ネイチャー・テクノロジー研究会, 最新活動報告

ネイチャー・テクノロジー研究会 2015年10月からプロジェクト始動(3年間)

「未来の暮らし方を育む泉の創造」プロジェクト
モデル4地域で社会実装

 古川柳蔵東北大学大学院准教授が研究代表者を務める「未来の暮らし方を育む泉の創造」プロジェクトが先月、科学技術振興機構(JST)の社会技術研究開発センター(RISTEX)で取り組む研究開発領域「持続可能な多世代共創社会のデザイン」の研究開発課題に採択された。プロジェクト期間は2015年10月から18年9月までの3年間。モノづくり日本会議のネイチャー・テクノロジー(NT)研究会も産業界の立場から協力メンバーとして参画し、手法研究や社会実装などをサポートしていく。


新しいライフスタイルをデザイン

  古川柳蔵 東北大准教授

 NT研究会は同研究会に積極参加するモノづくり日本会議会員企業と、同研究会を指導する学識者からなる幹事会を組織し、活動を展開している。古川准教授はNT研究会のワーキンググループ(WG)活動でライフスタイルデザインの描き方や社会実装の進め方などを指導している。
 「未来の暮らし方を育む泉の創造」プロジェクトの背景は、今後ますます厳しさを増す地球環境制約や、少子高齢化などの社会的制約の中で、持続可能で心豊かな社会の実現を目指そうということだ。そのためには、経済成長や暮らしの利便性を追求する従来の考え方ではなく、制約を踏まえた新たなライフスタイルを創造し、移行していくことが求められる。

(上)高橋北上市長(右)にプロジェクトの進捗を報告し、協力を要請。
(下)モデル地域の北上市口内地区交流センターでプロジェクトを説明

 同プロジェクトでは制約条件が異なる4地域をモデル地域とし、地域に適した未来のライフスタイルを創出する基盤をそれぞれ構築する。具体的には、現在90歳前後の高齢者へのヒアリングを行い、戦前の厳しい制約の中で豊かさを生み出す価値や地域らしさを抽出する。それらを基に、新しいライフスタイルをバックキャスト思考によりデザインする。描いた新しいライフスタイルを多世代共創により具現化し、浸透させるための方法論の構築を目指す。
研究開発の実施体制は二つのチームで構成される。古川准教授をリーダーとする方法論構築チームは産業界の立場で参画するNT研究会、モデル地域の自治体・市民グループなどが協力し、その地域”らしさ“に根ざしたライフスタイルをデザインし、社会実装プロセスを実証する。一方、溝口理一郎北陸先端科学技術大学院大学特任教授らの共同研究グループはオントロジーチームとして、ライフスタイルと技術のマッチング手法研究を進める。
4カ所のモデル地域は、兵庫県豊岡市、岩手県北上市、鹿児島県沖永良部島、三重県伊勢志摩地域。豊岡市と北上市については市長のサポートも得られており、市役所内に東北大学古川研究室分室の設置が決まった。
これらの地域は地理的条件、人口規模、観光資源の質と量などがそれぞれ異なるが、共通しているのは昔からの”豊かさ“がまだ残されているということ。それぞれ性格の異なる4地域で社会実装に取り組むことで、方法論を検証し、普及につなげていく。

口内傘復活研究グループの取り組みについて説明する口内地区交流センターの伊東怜香さん

今月9日には、古川准教授とNT研究会幹事会メンバーがモデル地域の北上市口内地区を訪問し、プロジェクトの概要を説明し、理解を求めた。また、プロジェクトが採択されたことを高橋敏彦北上市長に報告するとともに、あらためて協力を要請し、高橋市長の快諾を得た。
一連の取り組みで描こうとするライフスタイルについて古川准教授は「ライフスタイルは人から押し付けられるものではない。また、自然環境に依存するので、地域リソースを取り入れること」を大前提に「我慢を強いられると感じる暮らしでは心は豊かにならない」と、自らの実践を促すものでなければならないことを強調する。

 RISTEXの研究課題に採択されたことで、NT研究会が取り組むライフスタイル社会実装の方法論研究に弾みが付きそうだ。