その他事業, 最新活動報告

第11回中部地区研究会 2016年8月3日

 モノづくり日本会議と、今年4月に開設70周年を迎えた日刊工業新聞社名古屋支社は8月3日、名古屋市・名駅のキャッスルプラザで「未来創生 ~"ツナガル"モノづくりを中部から~」をテーマに第11回中部地区研究会を開いた。IoT(モノのインターネット)の登場により、製造業を取り巻く環境が劇的に変化しようとしている。IoTの世界的潮流や企業の取り組みから今後のモノづくりのあり方を探った。

【主催者あいさつ】モノづくりの最新情報伝える

日刊工業新聞社社長・井水治博

 日刊工業新聞社名古屋支社が開設70周年を迎えた。自動車、工作機械、航空機などの製造業が多数集積する“モノづくり王国”の中部地区で、70年間にわたって支えて、育てていただいた皆さまに心から感謝申し上げる。
 この70年間、日本経済は山、谷を繰り返しながら成長を続けてきた。そうした中、中部地区には強固で、裾野の広い製造基盤がしっかりと残っており、日本の産業競争力の源泉となっている。

 本プログラムは「未来創生―“ツナガル”モノづくりを中部から―」と題し、産業界が関心を寄せるインダストリー4・0、IoTといったモノづくりの最新事情を伝えるべく開催する。当社は新産業革命をもたらすとされるIoT、ロボット、人工知能(AI)、ビッグデータについて報道していくとともに、100年間守った中小企業振興の旗を守り続ける。

【来賓あいさつ】IoTでつながる個人、社会

中部経済産業局 地域経済部長・岩松潤氏

 日刊工業新聞社名古屋支社の開設70周年を心よりお祝い申し上げる。
 6月に閣議決定された「日本再興戦略2016」ではソサエティー5・0、第4次産業革命といわれる概念が打ち出されている。これはIoT、ビッグデータ、AIといったサイバー技術とモノづくり技術を組み合わせることで、新しい価値創造やビジネスモデルを提案していくものだ。東海産業競争力協議会が中部地域の成長戦略をまとめた「TOKAI VISION」でも地域の産業集積によって、さらなる発展を目指している。

 本シンポジウムのテーマにあるIoTを用いた「つながる」とは単に産業界、サプライヤーとユーザーだけではなく、個人や社会がさまざまな面でつながることを意味している。産業界の皆さんにとって、将来のビジョンを考える上で、ひとつの参考になればと考えている。

世界で進むIoT・新産業革命と日本の未来 
―インダストリー4・0とインダストリアル・インターネット

セキュリティー技術にチャンス

三菱UFJリサーチ&コンサルティング 国際営業部副部長・尾木蔵人氏

 日本に並ぶモノづくり大国のドイツでは政府や企業、大学や研究機関が一丸となり、国家プロジェクトとしてインダストリー4・0を推進する。日本のモノづくりの心臓部である中部地域は、ドイツがなぜそこまでインダストリー4・0に注力しているのかを考えることで、これからの経営にヒントを得られる。
 インダストリー4・0やIoTの概念を突き詰めると、最終的にはソフトウエアやAIに行き着く。産業技術総合研究所(産総研)の専門家によると、30年前のコンピューターの計算速度は亀の歩みであり、現代は光の速さに相当するという。この進化をよく理解するのが米国シリコンバレーのIT企業だ。
 コンピューター能力の向上に加え、クラウドの登場もIoTに大きく影響する。30年前は、IoTを自社に採用するには、専用装置や機械などハードウエアへの投資が欠かせなかった。つまり投資ができうる企業体力が必要だったのだ。
 しかしクラウドの登場により、一般企業も世界の有力IT企業と同等のインターネット環境を手に入れられるようになった。このため、コンピューターなどのハードウエアを製造・販売する企業には厳しい環境変化が起き、変革が求められている。しかし一般企業から見ると大きなチャンスで、クラウドをいかに自身のビジネスに取り込めるかで今後大きな差が生まれる。
 センサーも進化し、小型で安価な製品の登場で競争が激化している。専門家の中には2020―22年の間に、世界のセンサーの年間生産量が1兆個を超える時代が来るとの見方もある。これからのビジネスモデルとしてはセンサーとAIを組み合わせ、映像を使った製造現場のIoTサービスは有用だろう。
 米IT企業は、IoTやAIの分野で世界のトップランナーとなるべく開発を加速する。独は得意のモノづくり現場でのIoT化の一手段としてITを位置付け、業界で主導権を握ろうと模索している。その一つとして独製造業は米IT業界との提携を進めており、米IT技術と独モノづくり力を融合する。
 中国もIoTに熱い視線を送る。人件費が高騰する中、独スマート工場の導入を検討する。ここに日本が参入することで中国以外の東南アジア諸国でも、日本が製造業をけん引する存在になってほしい。今、日本はグローバル世界の中で大事な局面を迎えている。
 世界でもAIを活用したチャレンジは道半ば。AIは万能ではなく、囲碁や掃除など特定の分野に特化している。人の脳に成り代わる域には到達していないのが現状だ。ビッグデータの活用もどの国も抜きんでていない。
 独はIoTを活用したモノづくりで先駆者を狙い、米IT企業はクラウドの活用で勝負に出ている。日本は強みのセキュリティー技術で、世界のトップランナーに入るチャンスはある。

 今後はITと製造業などの既存産業をつなぎ、融合していける企業が強い。AIデータなど新しい情報と、これまでの人・モノ・金を融合したサービスを打ち出せる企業が求められている。

IoTで変革する社会とモノづくり~つながるモノづくりに向けた日立の取り組み

ビジネス現場でAI活用を

日立製作所 モノづくり戦略本部担当本部長・堀水修氏

 日立製作所のモノづくり戦略を立案する部署として、IoTでモノづくりをどう強化できるか考えてきた。中西宏明会長は超スマート社会「ソサエティー5・0」の実現に日立が貢献しろと言っている。そうした社会でモノづくりに何が求められるのか、社内有識者によるワークショップを開いた。
 政治、経済、社会が10―20年後にどうなるかをテーマに、変化のドライバーとして重要になるものをメモにし、ボードに貼った。九つのドライバーを見つけ、対応策を練った。
 次に、製造業におけるIoT活用の課題と施策に移る。日本ではIoTは工場の業務を変える動きととらえられるが、全てが対象領域になると考える。製品を納めた後には顧客がいるからだ。
 IoT活用の課題を、会社を病人、元気を与える施策を料理に例えてみる。どんなに良い食材や調理器具があっても、うまくはいかない。そもそもどう体調が悪いのか把握する医師、それに合わせたレシピと腕の良いコックが必要になる。すべて対応できる人はおらず、スコープを絞り込むのが、産学連携組織「インダストリアル・バリューチェーン・イニシアティブ(IVI)」だ。
 生産性向上の取り組みに移る。各社は生産システムのデータをつなげて情報にするまではできている。
 だが、データを集めて喜んでいるだけでは、IoTはバズワードになる。解決したい問題が決まっていなければならない。将来を予見できている会社はトップランナーだ。
 モノづくりはインターネットから遠い存在だった。日立のある工場では、個別に作って運用していたシステムが約140もあった。それを集約する社内協調場を構築し、誰に聞かなくてもわかる場をつくろうとした。データとつながり、分析できるようになる。ITインフラの発達で、1カ月で構築できた。
 サービス開発・提供事例に移る。日立が開発したAIをビジネス現場で活用できないかと考えている。ハードウエアを販売するのではなく、サービスとして使ってもらう。AIは毎日少しずつ学習し、進化する。既存システムに接続し、状況に合わせて成長させる。
 例えば物流倉庫では、人の勘と経験頼みのため、ピッキング作業の渋滞が起きている。AIがデータを集めて理想的な作業スケジュールを組めば、作業を効率化できる。
 AIは改善したいことを与えると学習する。ビッグデータをうまく解析して当たりを付ける。いかに正確に要所要所を整理するかだ。日立が開発したAIは汎用性が高く、どんなデータでも分析できる。さまざまな課題を解決できる可能性がある。AIを自力で用意しなくても、試せる時代が来た。

IoEの動向とジェイテクトの取り組み

設備の進化とともに人も成長

ジェイテクト 工作機械・メカトロ事業本部理事 青能敏雄氏

 IoTに関する疑問と、ジェイテクトが提案できることを説明する。IoTやIoE(すべてのインターネット化)は、つながるがキーワードだ。つながって何がうれしいのだろうか。得られる情報よりも、新たな価値を創出することが大事になる。製造業ではやはり、生産性の向上が価値にあたる。
 つながると生産性が向上するのか。設備の状態を見える化できるが、それだけでは向上しない。設備の弱点を知り、改善する必要がある。つながって得られる情報からどう価値を生むかにおいて、全世界が協調しながらも競争している。
 IoE導入にあたってどんな課題があるのか。モノや情報をつなげる段階では、生産現場や制御機器の情報系ネットワークが乱立し、既存設備をつなげるのが難しい。
 ジェイテクトは光洋精工と豊田工機が2006年に合併して誕生した。実はIoEを推進するのにもってこいの会社だ。データを発信するセンサーなどの制御機器、付加価値を向上する工作機械、IoEを実証するモノづくり工場を持つ。
 工場全体の生産性向上には、設備だけでなく、人の部分も考える必要がある。モノも人もつなげるから、IoEなのだ。設備の進化とともに、人が成長する工場を目指している。
 人が介在し、人と設備が協調する。人の知恵が働き、設備とともに人が成長する工場が理想だ。新設設備に対するソリューションでは、点検、状態、寿命、生産実績、エネルギーをそれぞれ見える化する。
 お客さまは新設以上に既設のマシンに対して、見える化、予防保全、生産性向上に期待している。既存設備にも、アドオンの発想でIoEを実現する。見える化のソリューションでは、困りごとを見える化して弱点を改善するサイクルにより、生産性を向上させる。
 三つのIoEとして、寿命、異常などの兆候管理、品質の兆候管理、人も含めた生産性向上を提案する。品質のIoEでは、研削盤の加工サイクルの各種情報を収集し、研削焼けの兆候を監視する。生産のIoEでは、熟練者と非熟練者が混在するラインに作業指示画面を設置し、作業者の最適配置を可能にする。

 最後に、製造業のIoTはAIの確立などの進化を経て、間違いなくモノづくりを改革する。ジェイテクトは新しい工作機械はもちろん、既存設備にも展開できるよう、三つのIoEを進化させ続け、日本のモノづくりの発展に貢献する。