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モノづくり日本会議/記念シンポジウム「超モノづくりへの挑戦」 2015年10月13日

 モノづくり日本会議(事務局=日刊工業新聞社)は10月13日、東京・飯田橋のホテルグランドパレスで、記念シンポジウム「超モノづくりへの挑戦」を開いた。同シンポジウムは超モノづくり部品大賞贈賞式との同時開催。モノづくり日本会議共同議長の伊藤一郎旭化成会長のあいさつに続き、超モノづくり部品大賞の大賞受賞企業である島津製作所の鈴木悟取締役上席専務執行役員が「島津製作所のモノづくり」、鈴木真二東京大学大学院教授が「航空技術の先端動向と航空機の市場動向」と題して講演した。


主催者あいさつ “進化する科学・工業立国”へ

  モノづくり日本会議共同議長 旭化成会長 伊藤一郎氏

 アベノミクス第2ステージは「新三本の矢」で2020年にGDP600兆円を目指すという。少子高齢化への正面からの取り組みに期待したい。一方、世界は、欧州の政治的混乱、米国の利上げ観測、新興国の成長鈍化など不安定要素が多く、楽観できない。
 日本は環境・エネルギー問題、少子高齢化・雇用問題など、課題先進国だ。世界は貧困、人口増加と食糧不足、エネルギー多消費と気候変動などの問題に直面している。これらを一つ一つ解決することが我々の役割だ。
 今後のモノづくりにおいて、日本の進むべき道は世界に先駆けて課題を解決するイノベーションモデルの構築だ。世界が必要とする社会価値の創出に貢献する”進化する科学・工業立国“を目指すべきだと考えている。”進化する科学・工業立国“実現のため、知的財産、技術の蓄積は国内に残し、グローバルの中のモノづくりに対応する。

 課題解決と世界への貢献には「二つのそうぞう力」がカギになる。心の中に思い描く想像力と、新しいモノや考え方を生み出す創造力によって、何が必要かを考え、形をつくり、行動しよう。これが天然資源を持たず、労働力人口が減少する日本の進むべき道だ。

島津製作所の「モノづくり」

科学技術で社会貢献 常に実践

  島津製作所取締役上席専務執行役員 鈴木悟氏

 島津製作所は「科学技術で社会に貢献する」を社是とし、「『人と地球の健康』への願いを実現する」という経営理念に基づき事業展開している。
 創業者の初代島津源蔵が京都の舎密(せいみ)局で科学技術に触れたことを契機に、教育用理化学器械製造を開始したのが1875年3月。今年で創業140周年を迎えた。二代目源蔵は1896年10月、レントゲン博士のX線発見から11カ月後にはX線撮影に成功し、また、翌97年には鉛蓄電池の製造を開始するなど、創業期から常に「科学技術で社会に貢献」を実践してきた。
 基本姿勢は「Best for Our Customers」。創業期の型録の末尾に記された「お好み次第でなんでも製造仕ります」という、島津源蔵の精神につながるものだ。
 当社の科学技術は環境、医薬、医療、食品、モビリティーなど社会のさまざまな分野を支えている。事業構成は、物質の構造や組成を定量的に捉える分析機器と材料試験や非破壊試験などの計測機器で6割。そして医用機器、航空機器、産業機器だ。産業機器には真空装置、油圧機器、デバイス・コンポーネントなどが含まれる。

 今回部品大賞に選定された「BLUE IMPACT」を手がけたデバイス部は例えば昨年の「エンジン燃焼発光計測用光プローブ」や2006年の「回折格子」など、これまで何度も部品賞をいただいてきた。デバイス部はキーコンポーネントの内製だけでなく、社外にも供給している。
科学者の先端的な研究をサポートし、共同研究に取り組むことがデバイス部としての基礎技術を高めている。そして光学レンズ研磨の「現代の名工」はじめ、大勢の技能者が製造を支えている。
品質の重視がブランド力向上につながると考えている。品質向上の拠点として製品開発や不具合解析に必要な機能を集約した「クオリティセンター」を設置する一方、技能継承も進めている。
マザーファクトリーはあくまでも日本だ。この力量を維持・強化するため、小集団改善活動「DIO活動」に取り組んでいる。各職場スタッフの成長を促すだけでなく、マネジメントにも多くの気づきを与えている。

 当社のモノづくりの基本は「モノづくりと開発の一体化」。だから顧客の要望に迅速な対応が可能となる。「Best for Our Customers」の姿勢は創業以来のDNAだ。これからも「科学技術で社会に貢献する」社是のもとに技術を磨き、信頼を積み上げていきたい。

航空技術の先端動向と航空機の市場動向

イノベーション創出へ教育重要

  東京大学大学院教授 鈴木真二氏

 近年、航空機産業への期待が非常に高まっている。今年は日本の航空機元年とも言われている。三菱リージョナルジェット(MRJ)の初飛行を迎え、また、ホンダジェットは顧客への引き渡しが行われるからだ。
 世界の市場はエアラインが69兆円、航空機製造は14兆円という規模だ。航空旅客輸送量は実質GDPの伸びを上回る4―5%で成長しており、航空産業・航空機産業が期待されるのは当然の流れだ。
 230席以上の大中型機は米と欧の2社の寡占状態。100―229席の小型機は2社に加えてカナダ、中国、ロシアが新規参入を図っている。さらに小さいリージョナルジェット機はカナダ、ブラジルの2社に続こうと日、中、露が新規参入している。
 日本の航空機産業の規模は、GDPの1・5%から2%を占める米、欧と比べるとはるかに小さい0・5%以下。自動車産業の30―40分の1に過ぎない。だが、国力からするともっと大きくなってしかるべきだ。
 民間航空機産業の特徴は、巨額の開発費の回収に長期間を要すること、安全性がきわめて厳しく要求されること、国家の支援体制がWTO紛争になりかねないことなど。産業としてハードルは高い。
 YS―11で得られた教訓は、ブランド力が必要なこと、世界へのサービス体制が不可欠なこと、激しい技術競争にさらされることなどだ。当時と比べれば、サービス体制の不備は克服された。今の日本の技術なら競争も難しくはない。
 航空機産業の特徴の一つに産業規模は小さくても技術波及効果が大きいことが挙げられる。技術波及効果は自動車の3倍以上と言われている。
 航空分野の技術革新のテーマは長らく「より高く、より遠く、より速く」だったが、最近では「より経済性を持って、より安全に、より静かで環境に優れる」ことが求められている。これに応じた技術開発が、燃料消費を少なくするために機体を軽くすること、エンジン特性改善、飛行ルートの最適化、バイオ燃料導入などだ。
 軽量化で使用が拡大している炭素繊維複合材(CFRP)については、日本は繊維の70%を供給するなど、優位性を示している。エンジン動力から油圧、空気圧で駆動していたブレーキや空調機の電動化技術、製造現場でのロボット化技術などで日本は活躍できる。
 とはいえ、まだまだ取り組むべき課題が多い。人材を育成するという観点で、イノベーション創出のための教育が重要となる。
 航空機産業で求められるのは国際的かつ分野横断的な課題に対応できる人材だ。東大では分野連携、国際連携、産学官連携という三元的視点で育成に取り組んでいる。
 技術だけでなく、政策的視点、産業界からの視点を含めた講義や、ビジネスシミュレーションと交渉学の演習などを実施している。ボーイングの協力で始まったボーイングプロジェクトは昨年から東大だけでなく複数大学同時講義に拡大している。一方、国際航空ビジネス入門として、エアバスプロジェクトも展開中だ。
 飛行ロボットプロジェクトは、モノづくりの過程を身をもって体験できる機会として「全日本学生室内飛行ロボットコンテスト」を実施している。専攻の異なる学生がチームをつくってチャレンジする競技会として年々拡大している。
 これまでの教育活動を通して、研究室プロジェクトは成果が見える明確な目標と時間制約のもとで、チームワーク能力を鍛えるのに効果的なことが確認できた。ただ、大学だけでは予算や設備、スタッフに限りがあるので、産業界、研究機関との連携が重要になる。皆さんとの連携を深め、人材をともに育てていきたいと思う。