価値創造型サプライチェーン検討会, 最新活動報告

価値創造型サプライチェーンの構築~「いい製品・サービス」だからこそ売れていく仕掛けと仕組み作り~ 2014年9月2日

感性価値事例研究セミナー

モノづくり日本会議(事務局=日刊工業新聞社)は2014年9月2日、感性価値事例研究セミナー「価値創造型サプライチェーンの構築― 『いい製品・サービス』だからこそ売れていく仕掛けと仕組み作り」を開いた。「モノが売れない時代」と言われるが、エンドユーザーは商品・サービスに「価値」を認めれば、類似のものより価格が高くても購入している。そこで、価値創造に取り組む企業の成功事例を交え、「価値創造」とは何か、創造した価値をどのように伝えるか、作り手と売り手がどのように協働するかを探った。

基調講演

価値創造型サプライチェーン構築のための重点課題と具体的取り組み
エンドユーザーと接点 SC全体で価値創造

オラクルひと・しくみ研究所代表 小阪裕司氏

プライチェーン(SC)は原料からスタートしエンドユーザーに届くまでのモノの流れ。バリューチェーン(VC)はモノの流れに乗った価値の連鎖だ。生産者・製造者、流通、販売に関わる皆が一体となって価値の高い商品をいかにエンドユーザーまで届けるかというのが本来のSCとVCだが、本当にそうなっているのだろうか。

エンドユーザーの購買行動を分析すると、物の豊かさよりも心の豊かさを求めるようになって久しい。買いたい・買いたくないの判断は価格ではない。安いモノではなく、価値のあるモノが欲しいのだ。

商品価値には、効果・効能、価格などの認知的価値と、情緒的価値ともいえる感性価値がある。商品のプライスカードを見れば認知的価値は示されているが、感性価値までは分からない。

感性とは何か。美的価値のこととは違う。例えば「買いたい」「この店が好きだ」「この営業マンなら信頼できる」などの気持ちを生む脳の働きが感性だ。

顧客の頭の中に入力された情報が感性に働きかけることで、価値を認識させ、「買いたい」とう情動が生まれる。こうした感性価値の創造活動を行わないと、購買には結びつかない。

商品の作り手はさまざまな価値を込めている。エンドユーザーにまで価値を伝えるため、SC全体で価値創造に取り組まなければだめだ。

感性情報をデザインし、商品が持つ価値要素を掘り出し概念化・言語化して、客が「価値」と感じるように情報を整えて発信する。感性情報が届くことによって、動機づけられ、意思決定を経て行動に移る。行動する人の数が増えれば売り上げは上がる。価値を創造することで、売れるようになるということだ。

流通業の場合であれば、エンドユーザーとの接点でこの活動に取り組む。BツーBの場合も同じで、日々の営業活動から展示会などまで、ビジネスユーザーとのあらゆる接点で価値創造を展開していく。これをSC全体に働きかけていくことが必要とされている。

どのように価値創造型SC構築に取り組めばよいのか。

まず、価値の見直しと概念化・言語化。既存商品の顧客にとっての価値とは何か、価値の見直し、あるいは再創造を行うに当たって、価値要素採掘マップというツールを開発してあるので、有効に活用して欲しい。見いだした価値は、概念化・言語化し、価値伝道システムに落とし込む。

創造した価値をユーザーにまで届くようSCを通じて伝えなければならない。今、それができていないのであれば、価値伝道の仕組みを作る必要がある。価値伝道の仕組みを設計し、その仕組みを機能させるために価値伝道ツールを用意する。ツールができたら仕組みを試行し修正しながら、構築していく。

価値伝道の仕組みができたら、目的を同じくするチェーン関係者の同志化を図る。関係者同士、信頼関係がなければ、協力は得られない。そのため、絆づくり活動を行い、今までできなかったことをやろうという変革プロセスをデザインする。ここでは資本関係のない川下の取引先、販売店を巻き込んでいくのだから、当然さまざまな困難が生じてくる。

チェーンの同志化のために重要なことは、価値についての理解を共通認識とするため、チェーン内に「学びのシステム」を作ることだ。常に一緒に学ぶ場、機会を持つことで同志としての結びつきがなされるのだ。

モノとしてはいいのに売れずに死蔵されている商品はたくさんある。もし、それが絶滅してしまうことによって、優れた技術やノウハウが失われてしまえば、社会にとって大きな損失となる。エンドユーザーにまで商品の価値が伝わるように、SC全体で商品の価値創造活動に取り組んでほしい。

価値創造型SCの構築についてはこのテーマでの研究会を立ち上げ、今後も継続的に検討していきたいと考えている。

 

ライブナチュラルが価値創造を成し得たカギ―新たな感性価値マーケティング
床と家具 セットで見せる

朝日ウッドテック取締役営業副本部長兼マーケティング部担当 上野幾夫氏

当社の複合フローリング材は通常のカラーフロアと比べ、「ライブナチュラル」で2倍、「ライブナチュラル・プレミアム」では4―5倍の価格差だが、感性価値をエンドユーザーに伝えるための取り組みを通じ、大勢の人に選ばれている。

床材の選定は8割がハウスメーカーやデベロッパーといったプロユーザーの勧めで決まる。つまり、エンドユーザーに選ばれるためにはプロに商品を理解してもらうことがポイントとなる。

当社のマーケティングは、当初の技術データに基づく「説明する」から、機能説明だけでなく意匠性の視点など感性価値を伝える「語る」、さらには「体感」し「語ってもらう」ステージに進んできた。木味(きあじ)・触感の価値を重視し、大面積の靴脱ぎ体感の場を設けるなどの仕掛けを用意した。現在は床そのものの価値を見つめなおしてもらう「啓蒙(けいもう)する」ステージを向かえている。

5年ほど前から、異種同業者である大手国産家具メーカーA社と、木へのこだわりという点で共感しコラボが始まった。A社ショールームでの大面積コーディネート展示だ。天然木の持つ価値を具体的に示す絶好の場となっている。

床と家具をセットで見せることで大きな効果を生んでいる。お互いにメリットのあるウイン・ウインのコラボといえる。

地酒における価値創造型サプライチェーンはいかに構築されたか
「定番の革新」カギ■隔月情報紙を発行

竹村昭彦氏

飯田永介氏

司牡丹酒造社長 竹村昭彦氏

日本名門酒会本部長 岡永社長 飯田永介氏

飯田 岡永は130年続く卸業。日本酒の復興、日本酒を主体とした強い専門店づくり、消費者の啓発を目的に日本名門酒会を組織している。1700軒の加盟店、120のメーカーで構成する地酒販売組織。日本酒市場が縮小する中、お客を増やすことが肝要だ。

日本酒の重要な商品特性である季節性を前面に出した「一年52週の生活提案」を展開している。季節・生活のリズムに合わせ、秋のひやおろし、立春朝搾りなど、「日本酒が売れない」時期にも売り上げのヤマをつくり出せている。

 

「定番の革新」が大きなカギだ。革新し続けるものだけが強い定番になりうる。メーカーは各蔵の強みを伸ばし、定番に磨きをかけて欲しい。

竹村 メーカーとして価値の伝え方をもっと工夫したい。立春朝搾りは当初「朝搾った酒がその日の晩に飲める」としたがそれでは普段酒を飲む人しか価値を感じない。「招福、無病息災」をうたった方が飲まない人にも価値が伝わる。

以前は消費者に伝えることばかりを考えていたが、消費者と実際に接点を持つ販売店への情報伝達が大切だ。そこで名門酒会の加盟店向けに隔月の司牡丹時報(ボタンタイムズ)という情報紙の発行を始めた。

飯田 日本酒の価値創造は足元にある価値の掘り起こしだ。今後も取り組みを続けていく。

価格競争からの脱却を果たした価値創造型法人営業とは
見込み客との絆づくりに力

キングラン東海 社長 原田浩氏

当社の事業は、カーテンメーカーから生地を仕入れて自社で縫製加工し、病院や老人ホーム等にリースし、定期クリーニングを行うこと。メーカー、販売店、商社という三つの側面がある。福祉用具のレンタルも手掛けている。

当社はこれまで、価値創造、顧客創造の大きくは二つの柱で取り組んできた。

価値創造では、サービスの価値を顧客の視点から見直し、当社の独自性が伝わるようサービス名を従来の「カーテン・メンテナンス・リース」から「カーテン管理システム」に変更。その価値を伝えるツールとしてパンフレットも作り直した。また、病室での患者との関わりなど、情緒的価値の発掘にも進めた。

顧客創造では、キングラン通信という月1回、16ページのニューズレターを発行している。既存客ばかりでなく、見込み客との絆づくりにも力を発揮している。

当グループのオリジナルカーテンは、性能・強度もさることながら、表面が柔らかく仕上がっており、コスト高だった。しかし製品の価値を詳しく伝えて「患者の枕元で使うならどちらがいいか」と問い、高くても採用していただいたケースもあった。

メーカーは顧客にとっての価値情報の提供が不可欠だと思う。それが価格競争からの脱却につながるからだ。