人材育成関連事業, 最新活動報告

ドイツのモノづくり人材育成教育制度・企業の取り組み 2014年9月12日

デュアルシステムとデュアルスタディー

人材育成研究会

モノづくり日本会議は2014年9月12日、東京・一ッ橋の如水会館で人材育成研究会「ドイツのモノづくり人材育成 教育制度・企業の取り組み」を開いた。ドイツの製造業の強みを支えているといわれる「デュアルシステム」「デュアルスタディー」について、現地視察の報告を交えて報告。さらにドイツの現地企業を傘下とする日機装、ドイツ企業の日本法人であるボッシュがそれぞれグローバル展開に際しての人材育成への取り組みなどを紹介した。

デュアルスタディからグローバル競争を考える企業の必要とする教育を目指すドイツ

理論と実践 企業・大学が協力

日鉄住金総研 コンサルティング事業部 特別研究主幹 山藤康夫氏

ドイツでは製造業においていわゆる「インダストリー4・0」という概念が注目されているが、そこには教育・訓練と継続的専門能力の開発が不可欠とされている。私はドイツのバーデン・ヴュルテンベルク(BW)州を視察してきたので、それを踏まえて話したい。

まずドイツの教育ではほぼ高校生の段階で、2系統教育訓練併進制度とも呼ぶべきデュアルシステムが定着している。これは職業学校などで週に1ないし2日の授業を受けるのと並行して、企業で週に3ないし4日の職業訓練や講義を受ける仕組みだ。職業に就くための教育といってよい。

制度の背景には、日本とはやや異なる、職業訓練の社会的地位の高さがある。企業側からすると実務訓練と指導によって、チームワークや協調性に優れた高品質の労働力を確保できる利点がある。そのため企業側は費用を負担するし、産業団体も理数系教育の普及啓発活動として支援している。

職業学校などの1年次で訓練した上で、2、3年次に実際の工程についてもらえば、学生はその仕事に合っているのかが卒業前の早い段階でわかり、労働力のミスマッチ減少にもつながる。

このシステムの大学版ともいえるデュアル・スタディー大学(DH)をBW州で視察したが、これからドイツ全体に広がるのではないか。いわゆる普通の大学、専門学校から発展した応用科学大学、そして協働教育大学ともいうべきDHの、3種類の大学が定着していくとみる。DHは就学期間が3年で、学生は大学で学ぶ一方で、給料を得て企業では社員としてのステータスがある。企業と大学が協力して、理論の習得と実践を並行して進める形だ。

DHについては産業界が積極的に関与し、ニーズに合って実践経験のある卒業生確保に役立てている。産業界が教育に密接にかかわる風土は日本も学ぶべきで、職業に就くための教育が受けられるデュアル・システムや、長期のインターンシップなどを検討すべきだろう。

子会社におけるドイツ式人材育成とその横展開の可能性

就職時点で即戦力
独企業「良いモノつくる」こだわり

日機装 取締役常務執行役員経営企画部長 中村洋氏

ドイツのバーデン・ヴュルテンベルク州、シュトゥッツガルト郊外にあり、ポンプなどを生産している子会社・LEWA社が実際にデュアル・システムを導入している。

まず前提として、日機装はポンプや航空機部品、医療機器などさまざまなものをつくっている。各分野に共通する点は、事業の市場規模がさほど大きくないこと。その中で独自の技術を磨き、市場の1位や2位を目指す。特殊性を追求した技術、そして品質が当社のビジネスモデルの中心にある。年商は1200億円ほどで大手企業のような資本投下をするのでなく、専門的な技術を持った製造現場の人材や、専門性の高い営業の人材の育成が欠かせない。

LEWAに限らず米国やアジアで買収した企業も、それぞれ特色があり、それを活かしている。そのため各企業は独立して制度も残している。

LEWAは社員1000人程度の典型的なドイツの地方中堅メーカーで、1952年に設立。ファンドを通じて2009年に当社が100%子会社とした。エネルギー業界向けの大型のポンプや、石油化学プラントの一部の設計・組み立ても行っている。同社も比較的小さな市場で特殊技術を発揮するビジネスモデルで、品質レベルは高い。日機装と合う会社と言っても良い。またカスタムメードでポンプを作る際、日本なら外注に出すような部品も内作するといったこだわりがあり、生産現場の優秀な人材を必要としている。

同社はデュアル・システムを積極的に活用している。高校生や大学生、社会人の実技の部分を企業が費用も含めて負担し、訓練を提供している、といえばわかりやすいだろうか。工場の一角には職業訓練専用のエリアもある。もちろん順次現場にも入ってもらう。

機械工を中心に毎年十数人を受け入れ、高校レベルのデュアル・システムの教育が3年半かかるので、常時40人程度が工場にいる。これは工場全体の1割程度でかなりの数だろう。卒業生はほぼ例外なくLEWAに就職する。就職時点で一定の技能や、モノづくりに必要な理論、社会人の心構えも身につけており、即戦力だ。

費用は最新の加工機械の償却も含めそれなりにかかるが、業績の波があっても制度をやめようという話は出ない。安定した人材確保だけでなく、職業訓練して雇用するということで、地域社会にも貢献している。

ただこれはドイツの社会に根差した制度で、国・地方自治体と連携のや費用負担の面もあり、そのまま日本に持ってくるのは難しいだろう。

LEWAを通じて感じるのはドイツ企業のモノづくりへのこだわりだ。良いモノを作ろう、ということが第一にある。

ボッシュにおける人材育成と教育の取り組み

幅広い経験を優先
ダイバーシティー 重要な経営戦略

ボッシュ 人事部門長 佐藤健氏

ここまでドイツでの制度などが紹介されたが、ドイツの会社が日本に来て、人材育成や教育にどう取り組んでいるか話したい。ボッシュグループは世界150カ国以上で展開していて、創業は1886年、日本に進出して104年になる。研究開発に力を入れており、グループで携わるのが4万人を超える。自動車機器部門の売上比率が最も大きいが、日本では中長期的には自動車以外の部門も拡大したいと考えている。

日本のボッシュは従業員が単独で5200人あまり。グループの人材育成は、全従業員を対象としている。全ての国、全ての職位レベルにおいてだ。広く全員に教育を行い、より責任の大きい業務を行うポテンシャルのある従業員はさらに選抜して育成する。

原則として専門性よりも幅広い経験を優先し、2年から5年のスパンでさまざまな経験を積めるよう異動し、日本からドイツや各国への海外派遣も重視して行う。

キャリアパスとしては事業部間異動、職種間異動、2年以上といった海外勤務経験、マネジメントの経験などのいくつかを踏まえていることが昇格の要件となる。日本では英語の能力も加味される。またリーダーシップや対人スキル、専門能力などさまざまな指標を定めて、従業員を評価する機会を年に1回設ける。

またグローバルで活躍できる人材を育成するために、海外での研修プログラムを各種設けている。希望者には異文化対人関係の能力向上のため、ロールプレーを中心とする研修も行う。

優秀な若手をマネジメント層に育成するためのJMP(ジュニア・マネジメント・プログラム)制度も、ドイツでは古くからあるが、日本では2010年から始めた。プログラムの期間は2年程度でその間に海外など幾つかの部門で経験を積んで、その後に評価し、マネージャーなど一定の役職に昇格してもらう。

このほかインターンシップは日本へは毎年100人弱を受け入れている。ドイツからが最も多いが、ホームページなどから受け付け、半年から1年程度実習してもらう。

またダイバーシティーはボッシュグループが重要な経営戦略の一つとして位置付けているものだ。当社の強みであるとも考えている。性別、国際性、世代、文化の四つの柱をもって多様性について考え、活動している。女性の活用や、多様な働きやすさをはじめ、意識改革を進めている。