モノづくり力徹底強化検討会, 最新活動報告

モノづくり力徹底強化検討会 2016年6月16日

 モノづくり日本会議は6月16日、東京・有明の東京ビッグサイトでモノづくり力徹底強化検討会「IoTを活用したモノづくり産業の今後の展望」を開いた。機器同士をつなぐ「モノのインターネット(IoT)」が脚光を浴び、そこで生じる価値は新たな産業革命を引き起こすと期待されている。今回はIoTを使ったモノづくり産業の新たな可能性や、スマートファクトリーの実現に向けた展望などを議論した。

Hannover Messe 2016 の傾向を見据えたスマート&コグニティブ・ファクトリーの実現

ロボと言葉で会話し協調

日本IBM技術理事・自動車産業CTO 北山浩透氏

  今年の独ハノーバーメッセは米国がパートナーカントリーということもあり、独「インダストリー4・0」と米「IIC(インダストリアル・インターネット・コンソーシアム)」の提携が報じられた。来年は日本もいろいろなアピールをするチャンスがあるはずだ。
 メッセでもインダストリアル・バリューチェーン・イニシアチブ(IVI)の西岡靖之理事長が話されていたことだが、ドイツの価値の源泉は工場で、国としての目標は工場の未来の標準形を作ること。米国はデータで、産業用IoTのビジネスを伸ばすことをターゲットとしている。それに対して日本は人の知識が価値の源泉で、未来の生産手法への効率的な移行を目指している、と。
 今回感じたのは企業単位の活動だけでなく、これらのイニシアチブの連携が進み、国と国が競うようになってきたことだ。技術的にはやはりAI(人工知能)が注目された。当社は「コグニティブシステム」と呼んでいる。また、人とロボットの共生が始まっていることを感じた。
 インダストリー4・0で語られる第4次産業革命だが日本企業は第3次と第4次の違いがわかっていないのではという議論もある。第4産業革命の本質は部門最適から企業の全体最適への進化で、お客様視点の価値提供を目的とするもの。日本企業は工場の中の部門にこだわり、バリューチェーンの共通的ビジョンをまだあまり持っていないのでは、という意見も聞かれた。
 インダストリー4・0をフレームワークでとらえると、企業が目指しているのは自社の製品・サービスをいかにデジタル化していくか、プロセスやバリューチェーンをデジタル化していく方向、異業種と新たなビジネスを始めるような革新的なデジタルビジネスモデルを作ること、という三つの方向性が見られる。
 そうした中、全ての企業にとってビッグデータの分析力強化が必要となってくる。そしてスマートファクトリーは、工場の中でいろいろなものがつながり、情報を集めて分析し、それをまたリアルタイムに制御に用いる方向へ進んでいく。

 当社は世界大手のEMSメーカーなどと協調してコグニティブファクトリーを目指している。人とロボットが言葉で対話して協調作業するものだ。人が話した内容から問題の最適な解決方法を学び、次回に起きたらそれを別の人にもアドバイスする、といった研究を進めている。

製造業におけるSmart Factoryの可能性と実現方法

経験が浅い人でも現場が回る工場に

日本IBMインダストリアル・サービス事業パートナー 安藤充氏

   スマートファクトリーについては当社だけで全部の領域はもちろんカバーできない。機械や通信をはじめとする機器メーカーなどとアライアンスを組み、パートナーシップを構築している。生産の現場だけでなく、モノづくりの需給計画をどうつくり、それを生産計画にどう落とし、日々の生産の指示にどう落とすか。そういった情報システムの動きは従来それぞれ別の部署がマネージしていた。それを全体的に合わせて検討していく、といったコンセプトがスマートファクトリーの中にはある。
 スマートファクトリーを実現するためにどんな仕組みが必要か。やはり工場長や工場経営をしている人にとって役立つものであるべきだと思う。そこで当社のようなITベンダーはどう貢献できるだろうか。まず工場の中にある機械のデータを集めて分析し、使えるようにする。シンプルだがものすごく多くのバリエーションがある。そこでたくさんのプロジェクトの中から標準的なモデルをつくって提供する。
 工場にはロボットをはじめモノをつくる設備があり、それぞれがちゃんと動いていなければならない。そしてラインが形成されて横同士をつながなければならない。さらに人が関与して工場は動くので、人をどう扱うか。この三つの観点がスマートファクトリーを考える上で必要だ。
 例えば産業ロボットメーカーとともに、自動車工場の中のパフォーマンスを向上させる取り組みを続けている。機械が止まれば損害になるので故障予知をする。不幸にして止まった場合は素早く復旧支援する。そして熟練者でなく若い経験の浅い人でも現場が回るようにしなければならない。
 もし工場が止まったら熟練者はおかしいところにすぐ手が打てるはず。そういう人でない場合は、まずなぜ止まったかを理解してもらう。それには過去の経験やログといったノウハウを生かし、それらを使って対応策を見つける。そしてどう対応してよいか分からない人にもガイドして情報を提供しなければならない。そこには分析が必要だ。経験やマニュアル、設計部門がつくった情報はデジタル化されていてもうまくつながっていないことが結構多い。それをつないでうまくプランニングすれば生産時間も短くなる。

 人の問題は重要で、工場に人が来たくないということになれば採用が難しくなる。そこで人にもケアする工場であることを打ち出して、楽しいと思っていただく。人と設備の共生ということだ。

【パネルディスカッション】
北山氏:トップの理解が重要
安藤氏:工場長の視点で提供

■パネリスト
日本IBM 北山浩透氏
日本IBM 安藤充氏
■コーディネーター
日刊工業新聞社 編集委員 斎藤実

 斎藤 新聞記者として「コグニティブ」という言葉の扱いはちょっと難しい。AIとも少し違う。ひと味違うコグニティブファクトリーとして、まず内外の実例をうかがう。
 安藤 鋳造品の検査工程でコストをかけ全数検査していたものを、データを集め、検査するものと最初からだめで弾くものとに仕分けた例がある。時間とコストを削減できた。コグニティブの観点でいうと、自動で弾くのでなく判断は人がする。条件の変化を意識して判断するのが人間。AIと人との組み合わせが必要だ。
 北山 私はIICのメンバーでもあり、顧客とビジョンづくりをやることが多い。IICでの考え方や国際標準などを顧客と共有し、理解が深まったところで現場をはじめ企業全体で集まり、どういうファクトリーを目指すかいっしょに考える。ただ実は、当社が集めたデータで何が得られるかという議論は結構ある。当社は分析チームを抱えデータサイエンティストが多いが、分析する手法や、結果をどうアピールするかといった側面の支援もする。顧客に自分たちのデータを分析する力をつけてもらいたいという考えもある。
 斎藤 ビジネスの観点として、どういうタイミングでどれだけコストをかけるのか、の判断は難しい。
 北山 現場で一生懸命分析して地道にコスト削減するアプローチと、トップがデジタルの重要性を理解してイノベーションの意思決定をする場合とで二極化している。現場からのボトムアップは大きな成果になかなかならず時間がかかるのが実態。多くのトップに直接会い、理解してもらわなければ。
 安藤 いつまでにどれだけの効果を得たいかという時間軸によって変わってくる。ただ、改善が悪いということではない。日々積み重ねたものにコンピューターを使って、というアプローチだ。
 斎藤 IBMのコグニティブシステムであるワトソンはモノづくりで何ができるのか。
 北山 金融、サービスで先行して製造業ではまだ事例が少ない。ワトソンは認知の仕組みだが、人や言葉の認知が得意だ。人とモノとサービスが対等な関係でつながって、新しいビジネスが生まれる。また、工場の中で言葉の情報を蓄えれば、匠(たくみ)の知識として活用できるかもしれない。
 斎藤 工場でもオフィスでもITを持ってきただけでは成果は上がらない。IBMの提案の仕方は。

 安藤 例えば工場長の視点で見て何が大切なのかという原点に立ち戻る。それに必要な方法を当社だけでなくパートナーとともに考えて提案する。