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モノづくり日本会議/特別講演会「防災産業育成と防災力向上に向けて」 2015年11月19日

 モノづくり日本会議と日刊工業新聞社は11月19日、北九州市の西日本総合展示場で特別講演会「防災産業育成と防災力向上に向けて」(協力=日本防災産業会議)を開いた。わが国の災害対応力向上には民間企業による自発的な取り組みが重要となる。災害を乗り越えて事業を継続するための計画策定のあり方や有意義な情報を活用してどのような対策ができるのかを探った。


防災・減災を考える―今、企業に求められる事業継続(BCP)

インターリスク総研特別研究員・本田茂樹氏

  今、なぜ事業継続計画(BCP)か。まず東日本大震災を経て、被害想定が大きく見直された。九州では南海トラフ巨大地震の被害想定が2012年に大きく見直されている。また、さまざまな法律が制定・改定され、企業や一般家庭も災害について備える必要が生じている。
 企業間相互連携が進化する一方、予想困難なリスクが頻発化している。重要業務が中断しないように、中断しても速やかに再開できるように準備しておくことが大切だ。
 防災計画は社員・職員の身体・生命の安全確保と、建物や設備などの物的損害軽減が目的。その上で、優先的に継続・復旧するべき重要業務を継続するためにBCPがある。
 大災害が起こると、ヒト、モノ、カネ、インフラなどの資源が限られる。その時にやり続けなければならない業務は何か。「やること」と「やらないこと」を決めて徹底することが必要だ。
 防災計画、減災対策があってこそBCPは生きてくる。できるだけ多くの社員の安全を確保し、物的損害を軽減することが、次のステップであるBCPを回しやすくする。
 国の防災基本計画は「自らの身の安全は自ら守る」ことを基本としている。企業も同じで、まず命を守ることが重要。その上で、二次災害の防止、事業の継続が求められる。
 事前にやるべきは耐震チェック、耐震強化、防火対策、家具・機械設備の転倒防止など。これら事前対策は事業所、工場、会社のビルだけでなく、社員が多くの時間を過ごす家庭の防災が不可欠だ。自助・共助・公助という考え方と併せて、ぜひ社員の啓発に当たってほしい。

 BCP発動のタイミングは、地震なら「発生後速やかに」。台風・豪雨などは準備期間がある。感染症は海外で発生した段階で発動する。発動時の体制は、経営トップがリーダーとなり、代行者も必ず決めておく。
 被害想定はとても重要だ。認識していないリスクには備えられない。それにはまず、震度、液状化の発生、津波、土砂災害など、自社の拠点がどうなるのかを知ること。例えば津波浸水0・5メートルなら地下部分は水没。電気設備があれば全滅だ。
 エレベーターが止まったらどうするか、書類棚が倒れて下敷きになったらどうするかなど、一つひとつシミュレーションする。「在宅勤務で対応」ならば自宅パソコンのセキュリティーはどうなのか、「データをバックアップ」は誰がするのかなど、具体的に決めていないと機能しない。
 BCPを立てたらPDCAを回す。訓練を重ねて落とし穴を見つけて改善する。訓練は休日にも実施する。
 十分に注意するべきは一つはサプライチェーンの問題。BCPは自社だけでは完結しないので取引先との協力が欠かせない。
 安否確認はシステムを導入して完了ではない。訓練し、課題が出たら更新し、人事異動も都度反映。また、初期の救急救命行動も自分たちで対応することを心しておかなければならない。
 帰宅困難時に、本部機能維持を含めて長期間宿泊対応が可能なのかも重要だ。水道も電気も止まる。食料は対応できても、トイレはどうか。簡易トイレとトイレットペーパーの備えも生活の質的観点から見逃せない。
 新型インフルエンザでは64万人が亡くなると想定されている。地震と異なり、流行が1年半から2年ぐらい続く。感染防止と事業継続の2本立てで考えることが必要となる。
 まとめとして、企業はまず、被害想定の見直しに基づき、防災計画、BCPを見直す。次に命を守るため、耐震チェックをし、必要に応じて補強する。そして備蓄を見直す。
 繰り返すが、震災対策は起きてからでは意味がないのだ。

気象災害における初動体制の確保と確実な情報収集に向けて―九州北部豪雨の経験を生かして

ウェザーニューズ防災気象コンテンツサービスグループグループリーダー・中神武志氏

 昨今、気象が激しくなっている。保険の支払額を見ると、気象災害が甚大になってきていることが分かる。アメダスデータでも時間雨量50ミリメートル、100ミリメートルを記録する回数が非常に増加している。アメダスでは捕捉できないゲリラ雷雨はもっと頻繁に起きている。
当社の創業は45年前の海難事故がきっかけだ。気象災害から人命、財産を守りたいという思いからだ。気象庁などからのデータに加え、顧客や当社独自の観測点1万カ所のデータ、登録数900万人のサポーターからのウェザーリポート・”感測“情報をもとにピンポイント予報や防災情報・対応策情報などを提供している。
例えば船や飛行機に対して最適航路推薦、道路や鉄道では除雪対策など、コンビニエンスストアでは店舗ごとの発注アドバイス。事業継続計画(BCP)の視点では、全国に拠点を持つ企業に向け、拠点ごとの対策情報が店舗運営・工場稼働に活用されている。個人向けではウェザーリポートで参加する”みんなでつくる天気予報“を展開している。

自社衛星による北極海の観測、ゲリラ雷雨予測のための独自レーダー運用、レーダーによる津波監視などにも取り組んでいる。
2012年7月11日からの九州北部豪雨で大きな被害が出た八女市は旧八女市と5町村が合併し、福岡県で2番目の広さ。気象特性はバリエーションに富んでいる。九州北部豪雨では14日までに600ミリメートルの雨が降り、大きな被害を受けた。
八女市では河川の氾濫対策と体制の取り方に大きな課題を感じた。初動確保、体制の規模、避難準備情報や避難勧告・指示をどのタイミングで住民に出せばいいのかなどだ。
そこで当社は判断基準づくりに取り組んだ。過去の雨量など気象条件と被害を分析し、基準値をつくる。この基準を超えた場合、いかに早く確実に伝えるかがポイントになる。
防災情報・対応策情報は現在、300自治体・600部署と契約している。地域防災計画や災害履歴、体制履歴などと気象データ、地域特性などから、自治体ごとの体制指標を作成する。単なる防災情報、気象情報ではなく、クラウド型の業務支援サービスを提供している。
双方向のコミュニケーションによって、よりタイムリーな判断を支援する。また、指標に基づいて運用したのち、自治体と一緒に評価・分析し、しきい値や手法などを見直して改良している。
八女市では市内6エリアに分けてこの体制指標を出す。ウェブでは目先3時間と、それ以降の体制指標、雨量・水位情報、気象台からの警報・注意報などが一覧できる。体制をとったり、避難情報を発表したりするタイミングなど、意思決定に必要な情報を1枚の資料で出力できる。
被害状況、各部署の体制、協定のある近隣自治体の状況など、情報を共有するツール、スマートフォン向けの情報ツールもある。蓄積された各データ、履歴から報告書をまとめる機能もある。
当社は現在、県や市など14自治体と協定を結び、減災プロジェクトに取り組んでいる。当社はサイトをつくり、自治体は住民に参加を呼びかけ、職員も主体的に参加する。今起きているリアルタイム情報、蓄積した過去の情報を皆で共有するプラットフォームをつくろうということだ。
11年2月に始まった千葉市では、東日本大震災での液状化被害がリアルタイムで把握でき、その後の行動に有効な情報となった。

 東日本大震災ではサポーターから被害の情報がたくさん送られてきた。こうした情報は自治体と協力し、多くの住民に呼びかけることでより多く集められる。それが被害を減らすための情報として大勢の人に活用されるようにしていきたい。