ロボット研究会, 最新活動報告

ロボット研究会「かかみがはら次世代航空・ロボットセミナー」 2015年12月9日

 モノづくり日本会議は岐阜信用金庫、岐阜県各務原市との共催で昨年12月9日、各務原市にある各務原市産業文化センターでロボット研究会「かかみがはら次世代航空・ロボットセミナー」を開いた。中部地区は国内の航空機・部品生産額の半分を占める航空宇宙産業の一大集積地でもあり、成長産業として注目を集める航空宇宙関連やロボット産業にチャンスを見いだそうとする企業は少なくない。無人飛行ロボットの第一線の研究者らが最新トピックスを紹介し、ビジネスチャンスや技術的課題などを提示した。


次世代産業を考える―IoT、ロボット、AIによる未来像

  日刊工業新聞社執行役員名古屋支社長・四釜広幸

モノ・データ融合する時代 企業間・地域連携が重要に

 安倍晋三政権の経済政策「アベノミクス」は2015年に第2ステージへ突入した。現状490兆円の国内総生産(GDP)を600兆円に引き上げるべく、ロボットやIoT(モノのインターネット)、人工知能(AI)などの技術を導入して新産業の創出、既存産業の競争力強化につなげようとしている。
 欧米ではデジタルネットワーク戦略が進んでおり、IoTの進展も著しい。パソコンや携帯電話、家電、自動車、住宅などあらゆるモノに加え、ヒトまでもが対象になる。
 米ゼネラル・エレクトリック(GE)は「インダストリアル・インターネット」を掲げ、モノとデータを融合した次世代製造業を目指す。イタリアの航空会社の事例では、GEは航空機1機当たり数百個のセンサーを組み込み、故障予知などに活用。さらに収集したエンジンの稼働データなどを分析し、より効率的な運航方法までを提案、顧客の燃料費削減に大きく貢献している。
 欧州ではドイツの「インダストリー4・0」が高い注目を集める。第4次産業革命の到来との認識の下、競争力強化に向け、ロードマップを示し、官民一体で取り組み出した。
 欧米の動きに対抗すべく日本はロボット革命実現会議を設け、ロボット新戦略を策定した。安倍首相はロボットを大規模工場から社会の隅々にまで解き放つと語っており、20年までに製造業のロボット市場を2倍に、農業など非製造業では20倍に引き上げる考えだ。
 IoTやロボットの時代にカギを握るのはAI。米国のアップルやグーグルが巨額投資で先行しているが、トヨタ自動車が16年1月に米シリコンバレーでAIの研究拠点を設立するなど、同分野の研究はますます活発化する。

 一方でサイバー攻撃への対応なども重要だ。モノとデータが融合する時代は一社で全ては完結しない。企業間だけでなく地域を越えた連携が求められる。

記者から見た航空機産業のビジネスチャンス

  日刊工業新聞社名古屋支社編集部記者・杉本要

生産・資金調達力と熱意 受注のカギ

航空宇宙産業を4年間、取材してきた。注目のMRJは半世紀ぶりの国産旅客機で95万点の部品からなる完成品。付加価値の高い分野に日本企業が参入することは、意義深い。
MRJの開発は、今後も大変なことが数多く残っている。一方で英コンサル会社が、2034年にはMRJが同型機市場で世界2位になるといっている。
業界の現状はどうなっているのか。MRJは航空機産業の将来にとって重要だが、ビジネスの主体は欧米向けの機体やエンジン製造になる。中・大型機に当たるボーイング787では機体の35%を三菱、川崎、富士の3重工が作っている。さらにエンジンでもIHIや川崎重工が、15%参画している。
一方、エアバスについてはエンジン部品で多少参画しているが、機体向けはほとんどない。また小型機での参画もほぼない。航空機産業への新規参入のタイミングは、三つと言われる。まずは新型機の開発時。次に航空機の増産時。これは中堅・中小を含めてサプライチェーン全体に及ぶ。最後にアフターマーケットだ。
この3条件に当たるのが、777X部品、MRJ量産化、エンジン大増産、装備品の受注拡大だ。777Xの生産でのトピックは生産の自動化。組立作業者の人件費を減らすために、機械加工部品を増やすニーズがある。
MRJがボーイング機と違うのは、三菱重工業、三菱航空機というプライムメーカーが国内にある点。お互い日本人であり「どうやって作るか」と、どんどんカイゼンできる。

 航空機は機体構造ばかりではない。エンジンや装備品・内装品でもチャンスは出てくる。受注のカギは工場の生産能力と資金調達力と熱意だ。航空機産業は、生産管理に厳しく、その割に実入りが少ない。それでもやるのは「航空機の一翼をわが社が担う」というプライドだと考える。

無人飛行ロボットの研究開発、運用、ビジネス展開

  豊橋技術科学大学准教授・関下信正氏

産業利用”無限大”安全配慮が必要

 私は大学の研究室で、空気や水の流れについて研究している。空気の流れを実験室の中に発生させ、その中に航空機や自動車を置いて、空気抵抗を減らすとか、飛行特性を解明するというような実験を行っている。
 また、無人の無線操縦ヘリコプターの研究開発も行っており、共同研究を発展させて、2015年2月に会社を設立した。平和利用のための無人航空機・製品の開発を理念としており、災害調査や人命救助などに役立つ多目的無人ヘリコプターの開発を目指している。将来の話になるが、企業や自治体で我々の無人ヘリコプターを使ってもらう際には操縦訓練や機体メンテナンスも必要になるので、コンサルティング業務も行いたいと考えている。
 日本のメディアでは四つや六つの回転翼があるマルチコプターのことをドローンと呼ぶことが多いが、無人航空機の総称であり、固定翼機や米軍がよく使う無人偵察機なども定義上はドローンに当てはまる。
 我々がターゲットとしているのは、ローターが一つで、一般的な有人ヘリコプターと同じような形をしたシングルローター・ヘリコプターになる。ここからは現在の主力製品について話をさせていただく。我々はモーターやエンジンの動力を翼に伝える機構であるローターヘッドの研究開発をしており、特許の申請も行っている。開発した4枚回転翼ローターヘッドの特徴は高い積載能力にある。
 一般的な2枚回転翼のローターヘッドに比べ揚力が2倍発生する。ヘリコプターの自重を除いて最大10キログラム程度まで持ち上げられる。ちまたではやっているマルチコプターではだいたい0・5キログラムぐらいしか積めない。高い積載能力があるので、カメラなどの機材だけでなく、燃料やバッテリーをたくさん積め、より長い飛行も可能になる。
 例えば我々のローターヘッドを装着したヘリコプターにガソリンエンジンを搭載すると、100分程度は飛行できる。普通のマルチコプターだと数分から20分程度しか飛べない。
 4枚回転翼ローターヘッドの二つ目の特徴が、振動の小ささ。マルチコプターやシングルローター・ヘリコプターは通常、かなり振動がある。そのため振動に伴って空撮画像がゆがんでしまう現象が発生し、きれいな画像が撮影できないという問題も起きている。振動が小さいことはかなりのメリットになる。
 それから三つ目の特徴は、高速飛行。最高で時速100キロメートルぐらい出せる。普通のマルチコプターだとせいぜい時速30キロメートル。人命救助の場合では自動体外式除細動器(AED)を、1秒でも速く運ぶということも大切だ。
 このローターヘッドをつけたヘリコプターが災害時の空撮調査や気象観測、農薬散布などのほか、橋梁・鉄塔の老朽化調査や山間部での送電線敷設といった用途で使われることを期待している。将来的にはローターだけでなく機体自体を開発したいと考えている。
 これとは別に空中で24時間程度とどまる無人飛行機や超小型無人航空機も開発したい。超小型機は高層ビルの空調ダクトの点検などでの活用が見込める。実現には超小型の電子部品やモーターの開発のほか、機体の素材開発もポイントになる。
 現在、マルチコプターはモーターやバッテリーの出力・トルク向上やセンサー性能向上などもあり、軽量で安価な製品が入手できるようになった。安倍晋三首相は、ドローンによる宅配の3年以内の実現などを目指し、規制緩和を加速させることを表明している。

 無人航空機の産業としての可能性は、アイデア次第で無限大だ。一方で空を飛ぶ製品であるため、その安全性には特段の配慮が必要となる。多様なサービズを実現するためにも安全な無人航空機を作っていく必要がある。