人材育成関連事業, 最新活動報告

産学連携による人材育成と高専教育の再発見~人材育成研究会~ 2014年9月9日 

モノづくり日本会議は2014年9月9日、東京・一ッ橋の如水会館で人材育成研究会「産学連携による人材育成と高専教育の再発見」を開いた。「産学協働教育」に向けた内外の状況を報告した上で、昨年包括提携協定を結んだ三菱重工業と国立高専機構から提携の成果や今後の方向性などを発表。さらに高専卒業者も交えたパネルディスカッションを通じて、産学連携のあり方や高専教育の成果などについて来場者に訴えかけた。


モノづくり若手人材育成のための「産学協働教育」を考える

企業に役立つ学生を育成

日鉄住金総研 コンサルティング事業部特別研究主幹 山藤康夫氏

人材育成研究会ではこれまで「グローバリゼーションと人材育成」「企業における人材育成」「産学協働教育」といったテーマについて議論してきた。そうした中から、例えば機械系製造業が求めるグローバル人材像として、「技術力」と「創造力」の双方のスキルを備えて新しい価値を生み出すことなどを探ってきた。企業は激化するグローバル競争を念頭に、新興国に負けない活力を持った人材を育成しなければならない。しかし一方で若手技術系人材に対し基礎学力不足などを懸念する声もあり、産業界は大学の理工系教育に対し国際水準の学力や海外インターンシップ拡充などを求めている。また企業側も求める人材の能力や学力について明確にしなければならないし、奨学金制度やインターンシップを通じて高校・高専・大学の人材教育に協力すべきだ。つまり産学協働教育によって、企業に役立つ学生を育成していくという考えだ。

今回は三菱重工業と国立高専機構の連携が1年を経過して、どんな成果を上げてきたか伺おうということが開催の発端。同時に高専教育という日本独自のスタイルの素晴らしさについても再認識してもらいたい。本日登壇いただく高専卒業生の国内外での活躍を見て、私は心から感動した。本研究会を今後のさらなる産学連携の必要性を考える機会としたい。

三菱重工・高専機構包括連携協定の現状

優れた生産技術者の育成に期待

三菱重工業技術統括本部ものづくり技術部技監・主幹PJ統括 大坂弘美氏

私は佐世保高専機械工学科の卒業生で、高専機構の運営協議員を務めている。また当社の技術教育改革の統括部隊である技術統括本部ものづくり技術部で、高専機構との包括連携協定の実行部隊の一員として加わってきた。そうした中から考えるのは、人間成長と教育の関わり方として、学校教育と企業教育が相互に補い合う体制作りが重要だということだ。

高専機構との包括連携協定の前提として、機構が実践的・創造的な技術者育成に向けて新しいカリキュラムを策定するなど独自性を持った取り組みを進めていることがあった。一方で当社は「次世代を担う人の育成に貢献する」ことを目標に掲げ、モノづくりの基盤を支える技術者の育成・支援を進めてきた。そこで昨年3月に協定を結び、若手人材の育成・強化を目指すこととなった。具体的な手段として当初国内外のインターンシップ、講師の相互派遣、共同研究などを想定した。

昨年度はこれからの具体的な取り組みについて協議した上で、意見交換や高専教育の現場の調査を行い、当方のマレーシアの肥料プラントへの海外インターンシップも実施した。さらに相互研鑽(けんさん)のメニューを考え、本年度は高専教員が当社の生産技術ワークショップに参加するほか、国内各事業所へのインターンシップも進めている。どうしても現場経験や企業の最新情報が少なくなりがちな教員の皆さんに、企業側が経験談を講義するなど支援している。教員側にはIE(インダストリアル・エンジニアリング)や生産管理の授業がほとんどないことから、企業が行っている教育の手法も提供している。

ここで製造技術と生産技術の違いについて考えたい。これは「技」と「術(すべ)」の違いとも言える。技は目的を果たすための手段で、単一解といったもの。術は手段・手法を体系的にまとめた「面」的なものだ。技術者教育としては製造技術者だけでなく、IEなどを取り入れ目的のものを効率よく作る生産技術者の育成を目指さなければならない。こうしたモノづくりを統括する人材の育成を高専に大きく期待している。

企業と高専との産学協同教育への可能性

産業に適応したカリキュラム提供

東京工業高等専門学校 校長 古屋一仁氏

高等専門学校は学校教育法で、深く専門の学芸を教授し職業に必要な能力を育成する目的が定められている。1962年に制度が創設され、現在全国に51校55キャンパスの国立高専が設置され、本科の在学生数は4万8000人以上だ。卒業後は就職、進学、編入学と多様なキャリアパスがあり本科の昨年の求人倍率は17・4倍である。

15歳からの5年一貫の技術者教育で、高校のような学習指導要領がないこともあり、柔軟で産業に適応したカリキュラムも提供できる。課題解決型の実践的教育が特徴で、何を教えるかよりも、学生がどこまで到達したかを重視して、目標とする最低限の能力水準や習得内容を明示する「モデルカリキュラム」といったものを、今後各高専が正式に導入していく。

また企業との産学協同教育を重視しており、51高専のほぼすべての学科・専攻はインターンシップを授業に取り入れ単位化している。企業への教員インターンシップも、オムロンの協力を得て始めている。特色ある取り組みとしては、3年次から合計10週間就業を繰り返し企業文化に慣れて理解を深める阿南高専(徳島県阿南市)、地元企業の協力を得て日常的に報酬を得ながら実践的な体験学習をする「企業書生制度」を設けた長野高専(長野市)、企業の優れた技術や製品を一般の人に説明したり社員と共同プロジェクトを進める「企画広報型インターンシップ」を実施する東京高専(東京都八王子市)などがある。

三菱重工との連携については各高専の製造実習の現場に、生きた技術を取り入れられる可能性に期待している。ロボットコンテストなどへのサポートや、IE、VE(バリュー・エンジニアリング)についての指導もしていただける。

また東京高専は2011年から地域社会を教育開発フィールドとして、例えば地域のお年寄りや介護施設に問題解決となるサービスや機器を作って使ってもらう「社会実装プロジェクト」に取り組んでいる。何を創り出すべきかを学生が考え、探し当てる。これは自分はイノベーションを起こせる、という自信になるはずだ。

パネルディスカッション

高専OB OGから見た高等教育の利点と課題
自由な環境の中チャレンジ

田中氏

大川氏

高専教育について卒業生を交えパネル討論を行った

■パネリスト
さくらインターネット 社長 田中邦裕氏
NTTコミュニケーションズ クラウドサービス部 大川水緒氏
東京工業高等専門学校 古屋一仁氏
三菱重工業 大坂弘美氏

■コーディネーター
日鉄住金総研 山藤康夫氏

山藤 今日は高専を卒業し、起業されたり企業の最前線で活躍されている若い二方をお招きした。

田中 舞鶴高専在学中の1996年に、レンタルサーバ事業のさくらインターネットを創業し、99年に会社設立した。当時は若い起業と言われたが、もっと大人になってからの方がリスクが大きいのでは、とも考えた。現在は大阪、東京、北海道の3都市に5カ所のデータセンターを展開。高専の自由な雰囲気に後押しされたと感じている。

大川 東京高専本科の時、チームを組んで全国高等専門学校プログラミングコンテスト(プロコン)に出場。専攻科ではマイクロソフト主催のITコンテスト「イメージカップ」世界大会で準優勝した。大きな思い出だ

古屋 いまは新しいサービスが生まれる時代。学校では基礎の学問を教えている。その上に自分のアイデアを出しチャンスをものにすれば学生時代に閉塞(へいそく)感も感じないはず。大川さんの場合、得意分野の異なる4人が集まり、チームワークを次第に身につけたことをよく覚えている。

大坂 私は高専にいた5年間はもっぱらスポーツ。時代は変わったと思う。動画で拝見した大川さんのプレゼンテーションは素晴らしいもので、どこでも高く評価されると感じた。

山藤 すべての学生がめざましい成果を上げるとはいかないのでしょうが。

古屋 彼らのような成果を、普通の学生にも経験できるようにすることは学校側の責任だと思う。中教審の答申でも「主体的な学びを」「生涯学び続けることの重要さ」といったことがうたわれている。高専はともすると成果を急いできた側面もあるかもしれない。カリキュラムの見直しなども進めていきたい。

大坂 理系学生の基礎学力の低下を心配している。大学などにも働きかけてはいるのだが、企業側としては入社後の若年教育が重要となっている。

山藤 高専教育の良さとは。

田中 自由な環境が印象的。実は周囲には落第した者も結構いて、自己責任で学ばなければならないと強く感じた。

大川 ロボットコンテストや組み込みマイスターへの挑戦といったプログラムが用意されていて、課外活動も含め、頑張る学生には先生方のサポートがとても手厚かった。

山藤 若い二人ですが学生時代を振り返って感じることは。

田中 やりたいことに没頭できた。寝る間を惜しんでロボコンやいろいろなことに挑戦した。

大川 私が高専プロコンに取り組み始めたのは5年生の時から。それまでは漫然と過ごしていた。もっと早く面白さに気づいていればよかった。