新産業促進検討会, 最新活動報告

ファインバブル技術(微細気泡)シンポジウム 2015年2月20日

新しい産業の創出を目指して~基礎から応用利用まで~

講演会場内に設けた展示コーナー。
発生装置や計測装置に注目が集まった。

モノづくり日本会議、日刊工業新聞社、独立行政法人産業技術総合研究所は2月20日、大阪市西区の大阪科学技術センターで、ファインバブル(微細気泡)技術シンポジウム「新しい産業の創出を目指して~基礎から応用利用まで~」を開いた。共催団体である一般社団法人ファインバブル産業会(FBIA)のメンバーが基礎から応用、さらには国際標準化の動きなどについて講演した。150人あまりの参加者の業種は食品、化粧品、電機、電子部品、繊維、化学、建設、スポーツと様々で、この技術の応用に対する関心が高まっている。


主催者挨拶

  独立行政法人産業技術総合研究所関西センター所長 長谷川裕夫

ファインバブルは、かつて"ナノバブル"や"マイクロバブル"と呼ばれた時期もあり、非常に長い歴史を持つ。一方、気泡の大きさによって、どのような効果がもたらされるのか不明な点も多々あった。しかし、簡単に微細な気泡を発生させることができる装置の開発や計測技術の進展で、少しずつだが技術体系も明らかになってきた。様々な応用が期待されるので、新しいビジネスの創出につなげてほしい。

  日刊工業新聞社取締役西日本担当兼大阪支社長 曽根洋一

大企業や輸出型企業は景気回復の実感があるようだが、地方や内需型の業界および企業についてはまだ元気がない。現在、"地方創生"が大きな政策テーマになっており、ファインバブル技術は農林水産や医療・健康だけでなく、最先端分野も含めて裾野が極めて広く、波及効果が期待できる。時間を費やさないスピードある技術開発が求められる中で、かなり有力な分野であると考えている。地域イノベーション創出のヒントにしてもらいたい。

基調講演

ファインバブル技術の現状と課題

日本主導で国際標準化を推進
  独立行政法人産業技術総合研究所理事 一般社団法人ファインバブル産業会会長 
矢部彰氏

液体中に存在する直径1マイクロメートル未満の気泡を「ウルトラファインバブル」。直径1マイクロメートル以上のものを「マイクロバブル」と呼び、この二つを総称して「ファインバブル」と呼んでいる。特に力を入れているのは、目に見えないウルトラファインバブルの領域。潤滑、拡散、洗浄、殺菌などの効果を持つことから、ウルトラファインバブルの産業化に取り組んでいる。また、世界をリードする日本発の革新的技術として「国際標準化」にも着手している。

ウルトラファインバブルの実用例として、潤滑効果を生かした太陽光発電ウエハーの分離・搬送がある。薄いウエハーとウエハーの間にウルトラファインバブルを浸入させて一枚一枚はがしていく。ウルトラファインバブルでは傷が発生することなく、スムーズに搬送できる。また、最近の計測技術の進歩で、MEMSの梁利用で直径100ナノメートル程度の物体が、気泡か固体粒子かの判別も可能になり、ウルトラファインバブルが長期間存在できるととも明らかになった。現在、内閣府での農林水産系の植物工場へのファインバブルの応用技術プロジェクト、経済産業省における洗浄、殺菌、水質浄化などの基盤技術に関するファインバブルの技術開発プロジェクトなどで様々な研究が行われている。

しかしながら、作用効果のメカニズム解明はまだまだこれから。再現性のある効果の実証が確立されつつある。また、ウルトラファインバブルが目で見えない点も積極的な産業応用の妨げになっている。そこで産業会では健全な市場を育成するために国際標準化の推進、ウルトラファインバブルの発生と効果に関するメカニズム解明、種々の応用技術の提案と実証の三つの活動を同時並行で進めている。

その一方で適用分野も広いことから、国際標準化機構(ISO)の中に新しい専門委員会(TC281)を提案し、それが2013年6月に投票で採択された。国際幹事は日本で、世界をリードしながら国際標準化を進めている。ウルトラファインバブルの粒径や数密度の測定方法を規格化し、それに基づいて測定した結果について認証する制度の創設も進めており、信頼される技術としての確立を目指す。

講演1 ファインバブル技術の産業化に向けた最新動向や取り組み

健全なグローバル展開を地方創生から目指す

  一般社団法人ファインバブル産業会副会長 
IDEC株式会社常務執行役員技術戦略本部長C.T.O. 藤田俊弘氏

FBIAには51社の企業および学術的な解明を担う大学や産総研の5研究機関による計56機関が参加。発生装置開発企業が12社、計測装置開発企業が9社、そして洗浄、殺菌、医薬、化粧品、食品、飲料、エレクトロニクス、化学、土木、農業、水産といった幅広い分野で応用展開を進める企業30社が、情報共有しながち産業化を加速することを目的に2012年からスタートしている。

ファインバブル技術は日本が世界をリードしていることから、FBIA設立当初から国際標準づくりを指向し、日本からの提案でISO/TC281を設立。オープン・クローズ戦略をもとにした国際標準化を経済産業省のトップスタンダード制度により推進中で、研究開発、国際標準化、認証の同時推進で早期の産業化を目指し、グローバルな活動を推進している。

ウルトラファインバブルは、直径1マイクロメートル未満の気泡とISO/TC281で定義されつつあるが、高速旋回液流方式や加圧溶解方式等の製造技術により生成される。ここ数年、レーザやMEMSを用いた新しい計測技術が開発され、また高性能化が図られたことにより、直径が100ナノー200ナノメートル程度の極めて小さい気泡が1ミリリットル当たり数十億個も存在でき、保存状態が良ければ半年でも1年も液体中に存在することが明ちかになり、世界的に関心が広がってきている。通常ハイテク分野での新技術は、日米欧といった北半球先進国で関心が高いが、ファインバブル技術は、農産物の成長加速といった応用をはじめ、水産、食品・飲料、また洗浄や殺菌等、そのアプリケーションは広範囲にわたるため、アセアンやオセアニアといった新興国、南半球の地域でも関心が高いのが大きな特徴である。

FBIA会員企業は、グローバルに活動する大企業のみならず、地方で活躍するベンチャーや中小中堅企業も半数以上あり、18都道府県に位置しており、まさにアベノミクスの成長戦略の中小中堅企業による地方創生政策に合致しており、是非とも日本リードで新しい産業を日本から生みだしていきたい。

講演2 産総研が進めるファインバブルの基盤技術研究

基礎研究で技術体系を構築

  独立行政法人産業技術総合研究所関西センター主任研究員 川崎一則氏

産業技術総合研究所では、つくばセンターを中心に中部、関西、四国の各センターが連携してファインバブルの研究に取り組んでいる。地域、分野、研究ユニットを超えた所内でもユニークな研究体制となっている。ファインバブルを専門としない研究者で構成されているのも特徴だ。

ファインバブルは産業界で期待が高まり、すでにすばらしい成果がたくさんある。しかし、基本的な物性や原理、それに基づく計測、さらには最終的なメカニズムは確立しておらず、表現方法などで混乱も見受けられる。そこで我々は、何がバブルの効果で、何がバブルの効果ではないのか?まずは疑いの目を持って、サイエンスの方法で仕分けを行っていき、テクノロジーとしての発展を目指している。基盤確立と国際標準化に向け大学や各研究機関とも連携し、多くが納得できる技術体系を構築していく。

取り組む技術課題としては性状評価技術、挙動解析、生成メカニズム、リスク評価、作用メカニズムの解明などがある。性状評価技術として、粒径や密度や形状を評価するには光散乱法や共鳴質量解析法などが有効だと思われる。また、気泡および粒子の分離についても超遠心分離法、フィルター法などが考えられる。私の場合、急速凍結レプリカ電子顕微鏡法による直接観察で粒径や形状の解析を行っている。中部センターでは、固体表面に付着のファインバブルがどうやって生成し安定化するのか、物理学的にうまくシミュレーションができており、この理論の発展で浮遊状態のパプルも全容解明が期待される。

一般的に大学や研究機関などで基礎研究が始まり、そこから先端技術が生まれ、応用研究が進み、新しい産業が生まれてくるという筋書きがよくある話だが、ファインバブルは産業界の方が1周も2周も先を走っている。基盤となる基礎研究を推進し、知見を積み重ねていくことで産業界での利用に役立つ指針を提供していく。基礎研究に裏付けされた技術にすることが、製造や食品、医療、農業など様々な産業界のフィールドへの新たな展開につながると考える。

講演3 ウルトラファインバブル技術を活用した高速道路維持管理

様々な研究で、活用領域を拡大

  一般社団法人ファインバブル産業会副会長 
西日本高速道路株式会社執行役員技術本部長 角田直行氏

新しい道路管理方法の確立やサービス向上などを目的にウルトラファインバブル水を活用している。休憩施設は最大のお客様サービスの施設であり、トイレにおいては臭気の抑制と、便器に付着する尿石の軽減が課題で試験を重ねてきた。その結果、試験当初に特別洗浄した時とほぼ同じ臭気値で、従来からの水道水使用に見られるような臭気値の上昇はなかった。尿石の付着量も水道水に比べて、ウルトラファインバブル水で流した小便器の方が約16%少ない傾向にあった。尿石の剥離については毎分100回転の攪拌試験で、水道水は平均12・9%、ファインバブル水は31.5%と少ない回転数、すなわち少ないエネルギーで効率よく剥離でさることもわかった。

床面への噴霧清掃では、これまでの水洗い清掃方法より水量を100分の1に節減できた。噴霧清掃により床面乾燥時間も短くなり、全体の作業時間を30%短縮することにつながった。洗剤も節約でき、環境への負荷も軽減した。以上のごとから現在、管内の約300カ所の内、約6割のトイレでウルトラファインバブル水を使用した清掃を実施中。橋梁に付着する海水由来の塩分除去、凍結防止剤由来の塩分除去でも効果を上げており、道路の再生や延命化につながっている。

広島大学と連携して浄化槽処理の効率化、慶應大学とは物性値解明に向けて無機結晶に対する流動洗浄効果について共同研究を実施するなどウルトラファインバブル水の適用領域拡大を目指している。養魚水槽の水質改善、小松菜やプチトマトの水耕栽培における収穫量増加などでも効果を得た。今後、適用が可能な分野として廃水処理、精密機器の洗浄、化学プラント、飲料、医療・生命工学などが挙げられ、幅広い分野の適用が期待できる。発生装置としては粒径および密度などが測定でき、超音波などの活用で粒度分布や発生量などが制御できる機能を併せ持った装置が望ましく、使用した液体と気体の組み合わせでどのような効能・効果が生まれるのか?また、作った水の運搬方法や取り扱い条件などの処方箋もできれば、産業界での適用も広がり、発展する。