新産業促進検討会, 最新活動報告

第9回「新エネルギー促進検討会」~再生可能エネルギー熱利用 ~ 2014年2月26日 

新エネルギーの将来動向や市場拡大の可能性を探った

モノづくり日本会議は2014年2月26日、都内で新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)、三菱総合研究所と共催で「第9回新エネルギー促進検討会『再生可能エネルギー熱利用』」を開いた。NEDOが熱利用計測技術プロジェクトを紹介したあと、東京ガスや新日鉄住金エンジニアリング、土谷特殊農機具製作所、三菱総合研究所の一線研究者が報告した。


司会あいさつ
産業創出・地域活性化を期待

新エネルギー・産業技術総合開発機構新エネルギー部統括主幹 渡辺重信氏

風力発電や地熱発電などの件数が増えつつある中で、再生可能エネルギー熱はあまり利用が進んでいない。ポテンシャルは非常に大きいが、利用のための設備導入コストや熱の輸送、加えて「需要と供給の不一致」という課題を抱える。熱源の近くに十分な需要があるとは限らず、利用の多くは自家(自社)消費にとどまっている。

エネルギー利用では電気も使われているが、その半分以上が給湯や冷暖房など、熱としての利用である。エネルギーの利用効率を高めて、エネルギーの需給構造を安定化させるためには、地中熱や太陽熱、雪氷熱などをうまく使うことが必要だ。再生可能エネルギー熱の利用は、新しい産業の創出や地域の活性化にもつながると考えている。

熱量の適正な計量カギ

NEDO熱利用計測技術プロジェクトの概要

新エネルギー・産業技術総合開発機構新エネルギー部主任研究員 生田目修志氏

エネルギー消費について、電気は質が高く、使い勝手の良いエネルギーと言われている。一方でエネルギー消費に占める熱の比率は、住宅の約6割、事務所ビルの約5割と非常に高い。それにもかかわらず再生可能エネルギー熱の利用が進まない背景には、固定価格買い取り制度が適用されていないこともあるが、利用の拡大に向けては熱の環境価値の経済価値化が欠かせない。

そのポイントは、再生可能エネルギーから供給された熱量の適正な計量。具体的には、入りと出の温度差と流量を測って、それを掛け算するため計量のシステムは複雑でなおかつ高価だ。

NEDOでは、2011―13年度の3年間にわたる「再生可能エネルギー熱利用計測技術実証事業」で、コストと計量精度のバランスを備えた計量方法を確立しつつある。熱ごとに対象設備や計測機器を設置し、実証運転により計測・分析・評価を行い、計測手法を整備した。NEDOは事業の成果をうまく活用して、これからグリーン熱証書の普及促進などに活用していきたい。

太陽熱システム普及へ4課題

太陽熱利用のシステムの紹介とガス事業者としての取り組み

東京ガスエネルギーソリューション本部ソリューション技術部課長 越水大介氏

我々ガス事業者はガス機器メーカーと一緒になって、太陽熱の利用促進を図っている。まだ成果は出始めた段階で、そのぶん潜在性を持っており、年間40万―50万台程度になる可能性がある。

普及拡大には、「魅力ある製品の開発」「安心できるメンテナンスサービスの提供」「普及支援策の検討」「イメージ向上」の四つの課題がある。魅力ある製品の開発、安心できるメンテナンスサービスの提供とは、具体的にイニシャルコストの低減や施工・メンテナンス性の向上、デザイン性の向上を指す。

太陽熱システムは、「太陽熱利用温水システム」「空気式ソーラーシステム」「ソーラークーリングシステム」、そして以前からあり、数が最も多い「太陽熱温水器」に分類できる。

いずれのシステムにとっても、重要なのが「集熱器」と「選択吸収」の二つだ。集熱器は、太陽光を吸収して熱に変換し、集熱管内を流れる水などの被加熱物に受け渡す。選択吸収では、太陽光を効率良く吸収し、熱放射による損失を抑制する。

当社の太陽熱関連商品は、給湯・暖房に太陽熱を利用できる家庭用と、冷房もできるシステムを加えた業務用の各タイプなど、豊富に取りそろえている。ガス業界は、早ければ数年後に小売りの完全自由化を控えており、ガスを売るだけではなく、再生可能エネルギー関連の機器を売ったり、工事を含めて受注したりして売り上げを伸ばしていきたい。

地域一体で有効利用へ

新日鉄住金エンジニアリングによる地中熱利用システム導入事例

新日鉄住金エンジニアリング建築・鋼構造事業部シニアマネジャー 中村靖氏

地中熱利用システムでは地中に熱交換器を設け、15度C程度で一年中安定している地中の熱を空調や給湯などに使っている。少ない消費電力で運転でき、二酸化炭素★(CO2)排出量もランニングコストも削減することが可能となる。大気に放熱しないため、ヒートアイランド現象も緩和できると考えている。

当社は目下、福岡県にある当社事務所ビル「北九州技術センターE館」に地中熱ヒートポンプシステムを設置し、実証を行っている。この建物は地上5階建てで、建築面積が2330平方メートル、延べ床面積が1万387平方メートルだ。

また当社は、地中熱ヒートポンプの使用により地中温度がどのように変化するかを、地盤の熱伝導率などの条件を入力することで予測できる設計ツールを開発した。

地中熱ヒートポンプは熱源水温度によりその能力や効率が大きく左右されるため、地中温度の変化を知るのは重要なことである。夏には温度がこれぐらいまで上がり、冬にはこれぐらいまで下がるといった具合に、外気の温度に比べてメリットの出る範囲内で熱源水温度の変化をおさめるように冷却塔を自動的に制御できるようにしている。

地中熱の普及を図る中で、今後は地域的な熱融通システムが注目されるだろう。「熱源水ループ」に太陽熱や排熱などをつなげることで、他の施設を含む地域一体でエネルギーを有効利用していきたいと思う。

冷熱量計測、低コスト技術目指す

自然氷を冷熱源とするアイスシェルターでの雪氷熱利用について

土谷特殊農機具製作所企画開発室 斉藤朋子氏

日本では、北日本を中心に農産物の長期貯蔵用や建物の冷房用として雪氷熱を利用している。雪氷熱は1980年ごろから研究されており、北海道だけで68件(うち氷利用は15件)の事例がある。雪や氷は地元民にとって、除雪や除湿の必要があるやっかい者ではあるが、モノや空間を冷やすのには有効だ。

雪氷熱の利用には雪や氷を保存する大掛かりな施設が必要で、初期コストがかかる。利用の拡大に向けてはグリーン熱証書制度などの支援策が重要で、そのためには認定基準を満たすとともに、コストの低い雪氷熱計測手法の確立が欠かせない。

当社は帯広畜産大学と共同でNEDOからの受託研究に取り組んでいる。冷風循環方式で農作物を貯蔵する「アイスシェルター」を設置し、利用冷熱量の計測・算出方法を検討している。

利用冷熱量を低コストで精度良く計測するために、計測機器や計測方法が異なる3種類の手法を比較している。1年以上冷熱量を実測し、基準値から20%未満の誤差となる低コストの熱量の計測技術の確立を目指している。

今回検討している計測手法は自然氷に限らず、雪を冷熱源にした施設に応用することもでき、寒冷な気象環境を有効に利用できるチャンスの拡大が見込まれる。

今後、利用冷熱量の計測方法を確立して、雪氷熱の普及の促進につなげていきたいと考えている。

「熱ネットワークの構築」重要

再生可能エネルギー熱利用の動向と将来展望

三菱総合研究所主席研究員 小島浩司氏

再生可能エネルギー熱は国産のエネルギー資源であり、その利用を拡大することは貿易赤字の削減の観点からも重要である。普及にあたって最大の課題は経済性であり、イニシャルコストがわりと高い。

ただ年間を通じて使用できれば、イニシャルコストは下がるだろう。政府の補助金制度などもあり、10年、20年のタームで考えればペイバックできて、経済的なメリットも出てきそうだ。建物を長期的に運用する学校や病院などでは、取り組みやすいのではないかと思う。

次いで、機器の性能や耐久性といった技術面の課題も挙げられる。他の熱源に比べて現状の用途は限定的だし、維持管理や修繕にかかるコストなども見えにくいからだ。

さらに設置場所の確保、需要にみあった熱供給を実現するための時間や量、物理的課題の解消といった課題もある。いずれにしても他の熱源との組み合わせなどに可能性が高い。

再生可能熱の普及促進には「熱ネットワークの構築」が極めて重要で、そのためには地域における自治体と事業者による中長期的な検討の枠組みが必要だ。

また、熱供給事業を社会のエネルギーインフラとして育成するため、事業リスクの軽減策や官民連携の枠組み、インセンティブを付与する仕組みが大切である。

さらに、「熱のスマートグリッド化」に向けて蓄熱技術や制御技術などのイノベーションが欠かせない。