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一日中小企業庁in沖縄 うちなーの宝で跳びだそう!わったー島の中小企業 2016年2月2日

 「一日中小企業庁in沖縄」が2月2日、那覇市の沖縄かりゆしアーバンリゾート・ナハで開かれた。中小企業庁と内閣府沖縄総合事務局経済産業部、沖縄県による「中小企業フォーラム」には、豊永厚志中小企業庁長官、翁長雄志沖縄県知事らが出席。地元企業や会場と意見交換を行った。モノづくり日本会議、日刊工業新聞主催の基調講演ではヤマト運輸の梅津克彦執行役員が登壇。沖縄の優位性を活用した新ビジネスに関する講演に約300人の聴衆が聞き入った。沖縄での一日中小企業庁は1981年の第1回開催以来35年ぶりの実施。「うちなーの宝で跳びだそう!わったー島の中小企業」を副題に、地域資源活用や県外・海外展開をテーマにしたタイムリーな催しとなった。


メッセージ:中長期的成長軌道へ

  沖縄県知事・翁長雄志氏-県経済、中長期的成長軌道へ

 2015年の沖縄県内の景気は、好調な観光関連を背景に個人消費や建設関連が堅調に推移した。雇用情勢についても、完全失業率および有効求人倍率が改善を続けてきたところだ。今後はこの景況感の好転を全産業へつなげ、県経済を中長期的な成長軌道に乗せていくことが重要だ。
 そのためには地域経済を担い、地域の雇用と暮らしを支えている中小企業・小規模事業者が、より一層の発展を遂げることが重要になる。沖縄県では「21世紀ビジョン実施計画」に基づき、中小企業・小規模事業者の経営基盤の強化、資金調達の円滑化などの総合的な支援策を展開している。
 また15年には「沖縄県アジア経済戦略構想」を策定した。目まぐるしく発展するアジアのダイナミズムを、県経済に取り入れるために、今後さまざまな施策に取り組んでいく。
 地域を支える中小企業・小規模事業者として、今後とも企業の成長・発展に尽力してもらいたい。

施策紹介:事業機会の拡大・稼ぐ力の強化を支援

  中小企業庁長官・豊永厚志氏

 わが国の中小企業・小規模事業者の数は膨大な数におよび、業種、規模も多種多様だ。行政に関わる者は少しでも現場を知ることが大事だと考えている。
 前職の日本政策金融公庫時代に中小企業経営者、小規模事業者の姿を見て改めて確信した。それは日本の産業の強みは中小企業・小規模事業者に源泉があるのではないか。それら多くの事業者こそが地域経済や社会の安定を支える極めて重要な存在だということだ。
 日本経済はマクロ的には回復基調とされるが、地域経済はまだ厳しい状況にあることも事実。景気回復の実感が全国津々浦々に染み渡る、行き渡らせることが行政の務めだ。一方、中小企業と連携し創意工夫で活性化につなげる地域も少なくない。沖縄県でも名護市と恩納村、読谷村が共同でリゾートウエディングに対して「ふるさと名物応援宣言」を発表。地域の特徴を新しい視点で生かした取り組みも見られる。
 成長戦略「新三本の矢」や訪日外国人(インバウンド)の動向、環太平洋連携協定(TPP)の大筋合意など、中小企業・小規模事業者が大きく活躍し、羽ばたくチャンスが訪れている。中小企業庁は事業機会の拡大や稼ぐ力の強化に精いっぱい尽力する。
 沖縄では豊かな自然環境、伝統文化、歴史があり内外から多くが訪れる。地の利を生かし、アジアや太平洋地域の玄関口として目を見張る動きも見られる。今こそ沖縄の皆さまと対話すべきだと考えた。明日への活力につながるヒントをつかむ場になってほしい。

基調講演:地理的優位性、TPPでチャンス

沖縄イノベーション アジアに向けた新日本のビジネス創造 

  ヤマト運輸執行役員グローバル事業推進部長・梅津克彦氏

 当社の宅急便は今年40周年を迎えた。2019年には創立100周年だ。日本の企業は1980年代後半から海外にどんどん出て行っているが、当社のグローバル化はまだこれからという面もある。台湾で宅急便を始めたのは15年前だがこれはパートナーシップでやっている。自前で始めたのは10年からだ。その前の07年、08年から国際化をどうしようかと考えてきたが、その絶対的な必要条件はやはり地理的優位性だ。つまり沖縄の地理的優位性、さらには沖縄県が提供しているさまざまな制度を使って、どのように日本とアジアを一つのマーケットとしてとらえるサービスを提供できるかを考えている。物流を血管に例えると、沖縄は心臓なのだ。沖縄なくして当社の国際戦略は語れない。
 来るべき環太平洋連携協定(TPP)による市場変化については、まず日本の農水産品の輸出拡大を考えたい。農水産品の輸出モデルは、他のさまざまな業種の皆さまには関係が薄いと考えがちかもしれない。しかしその裏にある、どれだけ効率的にモノを運べるか、どれだけ効率的に輸出を支えられるか、そういったことを沖縄の皆さんとの協業の上で考えたい。
 商流と物流とインフラとを考えていくと、キーワードはまずグローバル・バリュー・チェーンということ。環太平洋のそれぞれの国単位でなく、商流が一つの大きな面になると思う。その中で関税の撤廃や規制の緩和などが進んでいく。ダイレクトな物流がますます増えるので、沖縄を使った場合の通関のスピードなども考えると、TPPのメリットを最大限に生かせるのは沖縄だと思う。
 TPPについては日本のモノづくりの力を考えると、やはり入ってくる以上に、攻めていく方に大きなチャンスがあるのではないか。各条例を見てみると個や会社単位、地域の特徴をうまく規制の中に盛り込んでいる。ある意味ではスモール・ビジネス・オーナー、つまり中小企業の方、さらに県単位、市町村単位でビジネスチャンスが出てくると思う。沖縄を活用して、それこそ1個単位、1製品単位でモノを送る。量的な拡大から質的な拡大に進んでいくといってよい。

 私たちがグローバル戦略を考える際に各国の地図を見る。沖縄は海外のマーケットに近く、日本に対するゲートである。それを活用してこれから商流と物流を一緒に作るために、スモール・ビジネス・オーナーの方々をサポートしていきたい。例えば海外のバイヤーやお客さまのニーズを、宅急便の情報網を使ってどれだけ皆さんに報告できるかが重要だ。

中小企業フォーラム意見交換会: 地域資源活用 世界の市場を実感

《中小企業フォーラム第2部・意見交換会の出席者》

中小企業庁長官 豊永厚志氏
沖縄県商工労働部長 下地明和氏
オキネシア社長 金城幸隆氏
るりあん専務 稲嶺佳乃氏
マブイストーン社長 古谷野裕一氏
【司会】内閣府沖縄総合事務局経済産業部長 牧野守邦氏
【コーディネーター】沖縄国際大学産業情報学部教授 宮森正樹氏


沖縄の人・モノ・文化を訴求
現地パートづー探し・人材が課題

牧野 中小企業フォーラム第2部では、地域資源の活用と県外・海外への販路開拓について中小企業と意見交換を行いたい。
宮森 初めに各社の製品開発や販路開拓における取り組みの説明をお願いしたい。
金城 オキネシアでは地元メーカーと協業し、ファブレスのモノづくりに取り組んでいる。食品に限らず化粧品や雑貨など横断的に商品開発ができる。地域資源を活用した商品では、島唐辛子など沖縄の素材でつくったペッパーソース「島酢弧(しますこ)」を開発した。最も力を入れたのは沖縄特産のかんきつ類・カーブチーの皮から抽出した、100%のエッセンシャルオイルだ。フランスの専門家から調香指導を得て、化粧品の製造・販売の免許を取り、完全に地元で香水がつくれる体制になった。
稲嶺 るりあんは琉球ガラスの小売業で設立して17年目。那覇空港と路面型免税店で販売している。琉球ガラスのジュエリーも製造しており、普段使いできるよう試行錯誤しながらデザインした。3年前から香港とシンガポールでも販売。海外ではガラス玉という表現が安いイメージになる。そのため手づくりで商品をつくっている説明として、プロモーションビデオを制作した。アジア圏内でも嗜好(しこう)が違うため、新たな商品開発も進めている。

古谷野 マブイストーンは沖縄県内で「琉神マブヤー」というキャラクターを使い、テレビ番組を中心に映画やコミック、音楽などをプロデュースしている。イベント興行、キャラクター商品の企画開発など主にソフト産業の分野だ。琉神マブヤーというキャラが生まれたのは2008年。東南アジアでの企業化調査を経てマレーシアで「琉神ジュワラー」として展開。グッズ販売に限らず、沖縄をロケ地に登場させ外国人クルーを沖縄に呼んだり、放送前にマレーシアの旅行代理店に映像を持って出向いたりプラスアルファの取り組みもしている。
宮森 モノづくりや海外展開にかかわる上で苦労は。
金城 まずカーブチーという素材に出会い、付加価値のピラミッドの頂点にあるアイテムは何かと考え香水に行き当たった。仏の専門家に協力してもらったため、時間的にも距離的、経済的にも苦労はあった。だが製品化でポテンシャルを証明できた。海外に委託せず沖縄でつくるため、メーカーになろうと決心した背景には、ノウハウを蓄積したいということがあった。
稲嶺 まず展示会に出展したが、次に小さな小売店、大きなデパートと探していくのに非常に時間がかかった。常時海外にいられないため、現地パートナーを見つけることが一番難しい。売り上げ後に現金を回収する点も課題に挙げられる。
古谷野 マレーシアは多民族国家で民族ごとに話す言葉も見るテレビも違う。当社はマレー語を選択したが、それ以外の中華系、インド系の市場は遠のくと腹を決めないとやれないと感じた。女性キャラクターの衣装をつくりなおすなど、ストーリー構成もイスラム教を意識した。”東南アジアルール“の契約もあった。
宮森 県のサポートも大きいようだ。
下地 県だけではなく中小企業基盤整備機構や沖縄総合事務局などとともに、海外・県外へベクトルを合わせて取り組んでいるのが、沖縄の中小企業が海外展開する際の強みだ。県も海外事務所を含めて商品開発支援、販路開拓、国際ハブ活用推進事業、市場調査、プロモーション、人材育成など多面的にバックアップしている。また「アジア経済戦略構想」を策定、計画をつくっている。
宮森 競合の中小企業や大企業に対して国際的な競争力をつけていくには。稲嶺 私たちは「人」だと考えている。琉球ガラスの職人たちがつくってきた沖縄の工芸に価値をつけて闘っていきたい。人づくりの中で、我々プロデュースする側がさらに職人をアピールする場をつくっていきたい。
古谷野 やはり沖縄のものをベースとした”チャンプルー(まぜこぜ)“だ。沖縄は独特の文化を持った土地。それをベースに海外の素材をうまくミックスし、現地の人にすんなり受け入れてもらうようにつくりあげる。
金城 香水で一番訴求したいのは沖縄のカルチャー。香りは記憶や思い出とつながっている。香りを通じて時空を越えて沖縄とつながってほしい。そういうコンセプトの香水はなかなかなく、差別化し発信したい。
豊永 沖縄に存在するいろいろな資源、環境を使っていろんな技術を開拓した典型的な3例だ。一方で地域資源をどこに売るかを考えると、海外にこそ商機があるという気がする。まさに今日の話はその感を強くした。物流においても地理的に近く空港の利便性が高いことからすれば、まだ大いに商機がある。
宮森 3者の事例は単純に沖縄のものを売るのでなく、売った後の広がりが見える。ポイントの一つは差別化できていること。高付加価値で少ロットでも利益が出る仕組みにすれば世界に羽ばたける。2番目は市場の大きさ。沖縄を一歩飛び出すだけで何百倍、何千倍の市場が待っている。また毎年100万人近くの海外の人たちが沖縄に来る。このほか沖縄には磁器やコーヒー、赤土など資源が眠っている。掘り起こして付加価値をつけることで、沖縄の中小企業も羽ばたいて発展していけるはずだ。