ロボット研究会, 最新活動報告

ロボット研究会 日本のサービスロボット事業の現状と可能性 2016年2月19日

モノづくり日本会議(事務局=日刊工業新聞社)は2月19日、神戸市の三宮研修センターでロボット研究会「日本のサービスロボット事業の現状と可能性」を開いた(協力=国際レスキューシステム研究機構)。サービスロボット事業の実態と成功・失敗の要因について、調査に基づき同研究会コーディネーターの石黒周氏が解説。併せて、調査対象企業から事業の詳細を紹介いただき、サービスロボット事業の推進・発展に向けたポイントを探った。


サービスロボット事業者59社の調査結果から

総合的設計で顧客価値実現を

  ロボットビジネス推進協議会幹事 
モノづくり日本会議ロボット研究会コーディネーター・石黒周氏

 経済産業省が昨年1月に発表した「ロボット新戦略」では、2020年のサービスロボットの市場規模について、現在の20倍の1兆2000億円という目標が掲げられた。
 そもそもサービスロボット産業の実態はどうなのか。事業の成功と失敗を分かつ要因はなにか。これを探るため、モノづくり日本会議の協力を得て、一昨年9月から半年かけて調査を行った。
 調査はサービスロボット事業を行う企業の責任者への直接インタビューで、調査対象企業は全部で84社。うち製造業46社、非製造業13社の合計59社から話を聞くことができた。
 製造業でのサービスロボット事業における成功13社と失敗4社の比較から、特に顕著な差が見られた要因は(1)意思決定速度(2)資金調達の成否(3)技術力(4)外部との連携―の4点。成功企業は事業について明確なビジョンを描いており、資金がいくら必要かなどもはっきり見通している。
 スマイルカーブに対応した成功企業は(1)部品・モジュール特化(2)迅速・柔軟な市場対応ロボット開発(3)対象顧客との価値共創―に類型化された。
 サービスロボットビジネスのキーアプローチはまず、ロボットビジネスをロボット化ビジネスと読み替えること。次に、ロボットを単体の機械として設計しないこと。顧客価値実現系を見渡し「インフラ」「端末」「サービス」を統合的に設計することが肝心だ。
 ロボット産業創出戦略ではベンチャーによる多くのチャレンジが生まれるように、投資家の呼び込み、大企業の位置づけ見直し、アーキテクトの養成などの環境づくりが必須となる。

 そして、自社完結にこだわらず、よい連携を組むことカギだ。

「先端ロボット技術によるユニバーサル未来社会の実現」プロジェクトについて

世界に発信し経済成長へ

  文部科学省 科学技術・学術政策局 研究開発基盤課 課長補佐・中川尚志氏

 「先端ロボット技術によるユニバーサル未来社会の実現」プロジェクトは、昨年6月に改訂された日本再興戦略で示された改革2020プロジェクトの一つ。課題解決先進国である日本の先端科学技術を社会実装・ショーケース化して海外にアピールし、システムソリューションを世界市場に輸出しようという狙いだ。
 あらゆる生活空間でロボットが活躍し、高齢者や障害者、外国人も含めた多様な人が、ストレスフリーな生活の実現に必要な幅広いサービスを享受するシーンを作り上げ、ショーケース化する。実施場所で想定しているのは台場・青海地区、市街地・空港など。
 プロジェクトの推進母体はユニバーサル未来社会推進協議会。協議会は会員が提案するプロジェクトで規制緩和などが必要な場合、関係省庁への窓口となって調整を図る役目も果たす。会員には50を超える企業、大学、公的機関、自治体などが参加しており、現在も募集中だ。

 実証プロジェクトの提案も募集している。ポイントは、2020年にユニバーサルな体験を来場者に提供できる、日本が関わる実演可能な技術であるということ。経済成長につなげる狙いがあるので、事業化することが前提となっている。

サービスロボット事業を成功に導くには…

介護ロボ、接する人の気持ちに配慮

  マッスル社長・玉井博文氏

石黒さんからサービスロボット成功の4要件という話があった。大企業は資金、技術力はあるが、意思決定が遅く、連携はやりにくい。中小企業は意思決定が速く、連携は得意だが、なかなか四つはそろわない。
 政府は産業用ロボットと医療・介護を組み合わせてトータルシステムを提供し、産業の成長を図るというが、これまでのサービスロボット関連の事例を見ると、課題は多い。
 高度な技術で研究としては素晴らしいが、出口に明確なビジョンがあるのか。アイロボットの社長は「キーワードは実用化」と述べている。日本を代表する研究機関が開発した介護ロボットは被介護者を威圧するごつい腕、180キログラムの重量など、ベクトルがずれている印象だ。
 東大発ベンチャーが日本では資金調達ができず、グーグルに買われたケースでは”始める“ことに冷たい日本社会を象徴している。これでは、サービスロボットは国が描く規模にはならない。
 当社の介護ロボット「SASUKE」は先輩の失敗を繰り返さないように考えながら開発を進めた。介護ロボットは人の近くで動く。介護リフトは吊り下げ式のため、揺れを嫌がる人も多い。人の気持ちが重要だ。
 介護の現場で大勢の話を聞き、お姫様抱っこ型に決めた。ハンモックを敷いてそれごと持ち上げる。体圧が分散され痛くないので安心してもらえる。
 この2月に厚生労働省の介護ロボット導入への補助事業が始まり、当社への問い合わせが急増した。事業として成功の気配がやっと見えてきた、という段階になった。
 当社は上海万博の日本産業館で壁登りロボットを披露した。仲間の中小企業15社が手弁当で集まってくれた連携の成果だ。連携すれば自分にない部分をカバーできる。
 連携のポイントは桃太郎だ。ゴールは社会的に義のあるテーマ。「日本一」ののぼりでビジョンを周知し、きび団子というメリットを示しながら得意分野の異なる仲間を集める。集めた財宝は成果に応じて分配する。

 現在、介護ロボットの塾を主宰している。専門の異なる30人ほどのメンバーが事業化に向けたワーキングを重ね、いくつもの案件が動いている。

診断・治療領域向け医療用ロボット開発への取り組み

製品化成功へ5ポイント必須

  メディカロイド常務・田中博文氏

 当社は医療用ロボット事業を展開するため、産業用ロボットの技術を持つ川崎重工業と、医療検査機器の技術と医療市場を熟知したシスメックスとの合弁で設立された。ターゲット分野は病院での診断と治療。
 医療用ロボットを通して”みんな“が安心して暮らせる高齢化社会をサポートすることをミッションとしている。2社だけで全てはできないので「オープンプラットフォーム」がポリシーだ。
 コア事業は手術支援用ロボットシステム(RAS)と産業用ロボット技術を発展させて医療用に適用するアプライドロボット(APR)の二つ。
 RASは腹腔鏡手術ロボットを狙う。ますます強まる低侵襲要求に合わせ、手技の高度化が進んでいる。この分野はダビンチが市場を切り開いたが、よりリーズナブルでコンパクトな装置の開発を進めている。また、国プロに参画し、次世代の軟性内視鏡手術ロボットの開発にも取り組んでいる。APRとしては将来RASと協調して使用できる製品を計画している。
 来年度中にAPRを市場導入し、19年にRASを製品化しようと考えている。国プロ案件は21年を目標として進められている。
 医療用ロボットの製品化は市場調査、企画、開発、製造、販売・サービスという産業用ロボットと同じ流れだが、大きく異なる点がいくつもある。ニーズの掘り起こしには多くの医師から声を聞かないと方向性を誤ってしまう。治験・薬事認証には膨大な投資と時間が必要となる。
 製造、販売、サービスと業態ごとの許可制や市販後監視について法令規制があることなど、他の産業にはない法律、規制、慣行があることも注意しなければならない。
 QMSも厳しい。要求事項を受けて設計し、妥当性を確認する開発プロセスだけでなく、ライフサイクル全般にわたり対応が要求される。すべてを文書化するシステムの確立・維持が必要だ。

 製品化成功のキーポイントとして、リスクから逃げない、世界市場を目指す、適切なニーズを吸い上げる、ロードマップに乗る準備、外部との連携-という5点が挙げられる。これらの一つでも欠けると成功にはたどり着けないと考えている。