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モノづくり推進シンポジウム 3Dプリンティングが拓く次世代のモノづくり 2015年12月4日

 モノづくり日本会議(事務局=日刊工業新聞社)は昨年12月4日、次世代3D積層造形技術総合開発機構(TRAFAM)の協力のもと、東京都江東区の東京ビッグサイトでモノづくり推進シンポジウム「3Dプリンティングが拓く次世代のモノづくり」を開いた。従来の除去加工や成形加工にはない特性を持つアディティブマニュファクチャリング(AM=付加製造)はモノづくりとビジネスに革新をもたらす次世代生産技術として大いに期待されている。高付加価値製品製造に向けたAM技術の現状と課題を整理し、今後の展望を探った。


《基調講演》3Dプリンターの産業活用

  産業技術総合研究所 製造技術研究部門デジタル成形プロセス研究グループ
グループ長 岡根利光氏

鋳造ターゲットに量産も視野

 積層造形は1層ごとに材料供給し、必要な部分を硬化させる技術だ。従来はラピッドプロトタイピング(RP)と呼ばれ、樹脂素材を造形し試作・形状確認に用いられていた。
 最近は高品質の樹脂や金属素材を積層し、そのまま部材として使用できつつある。アディティブマニュファクチャリング(AM)と呼ばれ、製造の技術になってきた。
 金属積層の市場は、宝飾、歯科・医療、競技車両、航空宇宙といった付加価値の高い分野がターゲットだ。一番の成功例は歯科のクラウンだろう。
 自動車産業では、例えば金型全体を3Dプリンターで作るのは非現実的だが、ダイカスト用の鋳抜きピン、押し出しピンや局所冷却用パイプなど細かい機能部品、あるいはオーダーメードの治具などから広がるのではないかと考えている。
 技術開発の方向性は高速化・高精度化・大型化だ。ここで重要なのは、圧延材を切削加工した場合と同様のレベルの品質、信頼性を求められること。そこで、粉体溶融の予測と制御、凝固の高速化、熱応力や凝固組織の予測と制御などが重要になる。また、たとえ少々の欠陥があっても影響しない設計を考えることも必要だろう。
 2014年に設立されたTRAFAMでは世界最高水準の造形装置開発を進めている。従来速度の10倍、従来精度の5倍、造形可能範囲は3倍、異種金属材料の複層可能、価格は5000万円以下というのが目標だ。なお、TRAFAMはISO/TCの日本での事務局を務めている。
 3Dプリンターの試作から製品・部品の製造へのシフトの例として、鋳造での活用について説明する。鋳造製品は外側の形よりも内側の形に機能がある。中空部を作るために中子を用いるが、3Dプリンターはこの中子の製作に適している。
 我々は、砂をインクジェットで固める手法を採用している。複雑形状の一体成形が可能なこと、1時間当たり1万ccと高速なこと、金属粉末よりも安価なことが特徴だ。
 開発を進めている1液式硬化システムは高耐熱性、高充填性、高強度、高取り出し性などに加え、使っていない粉のリサイクル性など、多くのメリットが得られている。
 3Dプリンターの今後の展開として、鋳造をターゲットにすれば自動車エンジンのような大量生産も視野に入ってくる。

鋳造技術によるモノづくりの動向

  岩手大学工学部 鋳造技術研究センター長 教授・平塚貞人氏

サイズの大型化・高速造形が課題

 2013年の世界の鋳造生産量は1億300万トン。国別では中国が4250万トンで、米国、インドと続く。日本は14年の生産量が556万トン、金額が約2兆円。主要な用途である自動車の軽量化対策を反映し、徐々に非鉄系の比率が増え、金額的には半分近くになっている。自動車部品には相当な量の鋳物が使用される。ボンネット内部では、重量の約8割が鋳物と言われる。エンジンだけでなく、駆動系、足回りにもかなり使われている。
 最近注目のコア技術としては、空気の巻き込みによる欠陥をなくす真空ダイカスト法や、半凝固の状態で溶湯を流し込むことで微細な組織の鋳物を得るセミソリッドのダイカスト技術が目を引く。
 鋳造の分野でも、設計、金型製作、金型による鋳型製作の過程で3D技術の活用が進んでいる。設計はもちろん、各工程の検査で3D技術を取り入れて時間短縮を図っている。樹脂のRPをうまく活用した事例もある。
 3Dプリンターに関してはレーザー焼結工法、インクジェット工法が取り入れられている。これらの工法の最大の特徴は中子の形状・組み合わせの自由度が極めて高いこと。中子に使う型の点数も大幅に少なくできる。中子の工夫で製品自体の一体化や軽量化も可能になる。さらに工程時間を約6割減できることが示されている。

 今後の課題は造形のサイズの大型化、造形スピードの高速化だ。TRAFAMで開発を進めているが、鋳造への応用が大いに期待される。人工砂の開発と合わせ、精緻な鋳型、精密鋳造への適用が広がるだろう。

砂型積層造形技術の鋳造部品への適用

  日産自動車 パワートレイン技術開発試作部 主担・八下田健次氏

積層中子、部品の複雑化で威力

 砂型積層技術の基になるのは3次元CADデータ。これを、2次元スライスデータにして、それを固めることを繰り返して造形していく。鋳造用としてはまず、中子などの砂型を作って、それを鋳造に使う。装置や砂のコストが上がるので、単純な置き換えではなく、より高い付加価値が求められる。
 最大の特徴は複雑形状の一体成形だ。金型を使う場合のアンダーカット、抜き勾配などの制約から解放されることが大きい。型の形状の制約だけでなく、方案設計の自由度も高くなる。
 装置に関する課題についてはTRAFAMや海外各社が開発に取り組んでいる。
 積層中子用3Dプリンターの能力は年々向上している。能力の向上に合わせて、それまでの開発試作だけでなく、量産に対する能力を持ちつつある。
 多種の鋳造材料への対応や凝固速度差を付与する高機能砂型を造形する試みもなされている。
 積層中子用3Dプリンターの活用技術も向上している。単品試作、開発試作にとどまらず、量産工法として活用する企業も現れている。月産1万個を想定するラインの構想も公開されている。
 自動車業界では、積層中子用3Dプリンターを必要とする高機能鋳造部品へのニーズが高まっている。出発点はCO2規制、排ガス規制という環境問題への対応だ。二つの規制を守り、かつコストを抑えることが求められる。

 パワートレインの進化と、車両重量の軽量化を進める上で、より複雑化する部品の製造に積層中子が力を発揮するだろう。

電子ビーム方式金属積層造形(3Dプリンター)技術の現状と将来展望

  東北大学金属材料研究所 加工プロセス工学研究部門 教授・千葉晶彦氏

AM、技術革新促す強力ツールに

 電子ビーム積層造形は電子ビームで加熱した板の上に粉末を敷き詰め、そこにビームを照射して溶融する。ビーム走査が終わったら粉末を供給する。この繰り返しで造形する。
 予熱により製品に残留応力が残らないことが特徴だ。複雑形状でもサポートレスで造形できる。デザインの最適化で精密鋳造よりも大幅な軽量化が可能だ。TRAFAMでは造形空間1メートル×1メートル×60センチメートルの大型装置や、複数の粉末を供給する仕組み、10倍の出力の高速モデルなどを開発している。
 凝固後の組織は凝固パラメーターである温度勾配、凝固速度で決まる。ビームと走査の条件、粉体の粒度分布など重要なプロセスパラメーターの制御によって、多結晶にも、単結晶にもできる。
 AMは凝固組織の自在制御が可能なので、新規材料開発の技術でもある。炭化物の微細分散析出によって靱(じん)性を維持しながら硬さを増した合金などを得ることができる。
 デザイン技術としては、例えば強度を確保しながら薄肉化を図るなど、トポロジー最適化を具現化する。
 将来的にはインプロセスモニタリングが非常に重要になる。1層ごと全てデータをモニターすることで、欠陥と判断したらその場でその層を作り直す。欠陥をなくしながら作るので、最終的に検査は不要となる。

 AMは従来のモノづくり技術のさまざまな障害を取り除き、技術革新を促す強力なツールとなる。さらには積層造形を中心としたマイクロファクトリーに3Dデータを送って製造する姿は、サプライチェーンの変革をももたらすだろう。

ハイブリッド金属3Dプリンターと最新アプリケーション

  松浦機械製作所 常務取締役・天谷浩一氏

積層途中で切削 寸法精度格段に向上

  11月のフランクフルトの展示会ではサービスビューローの出展が多かったことが特徴的だった。装置ではレーザーをマルチヘッド化し、高速化を図った機種が印象に残った。
 展示されているワークとして自動車部品に対する適用が非常に増えていた。3Dプリンターが自動車産業の現場で使われることは、産業の影響力の点で非常に意味が大きい。
 当社は積層(付加加工)と除去加工を同時にできる複合機を手がけている。2003年に投入し、現在で第3世代。この間、CO2レーザーをファイバーレーザーに替え、出力も向上させてきた。厚さ50マイクロメートルの層をレーザーで焼結し、10回繰り返して積層していく。ここで一度、必要な部分を切削する。これを繰り返して造形する。積層の途中で切削することで、寸法精度が格段に向上する。
 金型製作では、3次元冷却水管、内部のポーラス材化、深リブ加工などによって、成形時間を大幅に短縮できる一体構造金型製作が可能になる。金型製作リードタイムは約6割まで短縮できる。
 機能部品への適用では、カスタムメード、ニアネットシェイプ、内部構造の自由設計によって、高付加価値商品を創出できる。特に設計の自由化は、従来の除去加工で制約があった内部構造を自由にできると考えれば、全く新しいものを創造できる。

 3Dプリンターを使いこなすには、モノづくりの発想を変えることが肝要だ。我々は新たな、高度な機械の開発を進めている。ユーザーはもっと攻撃的にこの技術を活用し新しいモノづくりに果敢に挑戦してほしい。

航空宇宙分野における3D積層金属造形(3Dプリンタ)の新たな展開

  宇宙航空研究開発機構 H3プロジェクトチーム 主任開発員・堀秀輔氏

エンジン部品適用へ課題解決目指す

  航空宇宙分野は世界的に見れば供給過多にあるため、工期短縮や低コスト化は欠かせない環境にある。一方、モノづくりの側面から見ると、少量多品種生産、極限までの軽量化要求、高い信頼性要求という特徴がある。
 質の高い3Dプリンターは産業全体の構造を変革し得る。日本がグローバル競争の中で競争力を持続するためには、3Dプリンターの装置開発、実用化の両輪が重要となる。
 JAXAでは航空機、人工衛星、ロケットの国際競争力を目的に、3Dプリンターの実用化に取り組んでいる。具体的にはH3の第1段エンジン部品に適用を考えている。3D造形の適用候補はバルブ、配管類、ケーシング類、推進支持機構、燃料噴射器など。コスト、信頼性、性能影響などを総合的に評価して判断する。
 3Dプリンターによる造形は、欠陥・表面性状・組織の3点に大きな課題がある。また同じ組成でも鍛造材とは異なる特性やばらつきを示すため、新たな材料として材料データベースや故障ナレッジの充実が求められる。
 見落としてはならないのが水素脆(ぜい)性など、雰囲気影響。表面粗さや欠陥に起因する各種応力集中条件のもと、広い温度・圧力範囲で強度特性、破壊力学特性への水素環境影響を確認する必要がある。
 それらの課題をすべてクリアした上で、非破壊検査を含む品質保証の手法、基準を確立しなければならない。

 プロジェクトを通じ、3Dプリンターの実用化を図り、航空宇宙分野での課題を解決していきたい。先行事例として実績を重ね、3Dプリンター技術やわが国のモノづくりの発展に貢献していく。

航空機およびエネルギー機器における金属積層造形技術の適用展開

  川崎重工業 技術研究所 材料研究部長・井頭賢一郎氏

複雑・高コスト部品の生産を検討

 当社は金属積層造形技術について、製品そのものの単価が高い実製品、実部品の生産手段とするための開発と考えている。従来工法では製作できない革新的な設計、一体化することでコンパクト・低コストが可能になるもの、従来工法では材料歩留まりが非常に悪い製品などへの適用を進めている。具体例の一部を紹介する。
 航空機エンジン用の燃料噴射弁は構造が複雑でコストが非常に高い。特に複雑なノズル部分に3Dプリンターの適用を考えている。設計サイドからは全部作れないかと提案があったが、さまざまな製法を検討し、ほかの部分は必ずしも3Dプリンターの必要はないと判断した。
 中圧圧縮機モジュールのケーシングには数百キログラム程度のチタン部品が使われるが、部品重量の10―20倍の素材から削り出される。このチタン合金は1キログラム当たり1万数千円するため、素材投入量を下げるだけで大きなコストダウンが可能だ。そこでデポジション方式による積層造形を検討している。条件が合わないと大きな欠陥が生じるので、プロセスの最適化を進めている。
 産業用ガスタービンでは、燃焼器に3Dプリンターを使い、少し大胆な冷却設計にトライ中だ。表面粗度が良いレーザー方式で進めているが、残留応力が大きいので、精度との兼ね合いが難しい。
 水素燃焼ガスタービンでは、3Dプリンターで作ることを前提とした燃料噴射弁の最適設計・製造に取り組んでいる。

 金属積層造形で重要なことは何を作るかということ。設計と生産の技術者が議論を重ね、有効な適用例を増やしていきたい。

3D造形技術の中小企業における活用の実際

  東京都立産業技術研究センター 多摩テクノプラザ 
電子・機械グループ長・阿保友二郎氏

試作用途・オーダーメイドで好評

 東京都立産業技術研究センターは本部と多摩テクノプラザ、城東支所、城南支所、墨田支所生活技術開発センター、バンコク支所で構成。技術支援を通じた都内の中小企業振興を担っている。3Dプリンターは都内5拠点に樹脂系を主体にさまざまなタイプの10台を保有している。装置は機器利用事業として時間貸しを行っている。3Dデータを持ち込んで造形することができる。
 我々は3Dプリンターを試作のための装置と考えている。企画案を試作した結果、没になる事例も数多いが、金型を作る前に「売れそうもない」ことが分かるのも3Dプリンターの機能の一つだ。プラモデルメーカーの活用例では、3Dプリンターによる造形の驚きは3Dのモデリング力があってこそということ、高精細装置でも金型を用いた実製品の精細さには及ばないことを実感した。
 一方、形はきれいでなくても、とにかく実際の樹脂で成形したモノを見たいという利用者が、8時間で射出成形用の試作型を製作し、成形品10個を得たケースがあった。スピードアップのツールとしての威力を目の当たりにした。
 医療分野では、CTデータをもとに、手術計画を3Dプリンターによって実物大で見える化する事業がある。SOHOであっても3D技術が高付加価値サービスのトータル化を実現している。また、オーダーメードによる可動義手の製作は「個」の対応として象徴的な例だ。

 3Dプリンターはまさにミニマムな形態の製品開発、今までなかったものを実現するツールである。

産業用3Dプリンターの現状と展望

  みずほ銀行 産業調査部自動車・機械チーム調査役・藤田公子氏

ICT融合で新事業モデル創出へ

 3Dプリンターの今後の用途として、実製品の造形が期待されている。3Dプリンターの最大の特徴は、設計のデジタルデータから直接物が作れることによる、形状自由度の高さ。現在の応用例からは「複雑」「少量」「高価」という共通項が見いだせる。補聴器、フィギュアや宝飾品、臓器模型など、よく知られたアプリケーションはいずれも三つの共通項のいくつかに該当する。
 産業機械部品では、複雑な工程やボトルネックの解消ができる場合や、製品の性能向上ができかつ販価に反映できる場合に、3Dプリンターの活用が期待できる。
 3DプリンターのQCDは既往工法対比で不十分と言われるが、既往工法との比較にあまり意味はない。着目すべきは、既往工法の限界突破の可能性。アプリケーション開発にはユーザーのメリットまでを含めたバリューチェーン全体を見渡すことが重要だ。私は「隠れたマネタイズシステムの発見」と呼んでいるが、バリューチェーン全体のどこに3Dプリンターを活用すれば、製造コスト削減、もしくは価格プレミアム上乗せが実現するかを発見してほしい。そのためには社外の知恵を活用するオープンイノベーションも有効な手段だ。

 ICTと3Dプリンターの組み合わせは新たなビジネスモデルを創出し得る。産業機械において、オペレーションとメンテナンスで収集したデータを設計開発に生かせば生かすほど、顧客の使い方に応じたカスタマイズが価値を生むケースが発見されるだろう。その有望な手段の一つが、3Dプリンターだ。