で行われた。


淡路大震災をきっかけとして取り組みが始まった災害ロボットの挑戦と現状

現場と研究者 緊密連携 重要
  東北大学大学院情報科学研究科応用情報科学専攻教授
NPO法人国際レスキューシステム研究機構会長 田所諭氏

災害発生時に、災害救助ロボットを実際にどう役立てるかが課題だ。ロボットや先端技術が重大な災害に対して無力であるということを阪神淡路大震災で感じ、これがレスキューロボット研究のきっかけとなった。
 
震災後に研究会を作ったが、学術的な意味はないだろうとレスキューロボット研究の理解が得られず、スタートが切れない状況だった。災害に備えるためのロボット開発が重要だという意識を育んでいくことが、いかに大切かを実感した。
 
私の取り組みに、国際レスキューシステム研究機構がある。レスキューロボット、あるいは高度な先端システムは災害救助になかなか使われない。それを進めるために、研究開発だけでなくユーザーとのコミュニケーションを重視し、2002年に設立した。成果は、ロボットを東日本大震災の災害に持ち込むことにつながった。
 
東日本大震災は、人類史上でロボットが大規模に災害現場に適用された初めての事例。Quinceというロボットを福島の原発に入れ、実績を上げることができた。Quinceは閉鎖空間内高速走行探査群ロボットとして、ガス漏れ現場など地下街に入り中を調べることを目的に作られた。遠隔操作での制御や、階段やがれきでもロボットが自律的に走行できる機能を開発する研究をしてきた。災害空間で何が起きているかを調べるために、3次元の計測ができるようにした。
 
原発に入る上で、放射線に対する耐久性が課題だった。また、無線通信も大きな問題だった。無線通信は諦め、ケーブルをつけねばならないことが検証でわかった。使い手からすると、ロボットが問題解決に貢献するか、ミッションを妨げないか、あるいは判断ができるかどうかが重要。我々研究者が得た教訓は、密なコミュニケーションでユーザーと一緒になって問題を解いていくということの大切さを実感できたことだ。
 
原発への対応に限らず、レスキューロボットには地上や壁面、空中配管の内外、水中などを移動できる機能が必要。これに対し、センサーや軽作業機能、通信機能、遠隔操作機能を載せねばならない。ImPACTというプロジェクトで、災害空間で動き回れるロボットの基盤技術を作る取り組みを始めた。災害現場での問題を解決するために、ロボットのさらなる強化と機能向上を目指している。
 
東日本大震災でのキーワードの一つに「想定外」がある。災害はどうしても起きる。被害を最小限に抑えるには、想定外を想定し備えることが大切。科学的に自然界の摂理を観察しなければならない。
 
ロボットは明らかに防災の重要なツールになる。災害が起きた際にロボットを使うことで、対策を練るための情報収集が効果的にできるようになる。災害救助ロボットを安価に作るためには、普段の経済活動の中でうまく役立てていくことが必要。さまざまなサービスに適応させれば、災害救助ロボットの高度化にも貢献できる。

神淡路大震災から20年~国際救助隊サンダーバードへの夢~

群れるロボ「自律分散」カギ
  京都大学大学院工学研究科機械理工学専攻教授
国際レスキューシステム研究機構副会長 松野文俊氏

生物は巧みな技をもっている。それらを理解し、ロボットに取り込み進化させていきたいと考えている。生物を超えることは難しいが、生物の知能をロボットに反映していきたい。生物には多様の知能があるが、それらを超えていくことを目標に、ロボットの開発に取り組んでいる。
 
例えば「群れ」は素晴らしい知能と機能をもっている。1匹1匹には大した知能はないが、これが群れになるとすごい。これはレスキューのシナリオでも有用だと思う。1台1台のロボットにはそれほど力はなく、機能もたいしたことはないが、それがたくさん集まると機能を発揮し、災害に対応できるようにしていきたい。数台壊れても、群れの中では全く機能が落ちないようにする。アリや鳥などの行動を調べ、そこからヒントを得ている。
 
大量のロボットの群れを一度にコントロールするためにはどうすればいいか。リーダーとなる1台が全体に命令を出すのではなく、自分の周囲の様子を見て自身で判断するが、群れとしてちゃんと動く。自律分散と呼ばれるような機能が必要だ。自分が見える範囲に仲間がいる。仲間がいて、くっつき過ぎると離れ、離れ過ぎるとくっつきたいと思う。引力と斥力を設ける。障害物があると反発力を受け、それを避ける。目標地があると、その目標地に引っ張られるという仕組み。
 
3本足のロボットの開発にも取り組んでいる。モジュラーロボットというもので、合体、変形し、いろんな形に変わることができる。合体すれば足はたくさんになる。例えば、2台のロボットがあり、1台では登ることができないような段差があって、下のロボットが上のロボットを持ち上げることで乗り越えることができる。1台ではできないことを複数のロボットの協力で実現する。アリも利他行動といって犠牲になる行動をとるが、それを参考にしている。狭い場所に入る際はばらばらになり、大きな障害物があれば合体して越えていく。環境に合わせて自分の形も変えていくようなことができる、そういうモジュールロボットを将来完成させたいと考えている。
 
災害直後のみならず、復興・復旧の段階でもロボットは役立つ。日常の延長線上に災害ロボットを適用し、インフラ点検などにロボットを使いたい。復興・復旧を見据え、ロボットシステムを考えていく必要がある。
 
工学だけでなく、メンタルケアなどの他の分野の研究者とうまく協力していくことも大切。ロボットは物理的に障害を取り除くだけの道具ではない。医療用ロボットは医学にも貢献するし、心理的なケアにもロボット技術は有効だ。また、政治や経済などの状況も理解しながら、行政とうまくタッグを組んでいくことも必要だ。
 
子供のころ、サンダーバードという人形劇に憧れた。世界のどこかで何か災害が起これば、ハイテク機器を使った部隊がそこに出動し人命救助をすることが、私の将来の夢だ。

レスキューロボットコンテスト~これまでの取り組みと次のステージに向けて~

イベントで防災・減災 啓発
  神戸大学大学院工学研究科機械工学専攻教授
レスキューロボットコンテスト実行委員会実行委員長 横小路泰義氏

レスキューロボットコンテスト、略してレスコンは今年で15回目を迎える。レスコンとは、災害救助を題材としたロボットコンテストで、阪神淡路大震災が契機となっている。01年に1回目が開かれた。
 
競技の内容は、被災した市街地を模したフィールドに、要救助者を模した「ダミヤン」という人形を置く。それをロボットで、安全かつ迅速に救助するコンテスト。競技フィールド内に人間は立ち入れない設定で、ロボットを遠隔操縦するか、もしくは自律ロボットで動かす。
 
レスキューを題材としたロボコンであり、例えばNHKロボコンのように、2チームの勝ち抜き戦で勝負していくというものではない。あくまでも、チームのポイントをいかに高くするかが評価の対象になる。
 
もう一つの特徴は、製作するロボットに対する制限はないということ。できるだけレスキューに対しては自由な発想で臨んでほしいと思う。また、ダミヤンには手荒に扱うと痛みを感じるセンサーが内蔵されており、それがフィジカルポイントという形で減点されていく。センサー情報が無線でフィールド内のコンピューターに送られる。
 
レスコンでは競技前に二つのイベントがある。一つはプレゼンテーション、もう一つは作戦会議。プレゼンは、作ってきたロボットをアピールする場。作戦会議は、実際の現場では何が起こるかわからないということで、がれきの状況などは事前にはチームに知らされない。作戦会議で、カメラを介してフィールドを見てよいということになっている。フィールドを見てから、どのようにレスキューをしていくかという作戦を立ててもらう。
 
体験型行事ということで、「あそぼう!まなぼう!ロボットランド」という名前で、展示、体験型のイベントを同時開催している。工作教室や操縦体験、レスキューに関する展示、心臓マッサージ訓練を体験できる。
 
実行委員会の理念は「技術を学び 人と語らい 災害に強い世の中を作る」ということで、コンテストというよりは、むしろレスキューロボットコンテストを通じて、防災、減災について広く啓発していきたいということが趣旨となる。参加した子供たちが大きくなったとき、より災害に強い世の中になってほしいと思う。

段差・障害物乗り越え救助

レスキューロボ披露

会場では、レスキューロボットのデモンストレーションが行われた。段差や障害物が設けられたフィールドを、ロボットが自在に移動する様子を披露した。ロボットはパソコンとリモコンで遠隔操作され動く。アームが搭載されたロボットが人形をつかんで"救助"する様子も披露された。