モノづくり推進会議は9月2日、新潟市の朱鷺メッセで「地域活性化リレーシンポジウムin新潟」を開きました。塚本修関東経済産業局長と千野俊猛日刊工業新聞社社長が講演。「自社の強みを確立する」をテーマに行われたパネルディスカッションでは、エーワン精密取締役相談役の梅原勝彦氏、山陽プレス工業社長の檜垣昌子氏、ジェイシーエム代表取締役の中山立行氏の3人が会社の強みを披露しました。中小企業庁、関東経済産業局、新潟県が共催の「一日中小企業庁inにいがた」と連動する形で行われ、会場に約200人を超える企業関係者が来場しました。
関東経済産業局長 塚本 修氏
経済産業省で以前、今後のモノづくりのあり方を議論しました。日本の少子高齢化や資源制約問題だけではなく、地球規模の環境問題や南北の格差問題などを含めて、人類の抱えている課題を日本のモノづくり力の発信によって解決するという高い志を持って考えました。日本の「MONODZUKURI」というブランドを世界に発信しようという意気込みで検討しました。
世界で競争力を持って勝ち得るには、モノづくりのDNAや伝統的な力を持った地域にある技術力が非常に大事です。さらにグローカルに展開していくことで生き残れます。そういう発想が非常に重要ではないでしょうか。
製造業は国内総生産(GDP)の2割から2割5分、輸出の外貨獲得の93%を占め、日本はモノづくりによって成り立っています。日本の企業434万社のうち中小企業が99.7%です。従業員数で7割、付加価値で5割あり、中小企業の力をいかにつけていくかがポイントになります。
われわれは企業の活力を維持するため「サポイン」「新連携」「産業クラスター」「農商工連携」などの施策を展開しています。このうち、農商工連携では農業と商工業の連携を強めるため新しく法律をつくり、今年から拡大していきます。また、下請取引の適正化に取り組んでいるほか、中小企業の後継者問題について事業承継しやすい制度に改めました。
私が申し上げた点はつながる連携力を強化することです。皆さんの柔軟な思考と熱い情熱により、今、足元にある課題や壁に果敢に挑戦していただきたいと思います。明日ではなくて今が大切です。皆さんの努力に期待したいと思います。
日刊工業新聞社 千野 俊猛
日本のモノづくりは喫緊の課題に直面しています。原油や原材料の高騰を製品価格になかなか転嫁できず、モノづくり企業が苦しんでいます。製品価格を上げられず輸出額が伸び悩めば、日本は外貨を稼げなくなります。エネルギーや原材料、食糧を海外から買っている日本にとっては死を意味します。どうやってこの厳しい中で日本は生きていくのでしょうか。キーワードはエネルギー極小化技術と資源極小化技術。日本は技術力をバーゲンニングパワーにして世界と取引していかなければなりません。
こういった技術で日本は間違いなく世界一です。しかし、もっと開発しなければなりません。技術力があれば、石油も鉱物資源も食糧も交渉により安定調達が可能になります。こちら側が何も持っていなければ、言うがままに値段を上げられるだけです。
対応策は円高誘導と内需喚起です。輸出産業にとって大きな痛手ですが、材料費を安くするには一定程度の円高はやむを得ません。円高でも輸出できる国際競争力を培うしかありません。一方、内需喚起といえばこれまで公共工事でしたが、今は公共工事が減り地方は冷え切って疲弊しています。しかし、新しい内需産業を興せばいいのです。
例えば、国を挙げて太陽電池の開発をしたらどうでしょうか。燃料電池が必要なら投資するのもいいでしょう。環境対策や安全対策に使える公共事業はないのでしょうか。その中にモノづくりが入っていけるはずです。
日本はこれまで技術でどのようにつくるかを求めてきました。これからは、さらにモノづくりを通じてコトを興していく必要があります。その時すべきことのひとつが異業種交流や産学官連携です。そうした場として、モノづくり推進会議は全国各地でリレーシンポジウムや研究会などの活動を展開しています。モノづくり推進会議にご参加いただき、日本のモノづくりの未来を共に考え、議論し、行動していただきたいと思います。
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エーワン精密取締役相談役 梅原 勝彦氏 |
山陽プレス工業取締役社長 檜垣 昌子氏 |
ジェーシーエム代表取締役 中山 立行氏 |
日刊工業新聞社論説委員 山崎 和
檜垣 主人の父が創業しました。東京の会社ですが父が山陽地方の広島・呉の出身なので山陽プレス工業という社名になりました。設立は47年(昭和22)で今年で61年目。社員数は70人です。事業内容は金型の設計・製作、金属のプレス加工、樹脂系のフィルム材を使ったプレス加工と、これらの技術を使って自社製品をつくっています。プレス加工はオイルをたくさん使い、洗浄する必要があります。そこでオイルを使わないドライプレス加工について量産化を推進し、産学公連携で研究しています。
中山 4月に新潟県村上市になった、県北の岩船郡朝日村の出身です。最初に入った会社で半導体やハードディスク、部品の組み立てを任されていました。ただ、顧客企業が海外に仕事を移したため自分の担当部門が集約されました。97年7月に退職し、ジェイシーエムという会社をその時のメンバー13人と起業しました。現在社員数は約150人。事業内容は装置の製造・販売がメーンで半導体、液晶、太陽電池、コーティング装置などを扱っています。プローブの製造なども行っています。
檜垣 会社を引き継いだのは2000年で深絞りや絞り加工での洗浄工程が大変でした。プレス加工で洗浄工程がどうしたら不要になるのか考えていた時に、ドライプレス加工を研究している先生方に出会い、02年から一緒に研究を始めました。当社は設備的にも人的にも特別なことは何もない普通の会社でした。今のままならなくなってしまうのではないかという強烈な危機意識がありました。だから役に立つ技術、環境にやさしいドライプレス加工をやってみようと取り組みました。現在は工場内の80%をドライプレス加工でできるようになりました。自分のできることを一生懸命やりたいと思います。
中山 最初、半導体の装置から始めましたが、それだけではいつ会社が倒産するかわかりません。だから、一つが駄目になっても会社を存続できる形をつくろうとやってきました。4、5年前に幅広い技術を蓄積したことに気が付き、うちの強みだと思うようになりました。これだけ産業構造が変わる時代に、われわれのような企業がまさに求められるのではないでしょうか。8月で創業11年ですが、10年かかって石垣が積み上がり、ようやくこれからいろいろな事業展開が可能になると感じます。
梅原 われわれの仕事はどこでもできるものしかやっていません。創業以来38年間、製品を値上げも値下げもしていません。売上高経常利益率は私が創業して38年間で35%が最低で平均すると42%。なぜかと言えば、当社は下請けではなく価格はお客さまと対等に話し合って決めています。お客さまの要求はいい品物を安く早くしかありませんが、市場が受け入れる価格であればそれほど神経を使わなくてよく、いい品物はモノづくりの世界では当たり前です。一番力を入れたのは他社で絶対にまねのできない短納期です。造るのが早いのではありません。なぜ、可能かといえば一見ムダに見える過剰設備、過剰人員をムダという意識を持たず有しています。注文残もほとんどなく今日来た仕事をその日にやります。
梅原 日本のモノづくりは間違いなく世界一だと思います。ただ、商売が下手なのです。いいモノは高く売ることにもっと自信を持っていいのです。あまりにも安売りしすぎます。また、大手企業はこれだけ原材料が高騰していても認めようとしません。大企業のトップは零細の苦しさをわかっていないと思います。今、一番心配しているのは、日本の現場に若い技術者が大変少ないことです。
檜垣 子どもたちの教育について、モノづくりの楽しさや生産型の人をつくれるような教育を望みたいと思います。技術、家庭科、工作といった科目がなくなっています。また、食料自給率も低いが、自分たちの手でつくっていく、という意識が大切です。
中山 社員がよくこれはできないと言いますが、私は不可能なことはほとんどないと言っています。新潟県北部でわれわれのような会社は皆無ですが、そこで成長してきました。モノづくりでも何でもそうですが、情熱を常に持ち続けることが一番ではないでしょうか。収益より情熱を失うことが一番怖いです。やる気や情熱や根気強さ、最後までやり抜く力が大切だと思います。