新産業促進検討会, 最新活動報告

水素ステーション実証 ~第10回新エネルギー促進検討会~ 2014年3月19日

モノづくり日本会議は新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)、三菱総合研究所と共催で2014年3月19日、都内で「第10回新エネルギー促進検討会~水素ステーション実証」を開いた。2013年度に最終年度を迎えたNEDOの水素ステーション実証を軸に、燃料電池自動車(FCV)普及のカギを握る水素ステーションの技術開発や今後の設置拡大などについて、水素供給・利用技術研究組合(HySUT)、エネルギー事業者、機器開発企業などが登壇して多角的に検討した。


司会あいさつ
4大都市圏から整備

新エネルギー・産業技術総合開発機構 新エネルギー部統括主幹 渡辺重信氏

エネルギー環境の変化に伴い、自動車の技術や燃料の多様化が世界各国で見られる。特にFCVはエネルギー効率が高く、大気汚染物質の排出がないなど、究極のエコカーとして期待され、自動車各社は2015年から一般販売する準備を進めている。
 
普及には水素ステーションの整備が不可欠だ。まず15年までに4大都市圏中心に100カ所整備する準備が進んでいる。水素ステーションは超高圧の水素を取り扱うため技術的なハードルは高く、整備コストもかかる。安全性を担保した上で、ビジネスに参入する事業者を増やして競争を促すことも必要だ。

ステーション17カ所でデータ蓄積

JHFC3プロジェクトの概要紹介

水素供給・利用技術研究組合(HySUT) 技術副本部長兼FCV・インフラ実証部長 池田哲史氏

HySUTは2015年のFCVの一般ユーザーへの普及開始を目指し、試験・研究を通じて、事業成立と社会的受容性といった課題解決のために、民間各社が09年設立した技術研究組合であり、現在19社・団体で構成している。FCVが社会から受容されるための活動なども行っている。
 
11年からNEDOとHySUTの共同研究として水素ステーション実証プロジェクト「JHFC3」が進められた。JHFC3では、水素を圧縮し、貯蔵し、70メガパスカルという高圧でFCVに充填するための技術課題に取り組んだ。ステーションには水素を別の場所で製造し輸送する「オフサイト」方式、ステーションで製造する「オンサイト」方式がある。
 
エネルギー各社が中心となり実証ステーションの運営を、自動車メーカーが試験用のFCV、FCバスを提供して実証を進めてきた。JHFC3では地方の4カ所を合わせ17カ所のステーションにおいて、13年度までの3年間、着実にデータを蓄積した。
 
一方、民間各社は15年を普及開始時期と位置づけ、100カ所程度の商用ステーション建設を目指している。13年度からは経済産業省による新たな補助事業も開始され商用ステーションの先行整備が加速されている、JHFC3で得られた成果は、これら商用ステーションの建設運営にいかされるはずだ。

身近なエネルギー拠点を活用

ガソリンスタンド一体型水素ステーションにおける実証実験

JX日鉱日石エネルギー 研究開発本部研究開発企画部水素事業化グループマネージャー(開催当時)前田征児氏

HySUTの組合員として、NEDOから支援いただいて「ガソリンスタンド一体型水素ステーション」の実証実験を行っている。水素はエネルギーとして、石油以外のさまざまな一次資源から作れ、資源のない日本にとって供給安定性で優れている。使用段階では二酸化炭素★(CO2)排出ゼロで環境適合性が良い。またためることができ、日本のエネルギー供給構造強化が期待できる。国としても技術開発に力を入れるべきだとして、学、産、官の協議が進められている。
 
JXは石油精製業を行っているが、ユーザーのすぐそばにあるガソリンスタンドというエネルギー拠点を生かし、これを水素の供給拠点に変え、安定的なサプライチェーンをつくるビジネスモデルを描いている。
 
NEDOとHySUTの共同実証事業の一環として、昨年4月に日本初のガソリンスタンド一体型ステーションを神奈川県海老名市に開設した。これはオフサイト方式で水素をトレーラーで輸送貯蔵充填する実証も行っている。また同年5月には神の倉(名古屋市緑区)ステーションを開設した。これはLPガスをタンクローリーで持ち込みステーション内で水素を作るオンサイト方式として市街地で日本初となる。
 
商用ステーション建設は始まったばかりだが、建設コストダウン、小型・省スペース化など課題は多い。配管金属の溶接が認められなかったり、建築基準法で建設地域や貯蔵量の制限を受けるなど、規制緩和が必要な課題も山積だ。

トラック移動式設置しやすく

移動式および定置式パッケージ型水素ステーションの開発

大陽日酸 開発・エンジニアリング本部ガスエンジニアリング統括部水素プロジェクト部副部長 片岡稔治氏

移動式の水素ステーションと、定置式水素ステーションに用いるパッケージ型のステーションの開発状況やコンセプトを説明する。
 
FCVの航続距離を伸ばすために車には70メガパスカルのタンクを積んでいるが、差圧で水素を充填するためステーション側は82メガパスカルになる。水素が材料の中に入ってもろくする水素脆化(ぜいか)のため、使用材料も制限される。ガソリンスタンドと同様の利便性を確保するために5キログラムの水素を3分程度でFCVに充填する急速充填技術も必要。ステーション運転者の作業量を軽減する工夫や、施工者の技量によって性能などが左右されない設計も必要となる。当社はディスペンサー、圧縮機、蓄圧器、冷凍機などをパッケージ化するために、各機器の省スペース、軽量化、コストダウンを図り、製作費および工事費を削減するコンセプトでステーションを開発した。
 
水素ステーションには例えばディスペンサーと公道を8メートル以上離さなければならないなど規制がある。そのため広い土地が必要で都心部でのスペース確保が難しい。解決策の一つはトラックの上に乗せた移動式ステーション。FCV普及初期は移動式ステーションが毎日基地に戻って水素を満タンに補充し、FCVが増えれば水素を持ってきてステーションの蓄圧器に充填して車に充填する。移動式ステーションの場所だけ確保すればよいというものではないが、定置式より設置しやすくなる。当社のパッケージ型は移動式、定置式両方に対応できる。

規制緩和でコストダウンを

海外ステーション技術の導入

岩谷産業 水素エネルギー部供給システム担当マネージャー 広谷龍一氏

当社は酸素、窒素、炭酸ガス、水素をはじめとする産業ガス事業を創業以来手がけている。水素に関しては、これまで70年以上にわたる産業用水素ガスの供給実績があり、加速する水素社会に向けたインフラ整備を独自のハンドリング技術で推進している。
 
水素インフラ整備に向けては産業ガス大手の独リンデと共同で展開している。欧米では英蘭ロイヤル・ダッチ・シェルや仏トタルなどが取り組み、水素ステーション導入は日本とほぼ同様な足並みで進んでいる。圧縮機、蓄圧器などが一体化したパッケージや、ガソリンスタンド一体型ステーションは欧米でも実証を始めている。見た目は似た感じだが、欧米ではセルフ充填、遠隔監視が多く導入されている。
 
もちろん内外の基準の違いも大きい。海外並みの基準が日本に導入されれば、もう少し安くてコンパクトなステーションが作れて、日本の技術を海外に売ることもできるはずだ。特にコストを左右するのは蓄圧器、高圧になった水素を冷却するプレクーラー、材料など。技術的には日本は高く、リンデからもバルブや部品などを海外に紹介するよう問い合わせがある。水素供給は数量が増えれば当然コストが下がる方向だが、同時に規制見直しによるコストダウンに官民協力して取り組んでいるところだ。

安価な水素燃料カギ

燃料電池自動車の普及展望

三菱総合研究所 主席研究員 志村雄一郎氏

自動車技術はかなり成熟してきていて、代替燃料車の普及にはインフラ整備が重要となる。天然ガス自動車の例をみると、1980年代に圧縮天然ガス(CNG)を代替燃料として重視したニュージーランドは、天然ガスがとれないが燃料を安く設定し、一時世界一天然ガス車が普及した。しかし政権が代わり補助が打ち切られ普及は続かなかった。
 
一方アルゼンチンは自国で天然ガスがとれ、燃料への補助はあまり必要なかった。また燃料を売る側のマージンも考慮するなど、インフラビジネスへの参入を支援したのでうまく回っている。シェールガスブームの米国に進出する事業者も多い。両国の例からの示唆は、水素も立ち上げ時に補助は必要だが、エネルギーのない日本としてはいきなり大きな補助ではなく、持続的に徐々に下げていく形にする必要があるということだ。
 
もう一つ例示すると、今ノルウェーは電気自動車が販売シェア12%を超えている。日産自動車の「リーフ」がそれこそ街でタクシーを見かけるくらいの感じで走っている。ノルウェーでは普通のガソリン車には高い関税があるが電気自動車にはなく、有料道路の通行免除などメリットも多い。各社のいろいろなモデルが市場にあることも大きい。
 
アルゼンチンのようにやはり燃料が安い国は普及が進む。日本も水素が安くできることを考えなければならない。