ロボット研究会, 最新活動報告

ロボット研究会 2016年8月22日

 モノづくり日本会議(事務局=日刊工業新聞社)は8月22日、東京コンファレンスセンター・品川(東京都港区)でロボット研究会「東京オリンピック・パラリンピックを通して世界に発信する日本のロボット活用社会」を開いた。2020年の東京オリンピック・パラリンピックを契機に、先端ロボットの社会実装を推進しようという動きが活発化している。ロボット国際競技大会の意義、自治体や企業の取り組みを紹介し、ロボット産業の今後の展開を探った。

《はじめに》ベンチャー企業のチャレンジが重要

千葉工業大学未来ロボット技術研究センター副所長 
モノづくり日本会議ロボット研究会コーディネーター 石黒周氏

 昨年1月にロボット新戦略が公表された。国は東京オリンピック・パラリンピックまでにサービスロボット市場を20倍にしようと動いており、つくる側、使う側とも非常に多くのチャンスがある。
 ロボットは「センシング、情報処理、駆動制御技術を統合した知能機械システム」だ。人型である必要はなく、ビルそのものが知能機械システムということもある。
 ロボットビジネスを成功に導く重要な視点は4点。まず、サービスプロセスやインフラの「ロボット化」というアプローチ。そしてインフラ、端末、サービスを統合的に設計するグランドデザイン。
 ロボット産業の創出にはベンチャーによるチャレンジが数多く生まれるようにすることが最も重要だ。また、自社だけで考えず、ITと機械など、よい連携がカギになる。

 オリンピック・パラリンピックを通して、日本のロボット活用社会を世界に発信することは、社会実装・普及の契機になるだろう

ロボット国際競技大会の紹介およびロボコンと展示の持つ今日的意義
―先端ロボット技術とロボット社会実装の加速

社会共創アプローチが不可欠

東京大学名誉教授 フューチャーセンター推進機構ロボット化コンソーシアム 佐藤知正氏

 2014年5月、安倍総理のロボット革命宣言を機に、政府としてのロボット戦略が動きだした。15年1月に20年までのビジョン、戦略、アクションプランをまとめた「ロボット新戦略」が公表された。
 その中で、ロボット導入・普及の契機とするため20年に国際ロボット競技大会を実施することが示された。競技会と同時に、実証実験やデモンストレーションも展開する。この先100年かけてロボットが世界中に広がっていくきっかけにしたいと思っている。
 昨年組織されたロボット革命イニシアティブ協議会のロボットイノベーションワーキンググループ(WG)にロボット国際競技大会のサブWGが設けられ、内容を詰めている。今年具体的な開催形式、競技種目を決定し、18年にプレ大会、20年に本大会を実施する。
 競技大会は技術飛躍加速力、社会実装加速力、国際性、社会訴求力・発信力、継続性、人材育成性という六つの柱で考えている。競技分野は社会的課題の解決につなげるため、産業用ロボットが対象となるモノづくり分野、生活支援や医療・介護を含めたサービス分野、インフラ点検を含めた災害分野の3分野で検討している。
 グランドチャレンジからロボティクスチャレンジに至る米DARPAの例でも分かるように、ロボットコンテストの実施はとても大きな技術の加速要因になる。支援予算をつけることだけが技術開発の促進手段ではない。
 展示も社会実装を加速する手段として、大事な役割を担う。ロボットを使うことがどういう新しい生活、生産を可能にするのかを示すことに意味がある。
 大切なことはロボットの技術開発と社会実装活動は同時に進めることで、地域が大きな役割を果たす。こうした社会共創アプローチが不可欠だ。コミュニティーの要件としては多様性、共同体意識、規模、継続性が求められる。相模原市の試みはよい成功事例だ。

 20年に先進地域の実装例を紹介し、その後日本中に展開し、ロボットを活用した社会システムの輸出につなげていきたい。

ロボット産業拠点の形成を目指す愛知県の取り組み

世界に誇れるロボ産業拠点に

愛知県産業労働部産業力強化推進監 岡田守人氏

 愛知県は企業の高い技術力を生かしながら、新しい産業への参入、人材育成などの支援を行うべく、航空宇宙産業とロボット産業の大きく二つの柱で産業振興を図っている。
 一昨年11月、ロボット産業を大きく育てていくため「あいちロボット産業クラスター推進協議会」を立ち上げた。ロボット産業の拠点形成に向け、課題や方策を検討する委員会と、具体的な開発・実用化に取り組むワーキンググループ(WG)で活動している。
 WGは医療・介護等分野ロボット実用化WG、製造・物流等分野ロボット導入実証WG、無人飛行ロボット活用WG。また、実用化に向けた検討と合わせて、安全技術開発の支援も行っている。
 愛知県は広いスペースが必要なドローンやモビリティー向けに愛・地球博記念公園、名古屋港南5区、矢作川浄化センター隣接地を実証フィールドとして用意、協議会会員や大学に限定して提供している。また、国立長寿医療研究センター内に「あいちサービスロボット実用化支援センター」を開設し、デモ、マッチング、技術相談などを行っている。
 昨年8月にはリハビリ遠隔医療・ロボット実証プロジェクト、無人飛行ロボット実証プロジェクトが国家戦略特区の近未来技術実証プロジェクト指定を受けた。それぞれ順次実証実験を進めていく。
 愛知県が推進する「知の拠点あいち重点研究プロジェクト」として、本年度はロボット分野でロボティックスマートホーム、介護医療コンシェルジュロボット、航空エンジン製造自動化、施設園芸作物の収穫作業支援ロボット、鳥獣害・災害対応ドローン、要素技術開発、リスクアセスメント支援システムの7テーマを採択した。これらは3カ年で実用化・製品化を目指していく。

 そのほか、愛知県IoT推進ラボの創設や愛知県立大学次世代ロボット研究所の設置、さらにはロボカップ2017世界大会の開催、2019年開業を目指した大規模展示場建設など、さまざまな取り組みを進めている。数多くのビジネスモデルを創出し、世界に誇れるロボット産業拠点を目指したい。

パナソニックが描くユニバーサルな未来社会とロボット

アクセシビリティーで新事業

パナソニック 東京オリンピック・パラリンピック推進本部 パラリンピック統括部主幹 黒川崇裕氏

 2020年の東京オリンピック・パラリンピックは選手村から8キロメートル圏内で多くの競技が開催されるコンパクトな大会を掲げて誘致したが、会場への移動・アクセスは改善が必要だと思っている。
 パナソニックは1988年からワールドワイドパートナーとして協賛している。我々の部署はオリンピックを通じて新しい事業を生むことをミッションとしており、新しいソリューション、顧客、パートナー、ビジネスモデルを組み合わせて、大会の成功に貢献するとともに、開発事業化を加速させていく。
 当社がどのようなことに貢献できるか。2年前にスマートトランスポテーション、スマートコミュニティー、スマートコミュニケーション、スマートペイメント、スマートセキュリティーという5スマートというコンセプトを発信した。昨年はアクセシビリティー、ウエルネス、スポーツのネクスト3というコンセプトを追加した。ネクスト3はパラリンピック、障害者対応を特に意識している。
 アクセシビリティーのソリューションを考えると、外国人だけでなく、障害者、高齢者、大きな荷物やベビーカーを持った人にも共通するテーマだ。例えばデジタルサイネージに光IDを組み合わせて、母国語による情報提供など、個人の属性やニーズに合わせた経路案内が可能になる。
 安全、快適、スムーズな移動として、電動車いす、電動カート、アシストスーツなどロボット技術を活用したサポートができるのではないか。また、空港において施設スタッフの負担を少なくするため、案内ロボットやアシストスーツ、カートの自動回収などを提案したい。GPSの電波が届かない場所では高指向性ビーコンの活用が有効だ。
 アクセシビリティーを機軸にロボット関連の新規事業を創出しようと考えている。子会社のアクティブリンクではパワーアシストスーツを開発・販売している。病院向けの自動搬送ロボット「HOSPI」の安全・自律的移動技術も活用する。

 4年後を契機に、ショーケース化を飛び越えて早期社会実装を実現したいと思う。