その他事業, 最新活動報告

モノづくり日本会議/IVI公開シンポジウム2016-Spring- 2016年3月10日

 インダストリアル・バリューチェーン・イニシアチブ(IVI)は3月10日、虎ノ門ヒルズフォーラム(東京都港区)で「IVI公開シンポジウム2016―Spring―」を開いた。モノづくり日本会議などが協賛。「日本のものづくりの未来を拓く!」をテーマに、IVIの取り組みについての解説と、ワーキンググループ活動の研究・実験成果が発表された。会場には450人の聴講者が詰めかけ、熱心に聞き入った。


日本のものづくりの未来を拓く!

第四次産業革命への対応 

  経済産業省製造産業局長・糟谷敏秀氏
自前主義から脱却 協業が重要

 IoT、ビッグデータ(BD)、人工知能(AI)の活用は製造業に大きな変化をもたらす。設計や製造では生産効率の飛躍的な向上が可能だ。サービスでは最適利用の提案や予知保全など、新たなビジネスモデルが期待される。IoT、BD、AIは手段。実現したい目標があるから、活用する意味がある。
日本企業も先行的事例を積極的に作り出さなければ、国際的な動きに乗り遅れてしまう。新たな付加価値を生み出すには自前主義から脱却し、協業することが重要だ。
政府は、IoTによりデータをビジネスに活用するユースケースの創出に意欲のある製造企業を応援する。必要なら規制・制度改革し、サイバーセキュリティーも強化する。国際標準化への貢献、中小企業への導入支援、IT人材育成も政策的に取り組む。また、国際協力については政府自らが進めていく。
このシンポジウムを機に、IVIの活動がさらに加速することを期待している。

「世界へ発信!つながる工場」―本年度のIVI取り組み概要

  IVIビジネス連携委員長・堀水修氏(日立製作所)
モデル作り、16WGが実証実験

 IVIは、モノづくりとITが融合した新しい社会をデザインし、多くの企業が等しくイニシアチブをとるためのフォーラムだ。”人“が中心となったモノづくりが、IoT時代にどう変わるべきかを議論し、バリューが世界の隅々に行きわたるしくみを目指して活動している。
 デジタル化が進んだ時代では、多くの工場、現場が「つながる」しくみが必要だ。そこで、デジタルとアナログ、競争領域と協調領域という境界について、それぞれの企業で再定義する。同じ課題を抱える他の企業とすり合わせして、つながるためのリファレンスモデルを作る。ここでの考え方が、共通部分を取り出し個別の差異を認める「ゆるやかな標準」だ。
 モデル作りは、まずどんな業務があるのかシナリオを描く。シナリオはどんな場面なのか、その場面で誰がどんな活動をするのか、その活動はどんな作業がなされていくのか。作業に必要な情報、作業から生じる物事や情報はどうなっているのか。具体的な事例をいくつも見ていくと、共通する作業や情報があることが分かってくる。
 業務シナリオに取り組んだのは20の作業グループ(WG)。今回、複数シナリオがつながった超シナリオをセッションとし、16WGが実証実験を行った。

 目下、15年度のまとめとして、業務シナリオ解説書、ゆるやかな標準活用手引き、IVIリファレンスモデル辞書、ホワイトペーパー「つながる工場」に取り組んでいる。

ゆるやかな標準を用いた“つながる化”の実施手順―モデリングフレームワークの解説

  IVI標準モデル委員長・茅野眞一郎氏(三菱電機)
モノと情報の流れ明らかに

 「ゆるやかな標準」とは、IVIが提唱する「つながる工場」の実現手段だ。この”ゆるやか“の実現には、さまざまな環境下において適用可能な仕様の作成、実装に関する自由度の付与の2点が必要だ。これらをリファレンスモデルとして定義していく。
 接続仕様「に」合わせるのが標準仕様による規定だが、接続仕様「を」合わせるのがリファレンスモデルによる規定だ。さまざまな実装を許容し、利用時は提供モデルのままでも、一部変更しても構わない。
 業務シナリオの作成手順は、現状(AS―IS)の業務シナリオを作成し、あるべき姿(TO―BE)の業務シナリオをデザインする。この過程でライブラリーを利用する。
 まず、現状と課題、解決手段、目指す姿を記述し、業務シナリオを定義する。シナリオを場面へ展開し、「いつ」「どこで」「誰が」「何を」「どうする」と活動を定義し、場面ごとのモノと情報の流れを明らかにする。
 次に、あるべき業務の流れをデザインし、IoTによって得られる新たなデータをもとにモノと情報の一部を再デザインする。モノと情報の項目を定義して、業務全体のシステムをデザインする。

 「ゆるやかな標準」モデル辞書は業務シナリオWGから収集したモデルを標準化に向けた整理を進めている。また、「ゆるやかな標準」を活用するためのモデリング方法などを記載した手引書も発行する。

ドイツ最新事情レポート―インダストリー4・0の動向

  IVIエバンジェリストのアクセル・ザーレック氏
標準化でIICと連携合意

 インダストリー4・0(I4・0)では個別生産、一品もの生産を、動的に最適化された工程を選択し、自動化技術を使って実現しようと考えている。それには大量のインターフェースの標準化が必要だ。新たに生み出される価値としてマスカスタマイゼーション(ロットサイズ1)、サービスとしての製品提供、業務プロセスの革新が期待される。
 米国のIICは業務プロセス革新に焦点を当てているが、I4・0は技術的共通基盤構築という点に違いがある。独政府は社会全体の革新を目指すデジタル・アジェンダの9プラットフォームの一つに位置付けている。
 柔軟な生産システムでは、各階層が統合されたネットワーク型の分散アーキテクチャーへと進化する。新たなアーキテクチャーの主な構成要素は現存するが、リファレンスモデルとセキュリティーはまだこれからだ。
 I4・0の実装はとにかく時間がかかる。生産現場はライフサイクルが長いので、多段階の複雑な移行プランが必要だ。
 ドイツではI4・0が実現可能との認識が一般的だが、懐疑的な見解もある。人不在の完全自動化を目指すのか、標準化は時間がかかりすぎる、投資対効果が疑問だ、製造データのセキュリティーが課題だ、など。それに対して「他にどういう方法があるのか」と推し進めているのが現状だ。現在200以上のユースケースが公開され、実証が進められている。

 つい先日、I4・0とIICが標準化での連携で合意した。両者のフォーカスエリアは異なるが、互換性が保たれるようにしようというものだ。輸出を重視するドイツはグローバルな標準に特に関心が高いことが背景にある。

―IVI今後の取り組み― IVIプラットフォーム計画

  IVI理事長・西岡靖之氏(法政大学)
IT・サービス企業主体で設計

  IoTはモノがデジタルでつながった状態だ。製品も企業も”つながる“がキーワードになる。つながらないのは技術的要因ばかりでなく、企業文化の違いや利害関係なども要因になっている。IVIはつながるための場を提供することを目的としている。
 つながるためにはしくみが必要だ。関連する業務が相互に連携するためのしくみ、必要なデータを交換または伝えるためのしくみがプラットフォーム。これがなかったから今まではできなかった。
 つながるしくみを整えるため、IVIでは昨年12月にIoT現場ツール、データ管理ツール、通信サービス、クラウド管理といったITインフラ支援ツールを公募した。これらは今後拡充していく。
 
 どのようなプラットフォームが必要か。選定には複数企業がそれぞれ利害関係が対立する形で参画することが必要だ。個別の競争力の源泉はしっかり隠す「オープン&クローズ戦略」が組み込まれていることなども欠かせない。目下、16年度のIVI課題として「設備保全ビッグデータ」「人と現場の見える化」「企業間MES連携」「設計製造連携」など10のプラットフォームを候補としている。
 プラットフォーム整備事業は10のたたき台をそれぞれ参加企業がプラスになるように事前設計する。4月以降、プラットフォーム候補の選定と具体的な設計に着手する。この事業はIT企業、サービス企業が主体になる。

 IVIプラットフォームは「ゆるやかな標準」「しなやかなインフラ」「したたかな実装」をキーワードに、IT専門のサポート企業と協力しながら、それぞれの企業の強みが生かせる、海外とのネットワークも含めた展開にうまくつながるようにしたい。

セッション1:つながる工場のネットワークによる企業間連携

経験値共有しトラブル対応

  セッションナビゲータ・古賀康隆氏(東芝)

 つながる工場とはどういうものなのか。五つのWGでは、つながる工場のネットワークが実現できれば、それぞれのバリューチェーンでどんなことができるのか、実証実験に取り組んだ。
  
 設備トラブル情報をグローバルにつなぐことで、一つの企業のように経験値を共有して改善アクションを素早くしたい。遠隔地のアフターサービスをリモート化、充実させ、スピードアップしたい。中小企業同士があたかも一つの企業のようにつながり、モノづくりサービスを充実させたい。物流情報を製品倉庫情報のように活用することで、グローバルサプライチェーンの在庫をコントロールしたい。サプライチェーンでつながる企業を隣り合う工程のように反応させたい。
 これらのことが一度に実現されればどうなるのか。設備の改善アクションはスピーディーになり、遠隔地のアフターサービスもスピードアップが実現される。中小企業同士がつながってモノづくりサービスを提供できるようになる。物流情報クラウドサービスで安く、早く在庫を適正化できる。サプライチェーンのトラブルに各企業が一気に対応できるようになる。
 五つのWGが連携すると、設備、調達、生産、販売、物流、サービスというすべてのバリューチェーンがつながる姿が見えてくる。つながる工場、つながる企業によって、新しい顧客価値を生み出せる可能性が広がっていくだろう。
 
 ▽WG101 遠隔地の工場の操業監視と管理(NECほか)
 ▽WG402 遠隔地のB2Bアフターサービス(ニコンほか)
 ▽WG306 中小企業を中心とするつながる町工場(今野製作所ほか)
 ▽WG309 サイバーフィジカルな生産&物流連携(東芝ほか)
 ▽WG310 国内外企業間の生産情報連携による変動への対応(富士通ほか)

セッション2/IoT活用による新たな生産ラインマネジメント

効率運用 理想と現場の溝埋める

  セッションナビゲータ・小南泰三氏(パナソニック)

 このセッションは工場内の生産ライン、設備にフォーカスし、現実課題の解決を図るため、つながるメリットを追求した。解決策を模索する中でWGが分化していった。
生産ラインマネジメントについては各社に共通する課題がある。設備の生涯生産のトータルコストパフォーマンスを考慮したライフサイクルマネジメントができていない。「設備と設備」「設備と人」の連携活動における変化点データ収集ができていない。既存設備への情報収集機器取り付けは設備安定稼働や導入コストの観点からハードルが高い。設備故障や不良品発生の予兆が捉えきれていない。設備トラブル発生時に対策決定まで時間がかかり、ベストかどうかが分からない。
IoTがどう活躍するか、これまでいろいろ描かれてきたが、生産ラインの理想とする効率運用と現場実態にはギャップがある。WGは、設備のライフサイクルマネジメント、設備・製品の変化点データ収集、簡易なデータ取得と人への通知、予知保全につなげるデータ解析、トラブル発生時の動的管理をテーマに取り組んだ。
5WGの成果を組み合わせれば、より効率的な生産活動実現に踏み出せる。将来の可能性に向けて、製造業各社、ベンダーがIoTで共創し、協調領域を広げながら、より高レベルな競争領域に進めるだろう。

▽WG105 設備ライフサイクルマネジメント(矢崎部品ほか)
▽WG106―2a 設備連携によるリアルタイムな保全管理(オムロンほか)
▽WG106―3 保全データのクラウド共有とPDCA(NECほか)
▽WG106―2b リアルタイムなデータ解析と予知保全(オークマほか)
▽WG106―1 現物データによる生産ラインの動的管理(パナソニックほか)

セッション3/設計、製造、そして顧客をつなぐプラットフォーム

世界をつなぐプラットフォームへ

  セッションナビゲータ・前田智彦氏(富士通)

 このセッションでは設計、製造、サプライヤー、顧客をつなぐプラットフォームについての課題解決に取り組んでいる。
 設計から製造に至るECM軸は製品のバリューを設計するプロセス、サプライヤーから生産を経て顧客に至るSCM軸は設計されたバリューを利益に変換するプロセスだ。個々の要素システムは既に開発され、業務もツールにコンバートされてきているが、各プロセス間はうまくつながっていない。
 変種変量生産/変動ライフサイクルの時代となり、従来のシステムは追いついていない。プロセス間連携の課題だけでなく、業務とシステムの間もつながっていない。これをコンカレントに解決しようというのがIVIのアプローチだ。
 ここでは、企画設計と生産準備の間の「BOM連携」、生産準備と生産の間の「設計変更」、販売・物流と顧客の間の「個別受注」、サプライヤーと調達の間の「需要と調達」、調達と生産の間の「生産連携」の5テーマに取り組んだ。
 5WGがまとまることで、今までつながらなかったプロセスがつながるようになった。こうしたプラットフォームを活用してもらい、一つの大きなプラットフォームとしてさらにつながり、世界の設計、製造、顧客をつなぐプラットフォームへと広げたい。
 
 ▽WG208 設計&製造BOM連携とトレサビ管理(豊田中央研究所ほか)
 ▽WG108―3 想定外の状況に対応可能なMES―量産直前での仕様変更(デンソーほか)
 ▽WG403 ユーザ直結のマス・カスタマイゼーション(マツダほか)
 ▽WG207 生産技術&生産管理のシームレス連携―ロケーションフリーなものづくり(川崎重工業ほか)
 ▽WG108―2 企業を超えて連携する自律型MES(小島プレス工業ほか)

セッション4/IoTによる現場起点、人が中心のものづくり革新

簡単なしくみ使い業務改善

  セッションナビゲータ・堀水修氏(日立製作所)

 このセッションは人に焦点を当てている。経営者の関心事は新たに事業を拡大し、売り上げを増やし、利益率を上げることだ。
 これを達成するために、まず生産技術部門がロボットを導入し合理化を進める。ロボット導入にはノウハウが必要なので、IoTを使った利活用の姿を探った。次に生産管理。思った通りに数が流れないと、作業員が設備の状況を確認して対策する。ここで作業を見える化し、無駄を排除する。品質保証部門は不良の発生状況を調べ、不良の早期発見、未然防止に取り組む。
 安定した品質で生産できるようになったら、作業員の質の向上に取り組むことになる。たくみの技術の共有化、つまり、どうやってデジタル化するかだ。また、人の動作を把握し、作業環境の改善を進める。
 これらがつながれば工場内では良い製品が済々と流れるようになるので、子会社や協力会社など、外注が納期通りに安定した品質で納められるようにIoTで改善を指導する。
 経営者の思いに応えるため、いろいろな業務担当者が現場起点の情報を人中心に活用するというシナリオで実証実験に取り組んだ。ゆるやかな標準化を進め、リファレンスモデルを相互利用できるようになると、簡単なしくみを使うことでさまざまな業務を改革できる可能性が見えた。
 
 ▽WG204 ロボットを活用した中小企業の生産システム(安川電機ほか)
 ▽WG108―1 MESによる自動化ラインと搬送系、人間系作業の統合(神戸製鋼所ほか)
 ▽WG201 データ連携による品質保証(不良原因の早期発見、未然防止)(キヤノンほか)
 ▽WG211 人と設備の共働工場における働き方の標準化(トヨタ自動車ほか)
 ▽WG109 実績データによる製造知識の獲得(日立製作所ほか)