ネイチャー・テクノロジー研究会, 最新活動報告

ネイチャー・テクノロジー研究会~みんなで考える心豊かなライフスタイルと、自然に学ぶモノづくり~ 2014年6月27日

モノづくり日本会議のネイチャー・テクノロジー研究会は2014年6月27日、東京・市ケ谷のDNP市谷田町ビルでシンポジウム「みんなで考える心豊かなライフスタイルと、自然に学ぶモノづくり」(共催日刊工業新聞社、大日本印刷)を開いた。石田秀輝東北大学名誉教授、下村政嗣千歳科学技術大学教授の講演に続いて、第2回「2030年の『心豊かな』ライフスタイル」コンテスト表彰式を実施。厳しい環境制約のもとで持続的かつ心豊かな暮らしを目指すことの重要性について、認識を深める格好の機会となった。。


シンポジウム

21世紀・環境の世紀に心豊かに暮らすということ

地球環境制約の中で成長・発展
新たな枢軸世界に発信

地球村研究室代表東北大学名誉教授 石田秀輝氏

今私たちは、人と地球を考えた新しい暮らし方の”かたち”を真剣に考えなければならない。現代の暮らし方のままでは2030年ごろ、人間活動の肥大化によって、資源、エネルギー、生物多様性、水、気候変動、人口、食料という地球環境の七つのリスクが限界に達する。これまで、地球環境と豊かな暮らしはてんびんに掛けられるものと捉えられてきた。そうではなく、地球環境制約の上に、心豊かな暮らしを築くように転換しなければならない。

18世紀の産業革命の成功は自然との決別によってなされたが、自然は38億年間、持続発展する社会を創ってきた。完ぺきな循環を最も小さなエネルギーで駆動しているのが自然だ。我々はここから学ぶべきだ。

我々が取り組んでいるネイチャー・テクノロジー創出システムは、(1)2030年の制約因子の中で心豊かに暮らせるライフスタイルを描く(2)ライフスタイルを構成するテクノロジー要素を抽出(3)必要なテクノロジーを自然の循環の中から見つけ出す(4)地球に最も負荷のかからないテクノロジーとしてリデザインする―という4ステップで進められる。

環境負荷が現在の半分の1960年代に働き盛りだった現在90歳の人たちへのヒアリングをまとめると「自然に活(い)かされ、自然を活かし、自然を往なすことを楽しむ」「自然資本(ストック)を劣化させずフローとして使う」ということが浮かび上がってくる。

現代の暮らし方が依存型(完全介護型)なら、心豊かな暮らし方は自立型(自給自足型)といえる。依存型と自立型の間には、徐々に利便性が小さくなり、制約が大きくなる漸移的な境界が存在する。これを間(ま)というが、今は間が抜け落ちている。間を埋めて、自立型へと移行していくためのテクノロジーやサービスが必要となる。

省エネ・省資源のものを選ぶ、レンタルを活用する、気候に合わせて暮らす、大切に使い続けていくといったスタイルを選ぶ人は増えている。人々の意識に変化の兆しは現れている。今こそ厳しい地球環境制約の中で成長と発展の新しい枢軸を創り、それを世界に発信していこう。

バイオミメティクスって何?―何故、今、生物に学ぶのか
日本から「生物規範工学」提案
モノ・コトづくり体系化

千歳科学技術大学教授 下村政嗣氏

バイオミメティクスって、何だろう。バイオは生き物、ミメはミミック(擬態、物まね)、つまり生物模倣のこと。生物に学んだモノづくりは、絹糸をまねたナイロン、植物の種のトゲトゲにヒントを得た面ファスナーなど、古くから知られている。欧米では、今また、バイオミメティクスが注目されている。

 
バイオミメティクスというキーワードでインターネット検索をすると、化粧品、インナー、コンタクトレンズ、テニスラケット、家電製品、ロボット、自動車、航空機、建築デザイン、さらには都市の設計に至る、幅広い分野で使われている。バイオミメティクスという名の曲も作られている。「合唱付き叙情オーケストラとシンセサイザーとダブステップの偉大なるミックス」なのだそうだ。異分野連携だ。

2011年にドイツがバイオミメティクスの国際標準化を提案した。誰しもが、何を標準化するのだろうかと思った。

当初、英国は委員会の設置に反対、フランスは様子見であったが、12年にベルリンで開催された1回目の国際委員会には、両国とも投票権を持つメンバーとして出席。議長国ドイツからは、三つの標準化提案がなされた。

ドイツ国内では周到な準備がなされていたのである。その背景には、飛躍的に展開するナノテクノロジーと、生物学とりわけ博物学からの情報発信とのウイン・ウインな異分野連携がある。電子顕微鏡で初めて明らかにされる生物の微細構造が、新しい製品開発のヒントを与えてくれるのだ。わが国からは、異分野連携を促進する4番目の標準化の提案を行った。

ドイツ提案を読み込んでいくと「持続可能性」に向けた技術革新への強い思いに行き当たる。生物は進化適応によって、完全なる炭素循環社会、持続可能な社会を作ってきたのであり、生物の生き残り戦略に学ぶパラダイムシフトと技術革新が可能なのである。

今、日本から「生物規範工学」の提案をしている。”自然を学び、生物に学ぶ人間の叡智(えいち)”を「モノづくり」「コトづくり」の総合的エンジニアリングとして体系化するのだ。

だから、博物館に行こう。

コンテスト表彰式

第2回 2030年の「心豊かな」ライフスタイルコンテスト

コンテスト受賞者と審査委員ら

シンポジウムでは、講演の部に引き続いて第2回「2030年の『心豊かな』ライフスタイル」コンテスト表彰式が行われた。表彰式では審査委員長を務めた石田秀輝氏がコンテスト総評と上位三賞の作品についての講評を、また各協賛企業賞の作品について、それぞれの企業の担当者が評価ポイントなどについてコメントした。

 

表彰式に出席した受賞者からは受賞の喜びとともに、作品に込めた思いや、今後の取り組みについての決意表明がなされた。また、遠方に居住する二組の受賞者親子から届けられたビデオメッセージなどが会場で紹介された。(協賛=NECエナジーデバイス、花王、サンデン、積水インテグレーテッドリサーチ、積水樹脂、大和リース、大日本印刷、豊田鉄工、日本リファイン、YKK AP)

喜びの声

大賞 中尾和正さん
地域モノづくり継承

中尾和正さん

大変名誉ある賞をありがとうございます。私は以前、観光による地域活性化の仕事で全国を回って来ました。そんな中で意外に感動するのが、名所旧跡ではなく、地域に暮らす人たちが地域の素材でつくるモノづくりです。農家の有機米やブランド牛もいいが、農閑期の手仕事、カズラ細工や和紙がいい。造り酒屋の美酒、いいみそ・しょうゆ屋があればつくだ煮もおいしい。陶芸や漆、機織りや染色、鉄器やガラス工芸などの職人たちが地域で頑張っています。

 

心豊かな暮らしには、このようなモノづくりが、いかに継承されるかにかかっていると思います。働けるのがうれしい、モノづくりが面白くて仕方がない近未来にしたいものです。

優秀賞 森結加さん
だんだん楽しく

森結加さん

このようなすばらしい賞をいただきありがとうございます。父が持ってきたチラシを見てやってみようと思ったのがきっかけです。

 

どうすれば毎日欠かさず発電できるかなと考えていて、音ということがパッと浮かびました。最初はよく分からなかったけど、書いていくとだんだん楽しくなってきました。そして自信もついてきて、いい作品ができました。

審査委員長賞 宗官祥史さん
人として”いきいき”

宗官祥史さん

人はこれまで、暮らしを豊かにするために便利なテクノロジーを生み出してきました。今後は便利なテクノロジーに一方的に助けられるのではなく、人としていきいきできるような、テクノロジーとの良質な関係を築くことが重要になってくると思います。

今回このような賞をいただくことができまして大変光栄に思います。誠にありがとうございます。