新産業促進検討会, 最新活動報告

NEDOのIoT戦略と最新技術開発動向~第1回新産業技術促進検討会~ 2014年9月3日

モノづくり日本会議(事務局日刊工業新聞社)は2014年9月3日、東京都千代田区のホテルグランドパレスで第1回新産業技術促進検討会「NEDOのIoT戦略と最新技術開発動向」を開いた。センサーネットワークやモバイル端末の普及、通信コストの劇的な低下などを契機に、多様で膨大なデータが生成・流通するIoT(Internet of Things=モノのインターネット)の世界が広がりはじめている。本検討会では、技術ロードマップを中心とした新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)のIoT戦略に向けた取り組みと最新トピックスを紹介・解説し、IoTとIoTの根幹技術となるCPS(Cyber Physical System)の今後の展開を探った。

今後のIT課題と挑戦

CPS共通基盤化コスト低減

新エネルギー・産業技術総合開発機構 電子・材料・ナノテクノロジー部長 岡田武氏

国内ではエレクトロニクスの衰退・悲観論があるが、全要素生産性(TFP)分析によって、世界の経済成長力の源泉はITであることが分かる。ITの生産と活用は日本経済の成長に必須だ。

実世界を取り巻いて、NEDOが取り組むデータの取得・分析、ネットワーク化、制御の各技術をシステム化すると、CPSという体系でまとめられる。Industry4 .0の基盤もCPSであり、「CPSでコトづくり」は有力な成長戦略となる。この実現には業界を挙げたCPS共通基盤化によるコスト低減も欠かせない。

ハイリスク研究、オールジャパンによる産学・産産協業、標準化・基盤共通化によるコスト低減、ロードマップ作りなど、自社資源だけではできない課題に挑戦する機会を提供することがNEDOの機能である。

NEDOのIoT戦略

ロードマップ バックキャスト型描く

新エネルギー・産業技術総合開発機構 電子・材料・ナノテクノロジー部主任 間瀬智志氏

ロードマップ作りは産学官の川上から川下までの異業種の専門家の総合力を結集する作業だ。電子情報分野では、ハード開発とソフト開発の一体的推進を志向している。

ロードマップを活用し効率的・効果的に研究開発を進める。ロードマップだけでなく策定プロセスで得られた情報の蓄積や人的ネットワークも活用する。

ロードマップには定期的な更新が必要だ。電子・情報分野の技術進歩は非常に速いので、基本的には2年に一度程度の頻度で大きく改訂する。今回はロードマップ(フォアキャスト型)の改訂に加え、バックキャスト型ロードマップの策定を行った。

 
電子・情報分野のフォアキャスト型ロードマップは2005年から策定している。分野は大きく分けて「デバイス」と「情報通信」の二つであるが、情報通信は機能により「伝達・蓄積」と「情報処理・制御」に分割し、計3分野としている。次回は特許・論文の数や被引用件数などに基づいた評価情報を追記し、当該技術の隆盛を可視化することも含めて改訂する予定だ。

バックキャスト型ロードマップは想定する社会像の実現に必要な技術を見定めて、現在から取り組むべき技術をマッピングしたものである。政府方針で示されている社会課題を、クリーンで経済的なエネルギーシステム、健康長寿社会の実現など6分野に整理し、電子・情報技術が課題解決のボトルネックとなる11のテーマを抽出した。

バックキャスト型ロードマップ策定委員会では、11のテーマの共通基盤となる技術、中でも世界に先駆けてCPSの共通基盤技術の整備を進めるべきとしている。

NEDOのIoT戦略として、CPSの基盤技術を軸として推進する。次回は特定の課題3点程度を選定し、それぞれCPSと絡めたバックキャスト型ロードマップを描く予定だ。バックキャスト間の重複は協調領域として、バックキャストとフォアキャストの差分は技術課題として、取り組むべき技術を明確化していく。

IoTを支えるLSIの超低電力プラットフォーム

ユーザーフォーラムで検証

低電圧デバイス技術研究組合(LEAP)研究本部長 住広直孝氏

モノのインターネット(IoT)技術の普及にはLSIの消費電力低減が欠かせない。それには動作電圧の低減が最も効果的な手段だが、さまざまな理由から1ボルトからのさらなる電圧低下が難しくなっている。

LEAPでは、超低電力プラットフォーム構築のため、超低電圧で動作する、新材料を使用した抵抗変化型不揮発性デバイス(BEOLデバイス)や新構造のトランジスタ、配線材料・技術を開発している。これらによって消費電力が1桁以上小さなLSIが実現でき、IT・エレクトロニクスにグリーン化のインパクトを与えることになる。電池1本で長期間動作や環境発電で動作可能な電池レスLSI実現への道を開き、IoTのプラットフォーム技術としてさまざまな産業の新市場創出への貢献を目指している。

生産ラインと産業技術総合研究所のスーパークリーンルームをつなげた効率的な検証環境を構築し、プロトタイプの試作・検証とアプリケーション開拓を進めている。

また、想定されるユーザーと応用を探る議論を深めるため、「超低電力デバイスユーザーフォーラム」を立ち上げた。チップと評価概要、ボード、サンプルをユーザーに提供することで、実際にハードウエアやソフトウエアの設計を試行してもらう取り組みである。

IoT時代のデバイス技術を考える

高感度加速度センサーで早期診断

東京工業大学フロンティア研究機構教授 益 一哉氏

パーキンソン病はホーエン・ヤールの重症度区分で最も軽い1度から5度まで5段階に分類される。国内には3度以上の人が15万人、1度くらいの軽症の人が30万人程度と言われている。重症化予防のため、加速度センサーを活用した早期診断が有効といえる。

加速度はスマートフォンでも測れるが、早期診断にはより高感度のセンサーが必要だ。そこでCMOSチップの上にMEMSで金を用いた加速度センサーを作った。金を使うことで感度が高く、ダイナミックレンジの広いセンサーをつくれる。現在、トップデータで0・78マイクロG/(周波数の平方根)。ポリシリコンセンサーと比べて2桁近い高感度を得られた。

ナノG計測が小さいチップで可能になれば何ができるか。

映像を4K、8Kにすると3次元に見える。音の可聴域は20キロヘルツだが100キロヘルツの音が脳に直接刺激を与えるハイパーソニック現象というものもある。だから性能追求は必要だ。何が出てくるのか分からないということは、やるべきことがあるということだ。微小加速度で人の気配も測れるかもしれない。性能追求型の研究の意義を再認識してもよいはずだ。

モノをつくりたい人がつくれるようにすることが一番重要だ。設計ツールや製造環境提供なしには競争に勝てないのだ。

インテリジェントなIoT実現のためのデータ解析技術

分散インテリジェンス必要

Preferred Infrastructure リサーチャー 比戸将平氏

当社とNTT研究所が共同開発したJubatusはオープン・ソース・ソフトウエア(OSS)として公開している大規模リアルタイム機械学習基盤で、分散並列処理、リアルタイム、深い解析が特徴だ。古典的な統計手法に比べ確率分布の仮定などの制限が少なく、カテゴリー分類・回帰、クラスタリング、レコメンド・異常検知などに活用できる。

IoT時代では膨大なデータが生成される。デバイスの動作環境は千差万別で、あらかじめ全てを複雑なルールで記述することは困難なので機械学習が重要になる。

IoT/M2Mのアプリケーションは、蓄積型では家電や車、機械設備などでデータ収集、可視化、モニタリング、アラートなどに活用されはじめた。リアルタイム/オンライン処理系ではIoT/M2M向けのビッグデータ解析基盤はまだシステムには組み込めない状況だが、今後大きく発展する可能性がある。

多数のデバイスが分散しているIoTアプリケーションでは、中央集約型のデータ処理はできない。分散インテリジェンスが必要となる。

M2MやIoTの起源は20世紀末に登場している。一度は成功しなかったコンセプトも外部環境変化や技術進歩の組み合わせによって、非連続な価値上昇が生まれることを示している。

IoT関連 最新トピックス

ビッグデータ時代の計算基盤技術

技術共有・実質的な標準化カギ

東京農工大学大学院工学研究院先端情報科学部門教授 並木美太郎氏

ビッグデータの世界はデータの収集、解析、利活用の大きく三つで構成される。肝心なのは汎用性の高いシステム基盤をつくり、それを個々の応用に対して容易にカスタマイズできることだ。機器や先端要素技術の応用展開は多岐にわたる。クラウドとの連携でシステムが大規模化していくと、組み込み機器でも新しいハードウエア技術が必要となる。この点は日本の強みになるだろう。

実際にデータを収集する部分、CPSでいうセンサー部分はさまざまな機器に組み込まれていくが、データ蓄積・処理側とのネットワークは、従来のインターネットの枠組みにとどまらない。サービスアーキテクチャーとしてのネットワークシステム、ネットワークの仮想化、コンテンツベース経路制御・データ処理などの検討や、膨大なデータを効率よく読み解くのに適した解析アルゴリズムも必要だ。

大規模データの管理運用技術は一見地味だが、非常に重要。併せてシステム全体の高信頼性の確保も不可欠だ。ディペンダビリティー、セキュリティーといった視点で検討を深める必要がある。

産業的に関心が高いのは開発方法論。いちばんは誰でも使える・誰でもつくれるということだ。同時に、ソフトウエアの評価にも新たな指標が求められる。技術共有、実質的な標準化がカギだ。

IoT時代を切り拓くDynamic Clue Businessでの出口戦略

「感じて」「処理して」「つなぐ」

ディー・クルー・テクノロジース常務取締役CMO 藁科克彦氏

当社は各社のシーズを集結させて付加価値のあるセンシングモジュールを形にして、最終ユーザーを意識したIoTを構築し、新産業・新サービスを創出するつなぎ役だ。人をつないだ上で技術をつなぎ、ビジネスをつなぐ。人・技術・ビジネスの全てを「感じて」「処理して」「つなぐ」というキーワードで突き詰めている。

社会の現状は、国の組織、大企業、地域などいろいろなのりしろを失った分業社会となってしまっている。当社は、それぞれの分野から生まれる課題と真正面に向き合って、大連携・大協業時代に必要なのりしろとしての役割を担っていく。

例えば通信会社やクラウド事業者は大勢の顧客を抱えている。何かセンサーネットワークを活用したサービスができそうだと考えても、具体的なセンサー技術は分からない。一方、先端技術の研究者は出口であるサービスについてのイメージは持っていない。新産業創出には、新技術からのモノづくりへの要望、最終ユーザーにサービスを提供する企業の出口を見た目線での要望などを結びつけることが必要だ。

2020年のオリンピックを機に、課題解決先進国として、世界にアピールできる新産業・新サービスを実現したい。いくつもの出口を発掘するのりしろプロジェクトを実施していく考えだ。

IoT時代を切り拓くノーマリーオフ技術

全体最適で非動作時間を拡大

東京大学情報基盤センター長 情報理工学系研究科教授 中村宏氏

IoTは「いつでもどこでも」ネットワークに「つながる」ことの価値に期待が寄せられている。一方、コスト、電力、信頼性など克服するべき課題もある。構成要素の数が桁違いに増大するため、電力消費もシステム全体の信頼性低下も桁違いになる。そこでシステム全体を最適化するコンピューティングが必要となる。

システムとして動作中であっても、真に動作すべき構成要素以外の電源を積極的に遮断するのがノーマリーオフだ。NEDOプロジェクトのノーマリーオフコンピューティング基盤技術開発では、電源遮断しても記憶を保持する不揮発性メモリーと、電源遮断による低電力化という電源制御との相乗効果で低電力化の実現を目指している。できるだけ電源遮断するため、デバイス・回路技術で電源制御を細粒度化し、アルゴリズム・アーキテクチャーで非動作時間の拡大を図る。

NEDOプロでは参加機関が協調して取り組む汎用技術の確立と、それぞれが取り組む競争力ある応用開発とが密に連携して実施されている。

システムはノーマリーオフ動作だが、利用者やIoT上のアプリケーションにはオールウエーズオンとして見える。オールウエーズオンを実現するノーマリーオフはヘルスケアやスマートシティーで応用が期待される。