ロボット研究会, 最新活動報告

ビジネス構想力向上検討事業 ロボット研究会 2014年8月27日

「搭乗型」市場形成のカギ

搭乗型ロボットと車のロボット化に焦点を当て、市場拡大に向けた最新動向を探った

モノづくり日本会議(事務局=日刊工業新聞社)は2014年8月27日、東京都中央区の日刊工業新聞社内でロボット研究会「生活支援ロボット市場拡大に向けた最新動向―搭乗型ロボット市場形成の鍵を握る動きは今どうなっているのか」を開いた。生活支援ロボットをはじめとする非産業用ロボットへの注目が高まる中、搭乗型ロボットと車のロボット化に焦点を当て、安全技術開発や公道走行における課題と今後の展開など、市場拡大に向けた最新動向を探った。


非産業用 課題洗い出し

ロボットビジネス推進協議会 幹事 石黒 周氏

非産業用ロボットは、経産省によると2035年には5兆円の潜在市場があるとされ、日本の新産業分野として大きな期待を寄せられているが、その立ち上がりに手間取っている。

ロボットは「センシング、情報処理、駆動制御技術を統合した知能機械システム」と定義されるが、その事業化には重要な視点がある。それは顧客価値を高めるためにロボット技術を組み込む「ロボット化」という視点である。非産業用ロボットを単に大量生産型モノづくり事業の対象として捉えるのではなく、家電、自動車、福祉機器などの既存製品のロボット化やサービスプロセスのロボット化、インフラのロボット化というアプローチで考えてみることが極めて重要である。

ロボット研究会では非産業用ロボットを題材に、従来のモノづくりビジネスの課題を洗い出し、これからの日本のモノづくりビジネスのあり方を学んでいきたい。

生活支援ロボットの安全規格ISO13482と安全検証試験

人と共存、安全確保へ信頼性検証

本自動車研究所 ロボットプロジェクト推進室長 藤川達夫氏

生活へのロボットの導入はとりわけ福祉介護への活用で期待が高まっている。そこには人との共存というテーマがあり、安全が大きな課題だ。日本自動車研究所はNEDO生活支援ロボット実用化プロジェクトにおいて安全検証の手法開発に取り組んできた。
 

2014年2月、日本が基本構成を提案したパーソナル・ケア・ロボットの安全規格ISO13482が発行となった。機械安全の設計原則に基づくが具体的基準値までは示されていない。

安全についての考え方はまず、保護方策により、リスクを受容可能なレベルまで低減する。受容可能なレベルについては製造者が判断する。

合理的で系統的な保護方策を選択するため、リスク低減目標を定めリスクアセスメントを行う。リスクは「危害の酷さ」と「危害の発生確率」の関数。危害の発生確率は危険源に人がさらされる頻度・時間、危険事象の発生確率、危害回避・制限の可能性の関数だ。

こうしてリスク見積値を求め、基準を超えている危険状態・事象について、保護方策を講じ再リスクアセスメントする。

保護方策は3ステップ法に従う。本質的安全設計方策、機能安全を含む安全防護方策、使用上の情報の提供の3段階だ。本質安全が最優先とされている。

本質安全は構造の変更など危険源を取り除く対策である。本質安全による方策がロボットの機能を損なう場合には、機能安全を含む安全防護方策を検討する。機能安全は制御を使用した対策で、リスクは制御の信頼性に依存することになる。回路やセンサーなどのハード、制御ソフトの信頼性検証が必要となる。

保護方策に制御を取り入れた場合、リスクアセスメントから要求安全整合水準(SIL)を決定して実現させる。要求SILが高いほど部品、多重化、管理などに高い信頼性が要求される。

このようにして導入された保護方策は妥当性確認、検証を行う。そのための試験機関として設立されたのが生活支援ロボット安全検証センターだ。EMC試験、走行耐久試験、耐荷重・耐衝撃試験、障害物検知対応試験などさまざまな試験を実施し、信頼できるデータを提供している。

搭乗型ロボットの公道実験―規制の特例措置活用と制限

実験条件の緩和働きかけ

つくば市国際戦略総合特区推進部 科学技術振興課産業コーディネーター 鶴賀孝廣氏

「生活の質」の向上が求められている中で、労力や道路・環境などの負担が少なく、速度0から歩くよりも速い範囲をカバーするパーソナルモビリティ(PM)の重要性が高まっている。

PMの評価には社会的な有効性、歩行者等との親和性、安全面などについて、公道での実証実験が必要だ。しかし、PMは道路運送車両法や道路交通法によって、合法的かつ安全な公道走行が不可能。そこで公道実験に向け、構造改革特別区域法を活用した「つくばモビリティロボット実験特区」実現を目指した。

2009年11月につくば市が「搭乗型移動支援ロボット公道走行実証実験特区」を国に提案し10年1月に承認。つくば市、内閣府、警察庁、国土交通省で実施要件を協議し、11年1月に特区メニューに決定した。それを受け同年2月につくば市の特区計画を申請し同年3月認定、同年6月に公道実験が始まった。

実験は、実験エリアの表示、カラーコーンなどで通行範囲を明示した幅員3メートル以上の歩道のみ走行可能、現場責任者と保安要員の常駐などが条件とされた。特区で運行するロボットは保安基準緩和認定、ロボット用ナンバー(課税標識)取得、自賠責保険加入などの手続きが必要だ。道路使用許可も求められる。

この間、国交省が自動車に該当する特区ロボットは小型特殊自動車として扱うとしたり、警察庁が道路使用許可の対象行為にロボットの実証実験を加えたりと、国からの配慮もあった。

公道実験の結果、歩行者等へのアンケートでは一部否定的な意見もあったが、おおむね許容されていることが分かった。

実験開始から1年半経過後、実験条件緩和を要望した。カラーコーンの設置不要、横断歩道の搭乗通行は認められたが、保安要員の配置、搭乗者の運転免許所有義務については、引き続き要件とされている。

当初つくば市、産業技術総合研究所、日立製作所、セグウェイジャパンで発足したロボット特区実証実験推進協議会は2014年8月現在で36の企業や自治体、研究機関などが参加しており、関心が広がっている。引き続き実験条件の緩和を働きかけ、より実用に近い条件での実験を進めたい。

搭乗型移動ロボットの安全技術に対する取り組み―電動車いすをベースとした搭乗型移動ロボットの開発

「安心」面でもリスクレベル改善必要

アイシン精機 基礎技術開発部技術開発グループ第3チームチームリーダ 安藤充宏氏

アイシン精機には「”したいこと”を”できること”に」をコンセプトとした「キープエイブル」というシニア対象の生活支援ブランドがあり、自立支援として電動車いすを手がけている。この電動車いすをベースに、屋内外をシームレスに移動可能な近距離モビリティとして、最高速度を時速10キロメートルに拡張した搭乗型移動ロボットの開発を進めている。

電動車いすの最高速度の上限は時速6キロメートルと規定されている。速度の拡張には、搭乗者、歩行者の安全性と親和性の確保が不可欠だ。そこでまず安全分析を実施した。リスクを分析し、リスク低減策を立案し、再リスク評価を行った。

安全分析の結果、衝突や転倒などのリスク回避について、ロボットによる勝手な加速・回避操作は行わず、リスク回避操作は搭乗者が行うこととした。そして、搭乗者がリスク回避するに十分な余裕、リスク回避余裕を生み出すため、速度制限と注意喚起を行う。ここがロボットの役割だ。

速度制限機能は障害物のある方向への移動に対してのみ速度を制限する。センサーの情報から障害物を判定し、ジョイスティック操作量から進路予測する。予測進路内にある障害物までの距離からリスクを算出し、リスクに応じた速度制限を適用する。注意喚起機能は音・振動によって搭乗者に危険を報知する。

こうして開発したロボットを評価するため、生活支援ロボット安全検証センターとつくばモビリティロボット実験特区を活用し、性能評価、実証評価を実施した。

安全性試験では、衝突安全性・走行安定性試験で危害を定量把握し、必要な車両走行性能を確保。障害物検知・対応試験では、静止物・移動体に対する速度制限要求性能を確認・確保した。

特区での公道走行実験は日常生活と観光という二つの走行シナリオを設定し、公道走行におけるヒヤリ・ハット事例から技術改良の実施と仕様の妥当性を検証した。

公道走行実験では、搭乗者にとって危険・不快を感じるなど、安心面のリスクレベル改善も必要なことが分かるなど、収穫は大きかった。引き続き実用化に向けて取り組んでいく。