その他事業, 最新活動報告

防災産業展in静岡‐防災イノベーション特別講演会 2016年2月24・25日

 モノづくり日本会議は2月24、25の両日、静岡市駿河区のツインメッセ静岡で開かれた「防災産業展in静岡」の併催事業として「防災イノベーション特別講演会」(特別協力=日本防災産業会議)を実施した。大災害時、企業や公共機関は社会的責任として、被害を最小限に抑え、事業継続を図ることが求められる。南海トラフ地震、首都直下型地震への備えが急がれているいま、東日本大震災の経験を踏まえた対策の現状と課題を探った。


基調講演/イオングループの防災の取り組みについて

BCM5カ年計画、5分野の対策強化

  イオングループ総務部長 津末浩治氏

 イオングループは日本、中国、ASEANの13カ国に約1万9000拠点の店舗、事業所を有し、営業収益約8兆円、従業員数44万人の小売り企業集団だ。静岡エリアでもマックスバリュ東海をはじめ、34社600店舗・拠点を有している。
 防災、減災と地域成長を両立させた魅力ある地域づくりの実現を目的に、静岡県が進める内陸フロンティア推進区域にイオングループも参加している。昨年9月に稼働したイオン長泉ロジスティクスセンターは第1号事業として選定された。
 イオングループの基本理念は「お客さまを原点に平和を追求し、人間を尊重し、地域社会に貢献する」。東日本大震災では地域社会のライフラインとしての小売業の責務を果たすため、グループを挙げて被災地域の復旧・復興に取り組んできた。早期に営業を再開し、買い物ができる日常を取り戻すことが社会インフラとしての役割だからだ。
 防災を取り巻く社会全体の環境変化に対応し、より進化させるため、2016年からイオングループのBCM5カ年計画がスタートする。中・長期のスパンでBCMに取り組み、仕組み化をして管理を推進する体制を構築する。分野は情報システム、施設、商品・物流、訓練、外部連携の五つ。地震以外の自然災害についても取り組んでいる。
 情報システムではBCM総合集約システムが核になる。20年度までに、地図情報をベースに、災害状況や安否確認結果、店舗被災状況など災害に関わる各情報をBCM総合集約システムに一元化する。関係会社を含めたグループ全315社が瞬時に情報共有できる体制を目指す。
 施設の安全・安心対策の強化として、20年度までに全国に100カ所の防災拠点を整備する。防災拠点は各エリア対策本部を兼ねた防災拠点、全国主要エリアの物流拠点、津波一時避難拠点店舗の三つのカテゴリーで進めていく。これまでに27拠点、16年度には新たに9店舗を防災拠点として整備する。
 商品・物流のBCMはイオングローバルSCMを中心に、取引先とともに情報共有基盤の構築に取り組む。一方、行政との協定も進めていく。現在約700の行政と協定を締結している。
 東日本大震災時、多くの行政や企業から物資の要請があったが、商品の遅延や重複が課題だった。これを解決するのがイオンBCPポータルサイト。取引先とイオンの被災状況を共有し、出荷可能商品を確認する。自社の物流会社とも情報を共有し、被災地に必要な商品を最短ルートで届けられるようにする。
 訓練は春と秋の年に2回、グループ総合地震防災訓練を実施してきた。20年度には店舗、事業所段階での実効のある訓練を通じ、重大リスクからお客さまと従業員を守れるようにする。帰宅困難者の支援も考える。
 外部連携では、行政との包括協定や物資支援協定を締結し、訓練も行政と連携して実施している。地域のライフラインとしての役割を担うには、イオングループだけではなく、そのエリアの取引先や行政、大学など、あらゆる視点での連携が必要だ。より強固なものを目指したい。

 この5分野を20年までの戦略的目標に掲げ、イオンのBCMとして国内・海外の全店において仕組み化を完了させていく。

災害対策システム「7VIEW」構築の背景・目的展望について

賛同企業との相互連携 検討へ

  セブン&アイ・ホールディングス執行役員 粟飯原勝胤氏

 セブン―イレブンは災害対策システム「7VIEW(ビジュアル・インフォメーション・エマージェンシー・ウェブ)」の構築を進めている。社会インフラの一翼を担うコンビニエンスストアには災害発生時の営業継続に対する期待値が非常に高い。一刻も早く状況判断し、対策を講じ、一日も早く店舗、サプライチェーンを復旧させることが目的だ。
 災害対策システムは2005年、店舗の停電発生検知システムから始めた。東日本大震災の時は14分後には1896店舗の停電を把握した。
 セブン―イレブンは日本全国に1万8000店以上ある。災害が発生したとき、サプライチェーンを守るために、より詳細な地理情報の見える化が必要だと考えた。
 パスコの空間情報、NECの停電情報、NTTコミュニケーションズの専用線網、全国5200台のセブン―イレブンのトラックに積まれた富士通の車載端末データ。正しい情報を素早く収集し、複数の情報を地図上に分かりやすく表示する。
 店舗や担当者など、情報データベースの正確さと、情報のタイムリーさと正確度を組み合わせた運用の2点がポイントになる。
 自社内の情報だけでなく、取引先とも情報の提供、共有、共用を図れないか。富士通はセブン以外にも、全国で6万7000台の情報を集められる。ウェザーニューズは会員940万人から気象リポートが集まる。ALSOKの隊員と河川氾濫、道路冠水、橋梁・道路損壊などの情報共有ができないか。こうした検討を進めている。
 国等の公共機関の情報との連携も始まった。システムはグーグルの基盤に地図情報を載せ、そこに気象庁の情報、公共情報コモンズ、Lアラート、国土交通省のDiMAPSなどの階層を重ねる。
 7VIEWを地域住民への災害情報発信手段として使えないだろうか。店舗を介して地域住民に向けた発信、国や公共機関への情報連携に発展させたいと考えている。16年度は災害時の企業活動継続を使命とし、社会貢献に賛同する企業と相互連携を検討することが目標だ。

 昨年7月に立ち上がった日本防災産業会議でさまざまな協議、検討を深めたいと思う。

 発災後の速やかな復旧を図り、事業活動を継続することは企業の社会的責任の一つだと言える。モノづくり日本会議は、静岡を拠点に多岐にわたる事業を展開する企業集団の鈴与グループと日本全国を網羅する日本郵便のBCPへの取り組み、緊急避難と復興の間を結ぶ大和リースの応急仮設住宅事業の現状から、災害の多い日本に基盤を置く企業のあるべき姿を探った。

鈴与グループ140社の事業継続(グループ全社へのBCP展開)

訓練は本番のように、本番は訓練のように

  鈴与危機管理室長 後藤大輔氏

 当社は清水に本社があり、創業は1801年。グループ140社で物流、商流、建設・ビルメンテナンス、食品、情報、地域開発、航空事業の7事業を展開している。2005年に危機管理室を設置し、東日本大震災の後、鈴与グループ危機管理委員会が発足した。
 委員長の下、委員長代理、事務局長、委員14人の編成。委員は7業種それぞれの代表的な14社の社長が務めている。各委員の下に、実務を扱う推進スタッフがつく。

 危機管理委員会本会議は経営戦略会議などに合わせて開催している。推進スタッフ会議は隔月開催で、会議後メンバーは各社で重要事項の周知を図る。
計画・マニュアル類は鈴与グループ事業継続基本計画、鈴与グループ対策本部運営要領、災害対処マニュアルの3本柱。細部の規定が必要な場合は別冊として追加していく。
事業継続計画は各社で作る。まず、自社のリスクを洗い出した。具体的対策のキーワードは「どんな準備をして」「どんな意識をもって」「どんな事象に対処するために」「どんな行動をするのか」の四つだ。
装備は対策本部機能の充実、電力と通信機能の確保、安否確認、備蓄品。対策本部では地図の活用や情報表示機能など、見える化を進めている。
対策本部にはデータ地図とパネルに入れた地図を用意。地図ソフトには書き込める機能を設けたが、コンピューターが使えなくなったときには手で書くことも必要だ。
対策本部室は専用の部屋なので、パソコンはテーブルの下に棚を設け、電源を入れたまましまっている。時計は誤読を防ぐためデジタル。緊急時に必要な電話帳は一覧表にして張り出してある。
教育・訓練関係で効果的だったのはデリバリー方式の訓練。拠点巡回はヒアリングを通じて不具合を抽出しフィードバックできる。部外講師講話も非常に効果的だ。
避難訓練に合わせて備蓄品の使用訓練を行う。例えばカセットコンロは風に弱い、トイレ設置には広いスペースが必要など、実際に使用することで課題が見えてくる。
通信の目的は情報の収集、配布。必要な人に正しく伝わらなければ意味がない。訓練では想定を与えて、状況、処置を報告する訓練を実施している。
図上演習は訓練の目的、狙いを明確にすることが不可欠だ。訓練初心者も参加する場合、参加者を追い詰めるような訓練としないよう注意が必要だ。
一般的な初動対処には大きく3点の問題がある。対策本部の態勢は平時の態勢でよいのか。有事には有事の組織が重要だ。ただ、これには訓練が必要だ。対策本部設置の判断も、初動対応チームが対策本部設置の要否判断のために情報収集をするという手順では、初動が遅れてしまう。情報収集は対策本部長が判断処置を決定するためだ。記録様式についても簡潔にし、記入後拠点ごとに分別するよう改善した。
実際の対処や訓練で中心的立場で動く担当者のスキルアップも重要だ。普段から知識の向上、イメージを持たせるために機会教育を実施している。

 訓練は有事の際に適切な行動をとれるようにするために行っている。「訓練でできないことは本番でもできない。訓練は本番のように、本番は訓練のように」という持論に基づき取り組んでいる。

日本郵便の東日本大震災対応とその後の取り組み 

各郵便局の判断・対応 できるだけ尊重

  日本郵便執行役員 矢野圭一氏

 東日本大震災では日本郵便関係で59人、日本郵政グループ全体で62人が命を失った。建物被害は直営郵便局で全壊58局、半壊15局、浸水33局。簡易郵便局は全壊25局、半壊3局、浸水4局だった。
 3月14日には東北3県の約半数が営業休止。被災地の配達業務はインフラが崩壊し、ガソリン不足も相まって、人手に依存した事業継続となった。配達は、局舎が使用可能であれば発災翌々日の3月13日からガレキの中、速達と書留の配達を再開した。
 配達で苦労したのは避難所への配達。大災害では、どこに誰がいるのかをいかにスムーズに把握するかが大きな課題だ。
 窓口業務では3月20日から車両型郵便局15台を稼働させ、はがきの無料配布や一人20万円を限度とした貯金の非常取扱、保険に関する相談などのサービスを提供した。
 この大震災から学んだ一番重要なことは、通信手段が不十分な中での早期復旧のためには、各郵便局の判断と対応をできるだけ尊重するということだ。
 ではその後、どのように取り組んだのか。まず人命第一の考え方を改めて徹底した。マニュアル冒頭に、災害時は安全な場所に速やかに避難することを明記。ポケットマニュアルを全社員に配布し、常時携行している。
 会社危機管理体制の整備も進めている。初動対応として40万社員の安否確認と2万4000局の被害状況の把握が最重要だ。
 安否確認メールと、郵便局から支社への電話報告の2系統で状況を集約する。電話報告は回線パンクを回避する報告系統を整備し、連絡手段の複線化も図った。
 食料備蓄は全郵便局で最低1日分を確保している。地方自治体との防災協定では、避難先情報の提供について協定の見直しや新たな締結を始めている。
 近い将来に発生が予想されている首都直下地震・南海トラフ地震への体制整備も進めている。近畿支社による本社機能の代替、本社バックアップ施設として関東支社(さいたま市)の選定に取り組んだ。また、津波に対する避難困難地域の把握に取り組む。

 日本郵便は「想定外」という言葉を禁句とし、準備していきたいと考えている。

巨大災害へのレジリエンス―応急仮設住宅供給の現状と課題

官民連携、供給体制の多様性 必要

  大和リース新規事業推進室長 小林秀人氏

 大和リースは災害時には応急仮設住宅を供給する役割を担っている。当社は阪神・淡路大震災で8790戸、東日本大震災では5843戸を供給した。
 日本は災害発生率が高いが、災害に対する復元力、レジリエンスも高い。災害が起きたら緊急避難、次に応急、そして復興となるが、この応急の制度は日本だけだ。
 我々が供給する応急仮設住宅に求められるのはスピードと量だ。自力で復興できない被災者を救護することが、応急仮設住宅の一番大きな役割だ。
 住民がいなければ復興はできない。人がいなくなったら町の存続自体が難しくなる。その地域の文化や伝統、技術も全て失われていく。そうならないようにコミュニティーを維持・形成することも応急仮設の役割だ。
 応急仮設住宅には供給期間が2年以内という原則がある。価格や着手期限も決められている。供給する・しないは都道府県知事が判断する。
 応急仮設住宅は災害救助法に基づくが、災害救助法の枠では復興住宅はつくれない。復興までの居住プロセスの連続性がない点が課題だ。復興との連続性が解決できればコミュニティーの形成も連続できる。
 供給体制の多様性も必要だ。企業がもっと参加をすべきだと思うし、官民の連携をもっと進めるべきだ。
 こんな方法も考えられる。発展途上国の低所得者住宅と日本の応急仮設住宅は仕様・大きさが近い。これを共通化し、海外の低所得者住宅の供給体制を、災害時に活用する。それを拡大し、ある国が被災した場合に国際連携で支援する枠組みができないだろうか。
 防災対策は「防ぐ」ための土木工事が主体だが、起きたときにどうするのかも、同じように重要な対策だ。我々は企業の役割として常に準備を重ねているが、災害はどのくらいの規模で、いつ起きるかわからない。発災した場合のリースや販売に事業性はあるが、計算はできない。
 災害後の対処に関しては、どの企業のどういう事業が代替できるのかを平時に考えておく必要がある。行政としても、どの企業に何を担ってもらうのかを事前に通知しておき、最大限の対処を可能にする方策が重要だ。

自治体パネルディスカッション‐地域防災の最新動向とこれからの災害対策のあり方

自治体の単独対応に限界 広域からの「受援」が重要

【パネリスト】
静岡県危機管理部危機情報課課長代理 望月勇人氏
和歌山県総務部危機管理局防災企画課副課長 鳥羽真司氏
防災科学技術研究所災害リスク研究ユニット副ユニット長自然災害情報室室長 臼田裕一郎氏
【モデレーター】
東京海上日動リスクコンサルティング主幹研究員 指田朝久氏

指田(モデレーター) 地域防災の現状を伺いたい。
望月 静岡県は1976年に東海地震の可能性が指摘されて以降、防災拠点となる学校などの耐震化を進めてきた。南海トラフ巨大地震では10メートル以上の津波が数分で到達するとされており、津波対策が急がれている。
静岡県第4次地震被害想定を策定し、県全体が被災地になりうる危険性を再認識した。アクションプログラム2013では津波に対して「防ぐ」「備える」「逃げる」の3本柱によって今後10年間で人的被害を8割減らすことを目標とした。新東名高速を契機に、防災・減災と地域成長を両立する地域づくり実現を目指している。

鳥羽 和歌山県は90年から150年に一度は南海トラフの地震と津波に見舞われ、毎年のように台風がやってくる。一昨年「津波から『逃げ切る!』支援対策プログラム」を改訂し、津波による死者ゼロを目指している。
情報伝達の多重化、和歌山県津波予測システム構築を進めた。水害対策では避難勧告等の判断・伝達モデル基準策定、和歌山県気象予測システムなど。市町村支援としては災害時緊急機動支援隊を創設した。
総合防災情報システムは見える化し、災害対応活用型へと再構築を図った。自衛隊などと連携した実践的な防災訓練も重ね、「稲むらの火」の濱口梧陵さんに恥じないように取り組んでいく。
臼田 情報について、共有するための技術や制度と活用手段・ツールを研究している。eコミュニティ・プラットフォームは、国や自治体、研究機関などの情報に、地区住民が自分たちの情報を加えて防災マップを作るシステム。行政と住民側とで、お互い把握していない情報を認識できる。地区防災計画に生かしてほしい。
災害発生時、市は国や県、住民からの情報を集めて意思決定し、外部と情報共有して活用する対応が必要だ。組織間で状況認識を統一することが効果的対応を可能にする。
なお、災害現場では紙による情報提供が非常に有効だ。
指田 地域防災の一番の課題はなにか。
望月 津波に対する避難意識が薄らいでいる。高齢化地域では避難支援者が不足している。
鳥羽 高台移転などはまだ手つかずだ。耐震化率も低い。県民意識の啓発が必要だ。
臼田 緊急時、自治体はなんとか自分たちでやろうとしがち。支援体制が課題だ。
指田 自分の自治体だけでは限界がある。自治体にも業務継続計画が求められる。「受援」が重要だ。
鳥羽 受援体制として関西広域連合がある。また、総合防災情報システムは市町村の災害対策に活用できる。
望月 静岡県には東海4県、関東1都9県という二つの枠組みがある。東日本大震災では岩手県大槌町・山田町に職員の長期派遣を続けている。
指田 協定などに盲点はないのか。
臼田 限界まで自分たちでやろうとして、支援要請が遅れてしまう。基準を超えたら要請なしで支援できる仕組みが必要だ。
指田 自治体と企業との連携も重要だ。
望月 古い協定は見直しも必要になる。協定を結んでいる企業との意見交換会を毎年開催している。
鳥羽 在庫備蓄に関して、県で購入した紙おむつや哺乳瓶、生理用品を社会福祉法人などに置き、使った分を補充してもらう「ところてん方式」を導入している。
臼田 食料支給協定に基づいて2000人分を要請しても届くまで2日間かかったという例もある。実態に即した訓練を通じ、実効性のある協定とすることが重要だ。
指田 企業への働きかけはどうか。
望月 企業の安全性確保、BCP、地域貢献の3種類の啓発資料を作成した。
指田 情報共有について望むことと、地域防災についての注力点を伺いたい。
望月 静岡県の防災GISで、地域の危険性を確認してほしい。防災先進県との自負のもと、今後も訓練や教育を重ねていく。
鳥羽 7VIEWのように情報が自動的に入る連携の仕組みは有効だと思う。来年度は事前復興計画策定に着手する。
臼田 情報共有の一番の課題は組織間の壁をなくすこと。我々は研究にとどめず、実社会で使える成果を出していきたい。
指田 情報共有、連携、訓練、実効性確保など、土台はできてきた。次は人が関わる部分の積み上げだ。
ありがとうございました。