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一日中小企業庁inふくしま 復興の新たなステージへ-挑戦するふくしまの中小企業 2016年2月9日

 「一日中小企業庁inふくしま」が2月9日、福島市のホテル・ザ・セレクトン福島で開かれた。福島県、中小企業庁、東北経済産業局による「中小企業フォーラム」には、高木陽介経済産業副大臣、豊永厚志中小企業庁長官、内堀雅雄福島県知事らが出席。中小企業基盤整備機構東北本部が共催した意見交換会では地元企業の経営者や会場の参加者も交え、福島県の中小企業振興に向けた議論がなされた。またモノづくり日本会議と日刊工業新聞社が主催した特別講演では、エーワン精密の梅原勝彦取締役相談役が登壇。企業の経営戦略の描き方に多くのヒントを与える講演に約300人の聴衆が聞き入っていた。「『復興の新たなステージ』へ―挑戦するふくしまの中小企業」のテーマの下、地域一丸となって成長を目指すための有意義な催しとなった。


あいさつ/「中小・小規模事業者支援に全力」

  経済産業副大臣・高木陽介氏

 福島県は内堀知事を中心に、県の復興再生を目指し、中小企業、小規模事業者をしっかりとバックアップする体制ができはじめている。この動きを支援するため、国も全力を挙げて取り組んでいる。
 これまで、原子力災害現地対策本部長としてさまざまな現場をみてきた。福島第一原発の廃炉・汚染水対策、被災者支援、除染・インフラ復旧だけでなく、福島全県を歩きながら感じたことは、この福島の地は中小企業・小規模事業者も農業も、多くの可能性があるということだ。
 安倍内閣が発足して3年が過ぎ、長引くデフレからの脱却がようやく見えはじめている。調印式も行われたTPPはマイナスの部分ばかりではなく、チャンスもある。中小企業、小規模事業者にも可能性がある。海外へも展開できる。そういう企業を我々はしっかりと応援していく。
 今年3月11日で震災から5年になる。この間、常磐自動車道が開通し、また、12市町村の避難指示の解除が順次進められているが、これらは終わりでなくスタートだ。そこに戻ってくる地元の人が事業を再開し、震災前以上に仕事をできるようにすることが重要だ。
 昨年夏に官民合同チームを発足させ、相双地域の約8000の事業所の訪問を続けている。この聞き取りを受け、自立支援の予算を講じることとなった。
 イノベーション・コースト構想も着実に進んでいる。楢葉のモックアップ施設はこの春に稼働する。ロボットのテストフィールドの検討協議も進めたい。

 原発の事故収束を着実に進め、福島を復興し、新しい未来をつくり上げていく流れの中で、中小企業、小規模事業者の皆さんにとって一日中小企業庁が有意義なものとなってほしい。

メッセージ/「経済再生、中小の活性化不可欠」

  福島県知事・内堀雅雄氏

 あの震災から間もなく丸5年。今もなお多くの方々が避難生活を続け、被災者の生活再建をはじめ、風評、風化の二つの逆風など、福島県の復興はいまだ途上にある。一方、未来を開くさまざまな拠点施設の整備が進展し、出生率や経済指標が着実に回復するなど、明るい光も強まりをみせてきた。
 こうした光を福島県内全域に行き渡らせ、力強い復興をなし遂げるためには、経済の再生、とりわけ中小企業の活性化が不可欠だ。県として、中小企業の活性化を後押しする環境整備や新産業創出など、福島復興の要である経済再生をしっかりと進めていきたい。

 今日を契機に、関係機関と企業との連携がさらに深まり、福島県の産業の活力が一層高まることを期待する。

特別講演/「私はこんなことを考えながら「強い町工場」を創りました」

社長の決断、3つの留意点

  エーワン精密取締役相談役・梅原勝彦氏

 私は貧しい家庭に育ったため、小学校を出てすぐ、小さな町工場のでっち奉公に出た。22歳の時にカム式自動旋盤を見て衝撃を受けた。試作を作るのなら私は負けないが、自動旋盤は同じものを黙々と作り続ける。これからは自動盤だと思った。そこで兄と2人でカム専業メーカーを1965年に立ち上げた。顧客のニーズをくみながら作り、納期は早く、値段は安くを実践し、大手を圧倒した。
 69年にシチズンがNCカム成形機を開発した。これから高精度が要求される時代が来ると感じていた私は、大変高価なこの装置が必要だと考えたが、兄は導入に反対した。翌年、6人いた社員の3人を引き連れてエーワン精密を設立した。
 小さな町工場がNC機を導入したと話題になり、注文は殺到した。だが、やがてカム式自動盤はNC機に置き換わり、カムは要らなくなるだろう。カムでもうかっているうちに、次の手を打たなければならない。NC自動盤ならコレットという工具が絶対必要なので、コレットメーカーにシフトしようと考えた。
 これが意外に難しかったが、他社にできるのだから、当社も絶対できるはずだと推し進めたのが76年。それから12年後、シチズンが小さなNC旋盤を開発した。カム式自動盤の時代はもう終わったと感じた。
 当社は既にカムよりもコレットの売り上げが多くなっており、体制改善は完了済み。大手の納期が遅い6・15ミリメートル、4・18ミリメートルといったサイズも短納期で対応し、コレットでも天下をとれた。
 月日が経過し、引退を意識して社内を見ると、営業はしない、納品は宅配便、集金は振り込みという殿様商売が当たり前だと思っている社員が大部分を占めていることに気づいた。これはまずいと、99年に切削工具の再研磨に進出した。この業界は全国に何社あるのか分からないくらい競争相手が多い。だが進出から9年目には売上比率が24%と立派に育ち、30%近い利益率をクリアしている。頑張る社員がいるということと、大きな市場に参入したことを見届け、2007年、相談役に退いた。
 当社は10年周期で大きな決断を迫られていたと感じる。社長の仕事は決断すること。私の決断の際の留意点は次の3点。その事業は世の中に必要なものか。その事業は利益が出せるか。万に一つでも業界のトップになる可能性があるか。
 今の仕事が好調なときに、なぜ次の仕事をやるかというと、仮に失敗しても戻ることができるからだ。経営者は社員が路頭に迷うようなことは絶対にやってはいけない。

 経営者に限らず、本を読む習慣は大切だ。実社会ですばらしい人にめぐり合う機会は限りがあるが、読書は無限に可能だ。経営者は孤独なもので、結局全部自分で決めなければいけない。安岡正篤先生の「読書とは、迷ったときに、正しい方向に行く道を学ぶためにするものである」は非常に含蓄がある言葉だと思う。

中小企業フォーラム意見交換会:「オールふくしま」で支える、中小企業のチャレンジ!

《中小企業フォーラム第2部・意見交換会の出席者》

中小企業庁長官 豊永厚志氏
東北経済産業局長 守本憲弘氏
福島相双復興官民合同チーム事務局長 角野然生氏
栄楽館取締役常務 菅野豊臣氏
フジモールド工業社長 岡田英征氏
坂本乙造商店社長 坂本朝夫氏
ワインデング福島社長 清信正幸氏
福島県よろず支援拠点コーディネーター 渡辺正彦氏


地域に根ざした支援追及を 複合的経営課題~専門家の連携不可欠~

渡辺 昨年10月にオールふくしま中小企業・小規模事業者経営支援連絡協議会が設立された。事業者支援は長い時間軸でみることが必要だ。商工団体の経営指導員や金融機関の営業担当者、税理士など企業のホームドクターが連携し、さらにはホームドクターをサポートする地域サポート委員会、オールふくしまサポート委員会を通じて支援の実効性と質を高めるものだ。
 まず、企業の状況、支援機関への期待などについて伺いたい。
菅野 郡山市の磐梯熱海温泉で3軒の旅館を経営している。旅館業は日本文化の伝承者。現在は地元福島の食材を用いた食育に力を入れている。人材不足への対応として昨年7月に企業内保育園を起業した。現在21人が入所している。
岡田 当社はカメラの鏡筒部品を中心に精密プラスチック金型設計・製作、成形加工を手がけている。震災で富岡町の本社工場、宮城県の工場は操業不能。残った相馬郡新地町の工場は手狭なので、県、相馬市の支援の下、相馬市に拠点を移して生産を再開した。
坂本 会津若松で漆製品を製造している。伝統工芸に近い漆のアクセサリーや蒔絵(まきえ)のバッグと、自動車やヘッドホンの部品など工業製品が半々。社員は両方作り、ファッションセンスを磨き、品質管理を学んでいる。
清信 南相馬市小高区で手作業に特化したモーター用巻線部品を製造してきた。震災後千葉県東金市の取引先の一画に間借りして事業を再開した。このまま千葉でという思いもよぎったが、地元を支援する金融機関や仲間とも相談し、原町市の新工場を決断した。

渡辺 経営課題とその対応という点でもう少し伺いたい。
菅野 一刻も早く働く場所を提供したかったが、保育園の申請から認定までの時間がかなりかかる。待機児童がたくさんいる状況を理解してほしい。
岡田 今直面しているのは人材と仕事、受注の確保だ。実際に何が起きているのか身近でみて施策を考えてほしい。スピード感ある対応を期待したい。
坂本 デザインやブランドのように、短時間では結果が出ない取り組みもある。地域資源活用補助金のように長い目で見た、数年間じっくり取り組める制度がありがたい。
清信 福島相双復興官民合同チームの皆さんには何度も訪問いただいている。それぞれ事情の異なる事業者に対して、支援策を柔軟に捉えたアドバイスをお願いしたい。
角野 官民合同チームは昨年8月に発足し100人が訪問活動している。個別に訪問、何度も訪問、コンサルティングも行う、が特徴だ。国、県、商工団体などこれまで以上の連携が必要だが、中小企業支援の新しい形になるだろう。
渡辺 伝統産業はかなり厳しい局面にあるが、生き残りのポイントは何か。坂本 伝統産業は分業が進んでおり、一つの工程がだめになると全体ができなくなる。分業の再編成、産地間連携、他業種連携などのコーディネートが有効だろう。産業という以上、ある程度の規模が必要だ。
渡辺 温泉旅館業は観光地、温泉街全体の維持に大きな役割を担っている。菅野 旅館だけでなく、地域の全住民がおもてなしの気持ちを持たなければいけない。もう一つは食。食育は日本文化の伝承者である旅館業こそ担うべきだと思っている。
守本 福島の風評被害と食という点では、現地を訪れてもらうことが理解を深める。西日本では南海トラフ沖地震が想定されている。自治体、自治会、学校関係者などに東北を見てもらう復興ツーリズムを組織的に進めようと考えている。
渡辺 製造業の人材確保は深刻な問題になっている。
岡田 事業の継続・発展、技術の継承には人材確保が不可欠だが、人が足らないのでパート、アルバイトの時給が上がり、経営を圧迫している。当社は寮の整備を進めているが、そうした情報の発信に支援が欲しい。
清信 オールふくしま経営支援には期待している。復興需要が終わった時に何が残るのか。展望を開く基盤づくりとして、合同チームが収集したデータを分析・共有するなどの仕組みが必要だ。
渡辺 これまでの話から豊永長官のお考えを伺いたい。
豊永 事業に対する強い責任感に敬意を抱いた。今後も被災地の復旧復興、中小企業・小規模事業者の生産性向上、TPPに伴う海外展開、創業・事業再生・承継の四点を中心に支援を続けていく。
人材難の問題は実に難しい問題だ。人手不足を補える設備の整備支援も必要だ。また、新しい用途を生み出す伝統産業の取り組みは技術伝承の観点でみると示唆に富んでいる。
相談事業が非常に大事な時期。よろず支援拠点を中心としたオールふくしまの体制は心強く思う。
渡辺 地域に根差した支援の追求が大切だろう。複合的な経営課題には分野の異なる専門家が連携したコーディネート機能の強化も欠かせないと思う。

 本日はありがとうございました。