価値創造型サプライチェーン検討会, 最新活動報告

価値創造型サプライチェーンの構築 ~「いい製品」だからこそ売れていく仕掛けと仕組み作り~ 2014年6月6日

モノづくり日本会議(事務局=日刊工業新聞社)は2014年6月6日、東京・一ツ橋の如水会館で特別講演会「価値創造型サプライチェーンの構築―『いい製品』だからこそ売れていく仕掛けと仕組み作り」を開いた。自信のある製品なのに思うように売
れない・売ってもらえないと悩むメーカーは少なくない。そこで、業種・業態、企業規模の異なる4社の成功事例を交え、「価値創造」とは何か、創造した価値をどのように伝えるか、作り手と売り手がどのように協働するかを探った。


基調講演

価値創造型サプライチェーンはどのように作れるか

価値伝達作り手・売り手の協働不可欠

オラクルひと・しくみ研究所代表 小阪裕司氏

今の日本は「モノが売れない」と言われるが、生活者の購買行動をよく見ると、自分にとって価値の高いモノを買いたいと考えている。価値の高い商品は概して価格も高い。一方、消費財を製造するメーカー、さらには流通の現場では、自分たちでは価値があると思っている製品・商品が思ったように売れていないという。
 
なぜか。モノの価値が作り手から売り手へ、売り手からエンドユーザーに伝わっていないから売れていない。であるなら、商品の価値をしっかりと伝えれば、モノは売れるということだ。
 
商品の価値には、効果・効能・機能性といった認知的価値と、感性価値ともいう情緒的価値の2種類がある。最近の生活者は感性価値に重きを置いている。ただし、これは商品の機能性が満たされていることが前提だ。
 
「買いたい」「この店が好き」などの気持ちを生む脳の働きを高次情報処理という。これこそが感性である。ポジティブな情動を伴う感性に、いかに働きかけるか、どのような情報を与えるかがポイントになる。
 
一例を挙げよう。「エモーション・ド・テロワール」というワインがある。「3800円、仏ワイン、赤・フルボディー」というプライスカードの情報だけでは「飲みたい」にはならない。「このワインは・・・の4種類のブドウを使用しています」という情報を加えた場合では、商品説明はなされているが、やはり顧客には価値が感じられず「飲みたい」とはならない。感性への働きかけが足りないのだ。
 
そこで例えば「天才醸造家が仏政府に逆らってまで造ったワインとは。今フランスでは・・・」と価値を伝えてみると、初めて「それなら飲みたい」と思う人が増える。価値創造は、相手の感性にどれだけ情報を入れるかにかかっている。
 
製品に価値がありさえすれば売れると考えるのは間違いで、相手もその価値を認識しなければ、価値はないのと同じ。残るのは価格情報だけだ。
 
作り手が価値を込めても、マーケティング、販売の部分で価値創造がなされなければ、エンドユーザーには伝わらない。価値創造活動はサプライチェーン全体で行わなければ意味がない。
 
製品が持つ価値要素はたくさんある。価値要素を掘り出して、概念化・言語化し、顧客が価値と感じるように情報を整えて発信する。作り手が気づいていない価値もあるので、思考支援ツール(価値要素採掘マップ)の活用が有効だ。
 
感性情報をデザインして発信することが顧客に動機付けをする。さらに意思決定がなされて行動に結びつく。行動する人の数が増えれば売り上げが上がる。感性情報デザインと発信・伝達は作り手が主導し、売り手にもやってもらう。サプライチェーンの川下との協働が不可欠だ。
 
商品が売れるために必要なことは、まず商品の価値化・独自化。現状でも価値ある商品はすでにたくさんある。ただ、作り手の段階で価値化されていないことが問題だ。
 
もう一つが価値の伝達・再創造。買いたいと思ってもらう動機付け、価値創造活動が必要だ。
 
そして関係性のマネジメント活動が非常に重要だ。価値創造型サプライチェーンは流通、エンドユーザーと密接に結びつくことで成り立っていく。
 
価値創造活動と関係性マネジメント活動を続けることは、商品・サービスの開発やリニューアルにも役立つ。自社製品の評価、期待の方向性が手に取るように分かるようになるからだ。
 
いいモノ、価値あるモノが正当な価格で売れるようにするには、メーカーが主導し、売り手も巻き込んで、価値創造活動に取り組むことが重要なカギだ。いいモノが売れないと、いいモノを作る技術が日本から失われてしまう。それを後世に残すためにも、価値創造型サプライチェーンを構築していこうではないか。

事例紹介

その新製品はいかに発売後数年でドル箱商品に育ったか
価値をエンドユーザーに伝えるための仕掛けと仕組み作り

朝日ウッドテック取締役営業副本部長兼マーケティング部担当 
上野幾夫氏

複合フローリング材を主力商品とする当社のマーケティングは、当初は技術データに基づいての「説明する」だった。2002年に投入した「ライブナチュラル」が転機となり、機能説明だけでなく思わず人に話したくなるような、作り方のこだわりや素材の話などを盛り込んだツールを作成して感性価値を伝える「語る」に移行した。
 
12年には「ライブナチュラル・プレミアム」を発売。「語る」から、「体感」し「語ってもらう」ステージに進んだ。木味(きあじ)・触感の価値を重視し、大面積の靴脱ぎ体感の場を設け、床選びがワクワクする仕掛けを用意した。そして今、床そのものの価値を見つめなおしてもらうために「啓蒙(けいもう)する」ステージを向かえている。
 
通常のカラーフロアと比べ、ライブナチュラルが2倍、プレミアムは4―5倍の価格差があるが、感性価値をエンドユーザーに伝えるための取り組みを通じ、大勢の人に選ばれている。

全国の販売店をいかに「価値を伝える仲間」にしていくか
販売店を巻き込んだ価値創造型サプライチェーン構築

ロイヤルカナン ジャポン社長 山本俊之氏

ロイヤルカナンは南フランスに本社を置くプレミアム・ペットフードのメーカー。日本市場では5位につけている(富士経済調べ)。犬と猫を最優先に考え、健康状態や犬・猫種、サイズ、ライフステージに応じて細分化した多様な製品群を展開している。主要販路は動物病院、ペット専門店、ブリーダーなど専門チャンネル。製品価値を適切に伝えていただけるよう、栄養学教育を提供している。
 
流通環境の変化に伴って、中小規模のペット専門店は厳しい環境に置かれている。そこで「対面カウンセリングで最適なフードを推奨する」という販売方針を徹底するショップを会員とする認定ペットショップ会を組織するとともに、顧客の動機付け、絆づくりに主眼を置いた勉強会を実施している。
 
ショップに同じ思いを持っていただくことで、顧客にとっての製品価値が創造されると考える。

小さなメーカーがいかに取引先と価値創造を行うか
大手取引先と価値創造活動を行うための仕掛けと仕組み作り

上薬研究所社長 田中愼一郎氏

当社は霊芝(れいし)を原料とした漢方系素材を手掛ける従業員23人の小さなメーカーだ。この当社商品が大手ドラッグストアA社の年間推奨品の1品目に選ばれている。
 
商品の品質には自信があるが、世間で特別注目されている商品でもなく、ドラッグストアで1万円を超える価格は消費者、現場スタッフともにハードルが高い。そこでA社に、当社商品の販売を通じて現場スタッフの対面推奨力を強化できると提案した。「霊芝が売れれば、何でも売れる」ということだ。
 
商品を、消費者の抱えている問題を解決するモノとして、提案する「SGS話法」を指導した。対話を通じて「私はなぜ、霊芝を今、ここで買わなければいけないのか」という消費者からの質問の答えを消費者自身に気付いてもらう。この話法がほかの推奨品目の販売にも役立っている。良好な販売状況が続き、20年連続で年間推奨品に位置付けられている。

流通とモノづくり企業が共に価値を創造するには
商品開発からエンドユーザーへの働きかけまで一貫した協働の試み

ネットプライス NextJ推進室長 長島徹氏

当社のネット通販事業の大きな特徴に、メード・イン・ジャパンの高付加価値商品の開発ということが挙げられる。これまで、燕三条の「チタンタンブラー」「ニッパー爪切り」、泉大津の「着るショール」など、価値創造型のヒット商品が相次いで誕生した。商品開発に当たっては、メーカー自体や商品の価値発掘から始め、それを消費者にどう伝えていくかを検討する。価値の発掘は、小阪先生が開発した価値要素採掘マップを活用し、認知的価値、情緒的価値、心の充足体験、物語要素など、多面的に分析する。
 
目下、日本の伝統的・革新的な技術やノウハウを生かしたモノづくりを世界に発信する「ネクストJプロジェクト」を進めている。自信のある商品が売れない、商談は価格に終始、商品の提案方法が分からないなど、多くの中小メーカーで共通する悩み・問題を解決し、日本の産業の継承に貢献したいと考える。