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浜松市長 鈴木康友氏 |
浜松市は今年、市制100周年の節目の年を迎えた。人口82方人の政令指定都市になった浜松市の発展は、地域に立地する世界的企業と高い技術力を持つ中小企業に支えられてきた。次の100年に向けて新たな一歩を踏み出すにはさらなる産業推進が必要だ。モノづくりは時代とともに大きく変化する。世界的な産業構造の変化の中で日本は壁にぶつかり、この地域も克服しなければならない課題がある。産学官連携でそれに取り組み、今後の発展の礎を築いていかなければならない。
三遠南借地域は全国でも例をみない県境を越えた地域連携が進んでいる。さまざまな産業が集積し、地域を挙げて新しいモノづくりに取り組んでいる。
今回のシンポジウムをきっかげに新産業創出に向けたネットワークが広がってほしい。
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日刊工業新聞社社長 井水治博氏 |
東日本大震災でモノづくりは大きなダメージを受けた。自動車や工作機械、ロボットなど多くの産業で生産に影響がでた。一方でそれらのサプライチェーンは中小企業のモノづくりの力によって支えられていると再認識された。厳しい状況が続くが、連帯力でそれを乗り越えようとする動きも多くの現場で起きている。日本は困難に直面した時に大きな力を発揮する。それがDNAとして受け継がれている。
日本が元気になるにはまず地域が元気ならなければならない。浜松市は日本のモノづくりのメッカである。自動車をはじめ強い産業の原点がここにあり、まさに日本を支えている地域だ。
日刊工業新聞社もモノづくりの総合情報機関として、さまざまな情報発信を通じて日本を元気にすることが使命だと感じている。
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NTN会長 鈴木泰信氏 |
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会場 |
今日はネクタイをしてきた。先日パリで買ってきた。出張した際にネクタイを数本購入するのだが、円とユー口の為替を考えると現在いかに円高なのかと考えてしまう。この状況で日本の企業はどうモノづくりをしていくのか。また世界に打って出ていくのか。東日本大震災からなかなか立ち直れないでいるが、今は非常に重要な時期だ。
NTNは1918年に創業した。2011年3月期の完上高は5301億円。ベアリングは鉄道車両や建設・工作機械、風力発電機などの産業機械向けに展開している。東海地区では宇宙航空機産業が注目されているが、ジェットエンジン用などのベアリングはNTNが国内トップだ。自動車部品は等速ジョイントのシェアが世界2位で、園内ではダントツ。特に静岡県を自動車分野向目の発信墓地と位置づけ、磐田製作所〈磐田市)を中心に等速ジョイントなどを世界展開している。
私は15−16年前、磐田製作所に2年間ほど電車で通っていた。現在磐田市には研究開発センターもある。ここで自動車関係を中心に新しい生産技術を追求し部品のモジュール化などを進めているほか、次世代商品の研究開発を加速していく。風力発電機などは今後世界で需要が高まる。今も直径2メートルを超え、重さ2トンにもなるベアリングを風力発電機向けに生産しているが、発電量を増やすためにさらに大きなベアリングが求められる。危機管理の観点から三重県・桑名のほか石川県・能登の工場でも風力関係のベアリングを生産し、日本海から中国など世界各地に輸出していく。
一方で電気自動車の時代が来れば極論すれば自動車向けのベアリングは不要になってしまう。これに危機感を感じて03年頃からチームを編成しアイデア出しにも取り組んでいる。最近は女性チームが優秀だ。モノづくりにおいて女性の活躍に非常に期待している。そこで09年には磐田製作所に「ベアキッズらんど」を開園した。これは従業員の子育て支援のためにつくった企業内託児所だ。またダイパーシティー(多様性)への対応として障害者がいきいきと働りる職場「夢工房」も開設した。磐田製作所に訪れた際は必ずここに顔を出すようにしている。
NTNは世界のベアリングメーカーの中で中国進出が遅かった。戦前には遼寧省・瓦房店に現地工場があったが、その後は中国に出て行くことがなかった。ただ人口13億人を抱える中国市場に目を向けないわ目にはいかない。私は01年に社長就任後、04年までに五つの新会社を中国につくった。5月には中国で初の技術開発センターも上海に開設した。技術のポケットを多く持たなければ応用できるものが出てこない。グローバルでの研究体制は日本とフランス、さらにプラスαを考えているが、そのαが中国になるかもしれない。
フランスにはグローバル戦略の重要な拠点がある。仏ルノーの自動車部品会社SNRを買収し、グループ傘下に入れた。数十年かけても欧州市場でのシェアは4%程度で、海外展開の壁の厚さを感じていた。しかし現地メーカーがグループに入ったことでシェアが十数%に高まった。研究開発拠点が日本とフランスにできただけではなく、ブラジルやルーマニアなど単独では進出が難しい地域でも工場を有効活用できるようになった。
グローバル人材の育成も急いでいる。年2回の経首会議は英語で実施している。世界QCサークル大会も三重県・桑名で聞いている。世界の現場で働く人々を日本に招き、各地のQCサークルの状況を発表してもらい、お互いにすり合わせをする。「現地・現物・現人」という考え方が大事だ。現地で、現地の材料を使い、現地の人材を活用し、いかにコストを下げてモノづくりができるか。そして研究開発拠点がある日本から中固など世界に何を持ち出していけるのかをしっかりと考えなければならない。
グローバルで利益を出し、日本に還元する。日本の雇用も守る。これが大きな使命だ。中国も日本を追いかけてきている。この距離を縮められないように日本では常に新しいものを創出していかなければならない。商品開発のマザーセンターは磐田と桑名にあるが、ここでは少なくとも5−10年先の新しいモノを生み出すための開発を進めている。NTNの売上高は12年3月期には5850億円を見込んでいる。創業100周年を迎える18年3月期には1兆円を目指す。
最後に皆さんに世界地図を思い浮かべてほしい。日本が中心のメルカトル図法の地図が浮かぶと思うが、欧州では欧州中心の、米国では米国が中心の地図になる。豪州では南が上になった豪州中心の地図もある。しかし地球を外から眺めると上も下もない。固定観念で世界を見ず、グローバルな視点を持てばガラパゴス化を防ぐことにもつながる。多元的な世界観が重要であり、固定観念を払拭(ふっしょく)してほしい。
仕事は面白くなければならない。桜を眺めるのは楽しいが、花は1年やそこらでは咲かない。じっくりと良い木を育て、その木が花を咲かせた時が面白い。モノづくりの面白さを味わい、さらにそれによって人を楽しませることが大切だ。
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| 合言葉「未来の勝ち残り」 國本氏 |
目指す姿は"グローカル" 荻本氏 |
「イエス」から始めること 鈴木氏 |
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コーディネーターの真田氏 |
真田 三遠南信地域からそれぞれ招いたパネリストの3社は"トリプル7"で、多摩川精機の従業員は700人、國本工業は70人、ファインモールドは7人です。規模は違いますが、それぞれが差別化を図り、利益を上げ、地域活性化に貢献しています。モノづくりや人づくりの取り組みを聞きながら、中堅・中小企業の経営のあり方を討論します。
國本 國本工業は1960年代からオートバイ部品の加工を始めた。現在は自動車向けが100%。パイプ塑性加工を得意とし、マフラーやターボパイプ、冷却パイプなどを手がけている。未来への勝ち残りを合言葉に規模ではなく強さ、量ではなく質を求めた会社づくりを目指している。社内での技能伝承はオン・ザ・ジョブ・トレーニング(OJT)によるノウハウの伝承を心掛け、OJTの後もしっかりとフォローアップしている。
鈴木 ファインモールドはプラモデルを開発、製造、販売している。映画に登場するキャラクターや戦車、飛行機などの模型をオリジナルブランドでつくっている。新入社員には即戦力として働いてもらうため、とにかく現場で何でもやらせている。今の若い人はやらせれば伸びるので成功体験を積ませたい。一般消費者向けの商品は評価がダイレクトに届く。それがモチベーションを高め、技能を向上したいという気持ちにつながる。
萩本 多摩川精機は自動車や飛行機などのモバイル制御機器を手がけている。長野県飯田市の企業がなぜ"多摩川"なのかとよく質問される。東京の多摩川の近くで私の父が1938年に創業し、出身地の飯田市に工場を建設した。戦後はGHQが飯田市の7万坪の工場敷地を接収する話があったが、先代が「地域を助けるのに必要な工場なんだ」と追い返した。地域を大切にし、そこに根を生やしてきた。現在は信州大学にモバイル制御関係の寄付講座を持ち、そこで技術者育成を支援しているほか、大手メーカーへの技術者派遣なども実施している。
真田 オンリーワン製品や技術の差別化について聞かせてください。
萩本 自動車や飛行機、船、衛星などを制御する仕組みは万国共通で、日本で成功すれば世界でも成功できる。ローカルな場所から世界に通用するキーコンポーネントをグローバル展開する"グローカル"を目指す。角度センサーとジャイロ、コンバーターを当社の三種の神器と呼んでいるが、これらのキーコンポーネントがあればさまざまなモバイルに横展開できる。もちろん時代によって求められるものは変わる。現在はバイオ関連に力を入れている。これを21世紀後半の三種の神器の一つにしたい。
鈴木 プラモデルの市場はリーマンショック後に10分の1に縮小した。とにかく新しいモノづくりをしていく。新しいモノはリスクも高いが、リスクがないモノ、つまり従来の延長線上にある商品をつくることは危険な方法で、それは発展ではなく延命にしかならない。強みは社内で金型製作までしていることだ。負担にはなるが設備投資をしなければモノづくりで負ける。マニアックな製品もあるが、それで技術力をアピールし、差別化の具体例を見せなければ理解してもらえない。
國本 オートバイは海外展開が早く、当社はそれについて行けなかった。そこで人を頼り、自動車部品の仕事を紹介してもらった。しかしチャンスはもらったが、設備を新規導入できない状況だったため、パイプの加工技術を磨いた。切削・溶接でつくった部品に比べ、パイプ塑性加工で重さを半分に軽量化し、価格も半分にできた。これで大手自動車メーカーへの採用が進んだ。パイプでつくれば利益率が高いし、安く提供できる。いかにいいモノを早く安くつくるか。これを考えることが差別化になり、利益の源になる。
真田 従業員数を考えると大企業は大量生産・大量販売を考えなければならないが、中堅・中小企業は多品種少量生産でハイマージンの事業を展開することができる。従業員規模に適正な売上高をイメージしてポートフォリオを振り分けていくことが重要です。最後に一番大切に考えていることを教えてください。
鈴木 ノーからではなく、イエスから始めることだ。創業したときはチャレンジしかなかった。できないと言わないことと自由な発想を今でも大事にしている。
國本 社員とお客さま、そして新工法への挑戦だ。これまで応援してくれた社員とお客さま、その中で努力してつくった技術を今後も大事にしていきたい。
萩本 ユーザーオリエンテッドに徹することだ。自分たちができることではなく、お客さまが何を欲しているかを聞いてニーズに合ったモノを提供することが大切だ。
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日本エレクトロヒートセンター普及広報委員長 羽山 隆氏 |
生産現場では洗浄、殺菌、乾燥など加熱・冷却に多くのエネルギーが使用されている。どの業種でもこの部分を改善すれば高い省エネルギー効果が得られる。電気は優れたエネルギーで再生可能エネルギーの利用を考えても今後の電気への期待は大きい。太陽光や風力、バイオマス、地熱などによる再生可能エネルギーはほとんどが電気に変換して使われる。そのため生産プロセスを電化しないと産業活動に利用できない。電化すればさまざまな優れたパフォーマンスが発揮される。
電気加熱の特徴は空気(酸素)がないところでも加熱でき、排ガスが出ないので製品に異物が交じらない、排ガスとして放出される熱ロスが発生しない、局部加熱が可能なことなどが挙げられる。生産現場で使えば高品質化、高効率化、省エネといった生産性向上のほか、作業環境の安全性も高めることができる。
生産現場で電気加熱を導入した具体的な事例を紹介したい。せんべいの乾燥工程では燃焼式熱風乾燥から遠赤外線加熱に変えたことで、歩留まりが大幅に向上した。従来の乾燥ラインは多段コンベヤー式で製品の破損が多かったが、乾燥時間を50分から3分に短縮できるのでラインをワンウェイ化し破損率を30%から5%に低減した。
金属パイプの熱処理で誘導加熱を使えば工程短縮などに効果がある。誘導加熱は秒単位で急速加熱ができるのが特徴だ。自動車部品の切削・洗浄工程では、切削液の冷却にチラーを、洗浄液の加熱にボイラを使っていた。そこでヒートポンプを導入し、1台で切削工程の冷却排熱を洗浄液の加熱に利用できるようになった。
メッキ槽や洗浄液の加熱など数十度Cで足りるような場合はヒートポンプの方が効率が高い。ある製紙工場では古紙を溶解する際に500メートルもの配管で蒸気を送っていたが、ボイラは燃焼・送気ロスが大きいのでヒートポンプに置き換えた。またヒートポンプ給湯器の屋外機からは冷風が出る。これを室内に設置して冷房の代わりにしたユニークな例もある。このほか抵抗加熱やアークプラズマ加熱、電磁波加熱など電気加熱はさまざまな利用が可能だ。